ベリアルは今日もかわいいヒヨコだね~前編~
第三地区の広場の椅子にパパに抱っこされて座ると皆が集まってくる
「おお! 赤ちゃんだ!」
「カサブランカが小さくなったらしいぞ」
「そうかそうか。かわいいなぁ。ハデスちゃん、抱っこさせてくれ」
第三地区の皆は元々お年寄りだったらしいから赤ちゃんが大好きなんだよね。
「……第三地区の皆さんの頼みなら仕方ないか」
パパは第三地区の皆を大切にしているから抱っこ権を譲るんだね。
ママのおじいちゃんとおばあちゃんみたいな存在だからかな?
皆、創り物の身体だから若くて綺麗でお年寄りには見えないけど。
「あぁ……赤ちゃんはいいなぁ」
「そうだなぁ。小さくて、ふにゃふにゃでかわいいなぁ」
「最近は赤ちゃんがいなくて寂しかったんだ」
「ベリアルの子供達は小さいけど赤ちゃんって言うには動き回るからなぁ」
「そうそう。武器になる物を持ったらいつ殴られるかヒヤヒヤするよなぁ。ははは!」
「この前もベリアルが殴られてピーピー泣いてたよなぁ。ははは!」
確かに、ベリアルの子供達は元気いっぱいだから気をつけないと危ないんだよね。
今はわたしも赤ちゃんになって、前みたいに思い通りに動けなくなったから気をつけないと。
「カサブランカ……小さくなったんか……」
あれ?
第三地区のおじいちゃんに抱っこされると、悲しそうにわたしを見つめながら話しかけてきた。
「うん。でも毎日歩くのが十歩になったから嬉しいの」
「……そうか。クロノスがすまなかったなぁ」
「謝らないで? わたしはタルタロスのおじいちゃんにずっと一緒にいたいって言われて嬉しかったんだよ?」
「クロノスは寂しいんだろうなぁ……」
「その事なんだけど」
ママがおじいちゃんに話しかけた。
「んん? ぺるぺるはどうかしたんか?」
「クロノスおじい様にお面を作ろうと思うの」
「お面?」
「そのお面に魅了防止の力を持たせればクロノスおじい様も自由に出歩けるでしょう?」
「でも……クロノスはタルタロスの外を嫌がるからなぁ」
「大丈夫だよ。外の世界に少しだけ興味が出てきたみたいなの」
「……クロノスが?」
「カサブランカとヘリオスの存在が大きいんじゃないかな?」
「カサブランカとヘリオス?」
「クロノスおじい様は二人を大切にしているから一緒にいたいって思い始めたみたいなの」
「……そうか。クロノスが嫌じゃねぇんなら……お面作りに協力してぇけどなぁ……」
「ドワーフのおじいちゃんなら作り方を一緒に考えてくれると思うの」
「ドワーフか……確かにドワーフなら……」
「それと……カサブランカの事なんだけど……」
「ん? カサブランカ?」
「リコリス王国のお兄様の孫のベリアルに会う約束をしていたらしいんだけど……このまま赤ちゃんの姿じゃ会いに行けないでしょう? 人化しても元の大きさには見えないらしいし」
「……そうか」
「なんとかその時だけ前の姿に見えるようにできないかな?」
「確かに、人化してもそこまで大きくはなれねぇだろうなぁ」
「やっぱり……どうしたらいいんだろう」
「じゃあオレが粘土を出してやるよ」
この声は……
やっぱりベリアルだ。
ベリアルは今日もかわいいヒヨコだね……
しかも、ちょっと得意気だし。
ママがあり得ないくらいの変態になってグフグフ言うんだろうな……




