うさちゃんだった頃の記憶
うさちゃんだった頃の記憶が蘇ったから全部思い出したよ……
確か『真ん丸のベリアルを作ろうとしたんだけど細くなり過ぎて失敗したから欲しければあげる』って魔王に言われたんだよね。
よく見たらヘンテコな顔が面白かったからもらったんだ。
今見てもとんでもない顔をしているね……
「ぷはっ!」
あ……
第三地区のおじいちゃんみたいに吹き出しちゃった。
「ん? カサブランカはご機嫌だな」
パパが嬉しそうに尋ねてきた。
「うん。あのベリアルのガラス細工……ヘンテコな顔をしているの」
「ベリアルのガラス細工? ああ。あれか」
「そういえばこの島は元々パパとママの島のはずだったんだよね?」
「そうだな。ヨシダさんが浮遊島を創り、ウリエルが当時のベリス王……今の魔王に島の開拓を頼んだのだ。だが魔王はこの島を子うさぎの島にしてしまってな……」
「え? ウリエルはどうして島の開拓を魔王に頼んだの?」
「ああ。ウリエルはペルセポネの妊娠を望んでいてな。わたしとペルセポネ二人だけの島を作ろうとしていたようだ」
「ママにそっくりな赤ちゃんが欲しかったんだね」
「そうだ。ウリエルは幼女好きだからな。特にデメテルの幼少期の姿によく似た幼女を好むようだ」
「わたしは天界のおばあちゃんの幼少期にそっくりなんだね……」
「そうだな。よく似ている」
「パパに『子うさぎ』って呼ばれたのは久しぶりだよ……」
「そうだな……五十年ぶりか」
「パパ……」
「ん?」
「わたし……パパの娘になれて幸せだよ」
「カサブランカ……わたしも父親になれて幸せだ」
「えへへ。いつもわたしとヘリオスを守ってくれてありがとう」
「……これからもずっとずっと守り続ける」
「うんっ! パパの抱っこ好き!」
パパにギュッとしがみつく。
力を入れ過ぎたらパパの骨を折っちゃうから気をつけないと。
「あぁ。なんと愛らしいのだ」
「ふわぁぁ……眠くなってきちゃった……」
「わたしもだ……最近は何事もなく穏やかだな」
「そうだね。いつも何かやらかすヘリオスも、卵が気になってずっと第三地区にいたから変な事をしなかったし」
「そうだな。ずっとハーピーの卵を温めていたからな」
「ヘリオスは父性が強いよね」
「オケアノスの記憶が戻ったからかもしれないな」
「そうだね。パパ……」
「なんだ?」
「最近は怖い夢を見ない?」
五十年前は悪い夢を見てうなされていたよね。
「……あぁ。今は幸せな夢しか見ない……」
「よかった」
パパが穏やかな気持ちで暮らせているっていう事だよね?




