赤ちゃんが孵るってこんなに幸せな事なんだね(1)
わたしが赤ちゃんになってから約一か月が過ぎた。
わたしは相変わらず赤ちゃんだけど……
今日、ハーピー族のばあばの卵から赤ちゃんが孵る予定らしい。
オーク族長のじいじと、ハーピー族最高の戦士って呼ばれていたばあばの赤ちゃんだから強い子が生まれてくるはずだって皆が期待しているんだよね。
同じ赤ちゃんとしては生まれる前から期待されても困るんじゃないかと思うんだけど……
ハーピー族は妊娠からだいたい十五日で卵を産んで、その卵を十五日温めると赤ちゃんが出てくるらしい。
ばあばは皆にも赤ちゃんの誕生に立ち会って欲しいからって、朝から第三地区に来ている。
赤ちゃんの父親のじいじと、お兄ちゃんのハーピーちゃん、ハーピー族の皆もいるんだけど……
「あぁ……元気に孵ってくるかな?」
ハーピー族長をしているハーピーちゃんがソワソワしている。
いつもは強いお兄ちゃんっていう感じだけど、やっぱり心配だよね。
「はは。ハーピーちゃん、安心して。心音はしっかり聞こえているからね」
じいじには卵の中にいる赤ちゃんの心音が聞こえているみたいだ。
さすが魔族だね。
「パパ……オレ、妹がいいな」
「女の子かぁ。きっとかわいいだろうね」
「もちろん弟でも嬉しいよ? 一緒に鍛錬できるし。でもベリス王みたいに妹をかわいがりたいんだ」
「ベリス王みたいにか。そうだね。ベリス王とベリス王女はすごく仲良しだからね」
「毎日かわいいドレスを着させて髪を結んであげるんだ」
「はは。それは素敵だね」
「パパ……」
「何かな?」
「オレが孵る時……心配だった?」
「もちろんだよ。すごくすごく心配で……ハーピーちゃんが卵から孵った時には涙が止まらなかったよ」
「そっか……」
ハーピーちゃんが嬉しそうに笑っている。
「大きくなってすっかり立派なハーピー族長になったけど……今でもかわいくてかわいくて堪らないよ。ハーピーちゃんはパパの宝だよ」
「宝……えへへ。オレ……パパみたいに強くなれるようにもっともっと鍛錬を頑張るよ」
「ハーピーちゃんは頑張り過ぎるくらい頑張っているよ。無理だけはダメだからね?」
「うん! えへへ。パパ……大好きだよ」
「パパもハーピーちゃんが大好きだよ」
じいじとハーピーちゃんはすごく幸せそうだね。
見ているわたしまでニコニコになっちゃう。
「オークもハーピーちゃんも仲良しだな。笑った時のピンクのほっぺがそっくりだ!」
ばあばが嬉しそうに笑っている。
確か、ばあばは戦の時に助けてくれたじいじに一目惚れしたんだよね。
しばらくして再会した時、ぽっちゃりした容姿になっていたからじいじだって気づかなくて……
でもお互いに惹かれ合ってパートナーになったんだっけ?
五十年前もそうだったけど今も仲良しだね。




