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ママの想い

「あ、そうだ。わたしね? リコリス王国の殿下と仲良くなったの」


 きちんと話しておかないと。


「リコリス王国の殿下?」


 ママが尋ねてきた。


「確か今日から王太子になるらしいの」


「じゃあお兄様の孫の『ベリアル』なんだね」


「孫のベリアル?」


 ベリアルと同じ名前だ。


「お兄様はベリアルの名を知っていたの。でも人間はベリアルをヒヨコ様って呼んでいたから……お兄様もずっと『ヒヨコ様』って呼んでいたんだけどね」


「殿下は家族以外に名前を呼ばれたらダメなんだって。魔族みたいに従魔になっちゃうの?」


「え? 従魔? それはないよ。人間は従魔にはならないから」


「そっか。従魔にはならないんだね。安心したよ」


「地位が高くなると色々と決まり事があるんだろうね」


「大変だね。わたしは冥界姫だけど決まり事なんて何もないよ?」


「ふふ。それは永遠の時を生きるからだと思うよ?」


「永遠の時を生きるから?」


「のんびりのんびり永遠の時を生きるから、決まり事がいっぱいあったら疲れちゃうでしょう?」


「……人間は少ししか生きられないのに決まり事がいっぱいあったらかわいそうだよ」


「……そうだね。……カサブランカは外の世界を知って……どうだった?」


「……え?」


「今まではずっとベットの上で冥界とタルタロスと第三地区にいたでしょう? 人間の世界はどうだった?」


「初めは怖かったけど……キラキラ輝いて見えたよ」


「ふふ。そう……よかった。外の世界は楽しい事ばかりじゃないはずだよ? でも……辛い事も悲しい事も……カサブランカなら乗り越えられるよ」


「乗り越えられる?」


「カサブランカ……今を大切に生きてね」


「今を大切に?」


「カサブランカの十年と人間の十年とでは時間の過ぎ方が違うから」


「……わたし……殿下がすぐに死んじゃうから……仲良くなるのが怖かったの」 


「……うん。よく分かるよ。ママもそうだったから……」


「ママも?」


「人間のおばあ様やお兄様……たくさんの友達……皆……亡くなっちゃった……」


「……ママ」


「でもね? ひとつとして無駄な出会いなんてなかった」


「……ひとつとして無駄な出会いはなかった?」


「全部全部大切な出会いで……全部全部絶対に忘れたくないの」


「……絶対に忘れたくない?」


「すごく辛いよ……大好きな皆が次々に亡くなって……それでもママは生き続けなければいけないの」


「……うん」


「ママは……人間のルゥだった時……魔族に生まれたかったの。皆より早く死んじゃうのが嫌だったから……でも天族のペルセポネに戻ったら永遠の時を生きられるようになって……今度は人間を見送る側になったの」


「……うん」


 ママはずっとその事で苦しんできたんだよね。

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