表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/114

言葉にしないと伝わらないから

 パパとタルタロスに戻ると、おじいちゃんは相変わらずベットで布にくるまっている。

 側付き二人とコットス達はまだいないみたいだ。


「父上……離乳食を作る間、カサブランカの世話を頼んでも?」


 パパがおじいちゃんに話しかけているけど……

 

「……」


 おじいちゃんはずっと黙っているんだね。

 でも布の隙間から手が出てきた。

 抱っこしてくれるのかな? 

 パパが優しくわたしを預けると、おじいちゃんが布の中に入れてくれる。

 あ……

 すごく嬉しそうに笑っている。


「ではカサブランカを頼みます」


「……」


 おじいちゃんはずっと無言だけど……


「パパ。おじいちゃんはすごく嬉しそうだよ?」


 これくらいなら教えても大丈夫だよね?


「……そうか。嬉しそう……か。カサブランカ……ありがとう」

 

 パパがわたしにお礼を言った?


「……パパ?」


「父上の笑顔をわたしも見られたら嬉しいが……」


「パパ……」


 そうだよね。

 おじいちゃんには強過ぎる魅了の力があるから、パパの顔を見られないんだ。


「いつか……その時が来たら……」


「その時?」


 おじいちゃんの笑顔が見られたらっていう事かな?


「抱きしめたい」


「抱きしめる? おじいちゃんを?」


「これからもずっとずっと父上を愛していると伝えながら……抱きしめられたら嬉しい……」


 おじいちゃんがパパの言葉を聞きながら悲しそうにしている。


「……いつか絶対に……抱きしめられる日がくるよ」


 こんな事しか言えないけど……

 ママが話していたお面が完成したら抱きしめられるよね?


「カサブランカ……」


「おじいちゃんはパパの事が大好きだから」


「……わたしの事が……好き……」


「パパは……おじいちゃんのお腹にいたの?」


「……え? あぁ……そうだな。遥か昔の事だが……」


 パパが辛そうな顔をしている。

 もしかしたら訊かれたくない話だったかな?

 おじいちゃんは、パパがお腹からいなくなったのはおじいちゃんの事が嫌いだからだと思っているんだよね?

 心が聞こえるおじいちゃんならそれは違うって分かっているだろうけど……

 そう思わなければいられないくらい心が疲れているんだ。

 きちんと言葉で聞けば安心できるかも……


「……どうしてパパは、おじいちゃんのお腹から出たの?」


「……それは……父上が……辛そうだったからだ」


「辛そう? おじいちゃんが?」


「腹の中にいた時に……父上の感情が聞こえてきた。共に呑み込まれていた姉弟はその時の言葉をよく覚えていないようだが……わたしは覚えている。……気が狂いそうになるほどの絶望。父上はずっとその絶望の中で、もがき苦しんでいたようだった」


 おじいちゃんが、もがき苦しんでいた?

 遥か昔からずっと独りで苦しんでいたんだね……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ