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永遠に咲き続けるサクラと枯れてしまうバラ……?

「ママ……難しい事を考えないで今を楽しく過ごせばいいんだね」


 ママの言う通りかもしれない……

 殿下と色々話してこよう。

 

「楽しい時間を過ごしてきてね」


 少しだけ不安が取り除かれたわたしの表情を見て、ママが安心したように話している。

 

「うん……いってきます」


「……いってらっしゃい。ママは第三地区で待っているからね」


 ママが優しく微笑みながら髪を撫でてくれる。

 隣にいるパパは少し心配そうにしているけど……


「うん! ママ、パパ! いってきます!」


 不安もあるけど、頑張って前に一歩踏み出してみよう。

 殿下に会いに行かなかったらきっと後悔する日が来るから……



「ほれ、カサブランカ。リコリス王国に着いたぞ」


 第三地区のおじいちゃんの声に目を開ける。

 空間移動は眩しいから目を閉じないといけないんだよね。


「うわあぁ! 綺麗……」


 ここは庭園かな?

 白っぽいレンガが敷かれた先に噴水とガゼボが見える。

 綺麗に咲いたバラの向こうに見えるのは……

 サクラ?

 

「カサブランカ。この桜は幸せの島の枝から増やしたんだ」

 

「……え?」


「あの頃の四大国の王が幸せの島に来た時に枝を持って帰ってなぁ。あれから五十年……見事に咲いたなぁ」


「そうだったんだね……」


「永遠に咲き続ける桜……か。隣に咲いてるバラは枯れるけど、この桜は枯れねぇんだなぁ」


「……まるで殿下とわたしみたいだね。百年も生きられない殿下と永遠に生き続けるわたし……」


「でも……このバラも綺麗だよなぁ」

 

「……うん」


 確かに。

 すごく綺麗だ。


「バラは手入れが大変らしいぞ? 誰かが頑張って世話してるんだろうなぁ」


「そうだね……」


「この種類のバラは今、花が散っても涼しくなるとまた咲くんだ。一年に二回咲くバラだなぁ」


「……え? そうなの? もう枯れるだけかと思った……」

 

「……カサブランカ。ぺるぺるの心の中で……亡くなったリコリスの兄ちゃんは生きてるんだ」


「……おじいちゃん?」


「身体は永遠に会えなくても……心の中では生き続ける……お別れだけどお別れじゃねぇんだ」


「……」


 なんて返事をしたらいいか分からないよ……


「楽しんでこい。ほれ、ガゼボの中にいるみてぇだぞ」


「……おじいちゃんは?」


「じいちゃんは綺麗な庭を散歩してるからなぁ」


 ずっと一緒には、いてくれないんだね……


「……うん」


「行ってこい……何も怖い事なんてねぇさ。支えてやれ……苦しんでる友達を……」


「苦しんでいる友達?」


「泣いてるみてぇだぞ」


「……え?」


「……話を聞いてやれ。フロランタンを食いながらなぁ」


「……うん」


 おじいちゃんが噴水の方に歩いていった。

 一人になっちゃった。

 殿下がいるガゼボにゆっくり歩く。

 風に散るサクラが綺麗……

 ずっと前に氷の上位精霊が降らせてくれた雪みたいだ。

 ガゼボから少し離れた所にいる護衛みたいな人間がおじいちゃんと話しているのが見える。

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