殿下のおじいさんも変態だったんだね
「人間のお兄様は王様になる前、海賊だったから友達がたくさんいたのかもね」
ママが懐かしそうに話しているけど……
「そうだったね。悪い父親を討って王様になったんだよね」
「お兄様が王様になってからリコリス王国は民に優しい国になったの」
「殿下のおじいさんは立派な王様だったんだね」
「かなり苦労したんだよ。それでもお兄様は頑張り続けたの。それに支えてくれる仲間や家族がいたからね」
「支えてくれる仲間と家族?」
「特に宰相とはすごく仲良しだったかな。なんでも話し合える変態仲間だったよ」
「変態仲間? さいしょうって何?」
「王様を一番近くで支えてくれる役職の事だよ」
「仕事仲間なのに仲良しだったの?」
「ふふ。お兄様はわたしの事が好き過ぎる変態で、宰相はヒヨコちゃんのベリアルの事が好き過ぎる変態だったの」
「そうだったんだね。立派な王様も裏では変態だったんだ……」
「息抜きは必要だよ。ずっと真面目に生きていたら疲れちゃうでしょ?」
「それもそうだね……」
ママも冥界の女王って呼ばれて恐れられているけど変態だからね。
ベリアルをスーハー吸っているママは心から幸せそうだ……
「カサブランカ。そろそろ行くか」
第三地区のおじいちゃんが嬉しそうに話しかけてきた。
ついに人間の国に出発か……
「……うん」
やっぱり緊張しちゃうよ。
「カサブランカ。ママが作ったフロランタンをバスケットに入れておいたから持って行って」
ママがバスケットを手渡してくれたけど……
蓋を開けると甘くて香ばしい匂いがする。
「うわあぁ! おいしそう!」
粘土の身体でも匂いがするんだね。
「ふふ。お兄様の大好物だったの」
「殿下のおじいさんはフロランタンが好きだったの?」
「そうだよ。お兄様を育ててくれた海賊の人間はお菓子作りが得意でね。お兄様が王様になってからも誰にもバレないようにこっそりお菓子を届けていたの」
「こっそり?」
「ふふ。これは仲良しの宰相にも内緒だったの。お兄様の寝室にこっそり忍び込んだ海賊の家族と過ごす時間は……お兄様にとってかけがえのないものだったの」
ママが懐かしそうに話している。
「……そうだったんだね」
「カサブランカ……人間との生きる長さの違いを考える必要はないの。アマリリスやウェアウルフちゃん、ベリス王女と遊ぶみたいに過ごせばいいんだよ」
何も考えずにただ楽しく過ごせばいいの?
そうだよね……
殿下はわたしを天族じゃなくて人間だと思っているんだ。
亡くなった後の事まで考えていたら仲良くなんてできないよね。




