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人間と会うのは緊張するよ……

「カサブランカ……粘土の身体はどう?」


 ママが心配そうに尋ねてきた。

 今日は人間の殿下に会いに行く日……


「うん……変な感じ。ずっと赤ちゃんだったからかな? 人間の十五歳くらいの大きさになったから視野が広いよ。でも不思議だね。ウェアウルフのおじちゃんが粘土でわたしの身体を作ってベリアルが神力を使うと生きているみたいに見えるなんて」


 肌も髪も粘土じゃないみたいに見える。

 

「そうだね。不思議だよね。全然粘土には見えないよ……人間の国に行くのは怖くない?」


「……怖いけど……また会いに行くって殿下と約束したから」


「……そう」


「少し話したら帰ってくるよ。自分で決めた事だから頑張らないと」


「カサブランカ……」


「それに第三地区のおじいちゃんが付いてきてくれるから大丈夫だよ」


「……それが一番心配なんだよ」


「……え?」


「吉田のおじいちゃんは五十年前にリコリス王国で捕まりそうになったんだよ」


「……!」


 そうだった……

 確か服を脱いだんだっけ?


「悪者からアンジェリカちゃん……ママの友達を助けようとして色々あって服を脱いじゃってね」


「でも今の人間達は、おじいちゃんがふんどし姿になるのが好きだって分かっているから捕まらないはずだよ」


「ふふ。カサブランカは人間の事をよく分かっているんだね」


「……おじいちゃんが人間に会わせてくれたから」


「人間と天族は生きる長さが違うから……仲良くなるのは辛いよね」


「……うん。でも……皆が背中を押してくれたから……殿下に会ってくるよ」


「不思議だね。ルゥのお兄様の孫と、わたしの娘が友達になるなんて」


「ねぇ、ママ?」


「……ん? どうかした?」


「人間は友達とどんな事をして遊ぶの?」


「え? うーん……ママもこの世界の人間の遊びはよく知らないんだよね。でもママが人間のアカデミーに通っていた頃は一緒におしゃべりしたり料理を作ったり……魔族の皆とする事と何も変わらなかったかな」


「そっか……ふぅ……少し緊張する」


「ふふ。大丈夫だよ。ただ話をするだけでいいんだよ」


「話をするだけ?」


「隣で真剣に話を聞いてくれる友達がいるだけで心が強くなるの」


「……真剣に? ……うん。それならできる……」


「カサブランカ……無理していない?」


「自分で決めた事だから。それに……殿下をひとりぼっちにはできないよ」


「……ひとりぼっち?」


「王族だから本当の友達がいないんだって……」


「……そう」


「亡くなったリコリス王には友達がいた?」


「ふふ。いたよ。たくさん……たくさんね」


「……そうなんだね。殿下と同じ王族なのに全然違うんだね」


 あれ?

 じゃあ殿下も人間の友達を作れるんじゃないかな?

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