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これ以上すれ違ったままなんてダメだよ!

「おじいちゃんの優しい瞳?」


 パパはおじいちゃんと目を合わせても魅了されなかったの?


「目が合った事はないが……時々見える瞳は優しかった。父上がわたしを……わたし達姉弟を心から愛している気持ちが瞳から溢れていた」


 パパが遥か昔を思い出しながら懐かしそうに話している。


「パパ……」


「ゆっくり……ゆっくり待つつもりだ。どれほど時が経っても……わたしの父上への気持ちは決して変わらない」


「おじいちゃんへの気持ち?」


「……愛している。とても大切な存在……」


「パパ……」


「だから……無理にわたしと話して欲しいとは思わない。ただ父上が穏やかに暮らせれば……それでよいのだ」


 おじいちゃんの瞳からずっと大粒の涙が流れ続けている。

 目が合ったらパパを魅了しちゃうから、ベットに隠れて声を殺して泣いているみたいだ。


「……おじいちゃん。目を閉じて。パパも目を閉じて!」 


「カサブランカ?」


「早く!」


「カサブランカ……目を閉じればよいのか?」


「うん! ほら、おじいちゃんも目を閉じて!」


 よし。

 おじいちゃんはずっと黙っているけど、二人とも目を閉じたね。


「あ……これじゃダメだ。二人とも目を閉じたら抱きしめ合えないよ……」


「……? カサブランカ? 抱きしめ合うとは?」


「目を見ると魅了されるんだよね? じゃあ……」


「カサブランカ? どうしたのだ?」


「パパは目を開けて」


「カサブランカ? 目を開けるのか?」


「おじいちゃんは閉じたままだよ?」


 赤ちゃんだけど布を取るくらいの力はあるよね?

 あれ?

 上手く取れない……

 あ……

 おじいちゃんが踏んでいるからか……


「カサブランカ? 掛け物を取りたいのか? だが……父上は嫌がるはずだ……」


「もう! そうやって遠慮しているからずっとすれ違ってきたんだよ!」


「え?」


「おじいちゃんが泣いているの! ずっとずっと泣いているの!」


「父上が?」


「何千年もずっとずっと独りで泣いているんだよ!」


「……父上」 


「今抱きしめなくちゃ……今抱きしめなくちゃ、またすれ違っちゃう!」


「すれ違う……?」


「パパはおじいちゃんが独りで泣いているのに放っておくの?」


「……! それは……ダメだ……」


「抱きしめてよ……これ以上おじいちゃんをひとりぼっちにしないでよ! パパ!」


「……父上……ずっと……泣いていたのですか?」


「……」


 おじいちゃんはずっと黙って涙を流している。

 本当はパパに抱きしめて欲しいんだよね?

 我慢しているんだよね?


「おじいちゃん……もうやめよう? 独りで泣くのはもうやめようよ」


「……」


 悲しそうな表情でわたしを見つめながら泣いているおじいちゃんに、心が痛くなる。

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