この一か月で色々変わったよね
「子うさぎだった頃のカサブランカは……わたしに良い夢を見せていたらしいな」
パパが優しく微笑みながら尋ねてきた。
「うん。パパが苦しむのが嫌だったから……」
うさちゃんだった頃は素直になれなかったけど、今なら言えるよ……
「カサブランカ……」
「あ、そういえばタルタロスのおじいちゃんのお面が完成して一週間経ったね」
「そうだな。まさか父上が毎日第三地区に遊びに来るとは」
「お面があるから表情は見えないけど楽しそうだよね。今日はこれからかな? おじいちゃんは朝ゆっくり寝ているから……」
「側付きも第三地区にすっかり馴染んでいるようだな」
「一人はおばあちゃん達と美容の話をしながら温泉に入ったり髪の手入れをしてもらったりしていて、もう一人はノダのおじいちゃんと難しい話をしているよね」
「ノダさんは異世界の色々な話を聞かせているようだな」
「この辺りは結界があって日焼けしないし、幸せの島にはママが五十年前に読んでいた難しい本がいっぱいあるから側付きの二人も喜んでいるよ」
「父上はスーたんを気に入ったようだな。ずっと抱っこしている」
「あはは! スーたんはかわいがられるのが好きだから嬉しそうにしているよね」
「父上をタルタロスに幽閉した時の心の苦しみは……永遠に忘れられないだろう。あれから数千年……わたしはヴォジャノーイ族になりまたハデスに戻った……その全ての何かひとつでも違っていれば今のこの幸せはなかったのだな」
「ママも同じような事を言っていたよ……」
「カサブランカも後悔しないように生きるのだ」
「……後悔しないように?」
「人間のベリアルに会いに行ってみるか?」
「殿下に?」
「祖父を亡くし苦しんでいるようだ」
「……会いに行かなかったら……後悔するかな?」
「……人間のベリアルは……カサブランカが思うより早くいなくなるだろう」
「……耐えられる自信がないよ。殿下と仲良くなったら……最期の時に耐えられない……」
「行くかどうかを決めるのはカサブランカだ……」
「パパ……」
「だが……ゆっくり迷う暇はないぞ?」
「……うん」
「さぁ……今は眠ろう。カサブランカは赤ん坊だ。眠るのが仕事だからな」
「眠るのが仕事? えへへ。ずっと赤ちゃんでもいいかも」
「……そうか。どんなカサブランカでもわたしはずっと愛し続けるからな」
「わたしも……ずっとずっとパパの事……大好き……」
もう眠くてダメだ……
パパに抱っこされて眠ると胸のドキドキが心地いい……
ずっとずっとこうしていたいよ……




