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五十年前の願い事?

「では、カサブランカはタルタロスに行こう。ペルセポネはどうするのだ?」


 パパがママに尋ねているけど……


「わたしは、さっき帰った天界の使者と話した内容を整理しないと」


「そうか。では、わたしは今日からカサブランカの育児を再開しよう」


「ふふ。ありがとう。じゃあわたしは天界の使者の相手だね。ハデスは離乳食作りもお風呂も完璧にできるから助かるよ」


「オークに習ったからな」


「あ、そうだ。ママが妊娠したって知ってた?」


 え!?

 ばあばのお腹に赤ちゃんがいるの!?


「そうか。知らなかったな」


「昨日の朝ハーピーちゃんが教えてくれたの。パパも大喜びだったよ」


「そうか。それはよかったな」


「パパとママはつがいにはならないけど、すごく仲良しだよね。もちろんパパとハーピーちゃんも仲良しだけど」


「そうだな。オークはオーク族長として、息子のハーピーはハーピー族長として暮らしているから五十年前のようにずっと一緒にはいられないが……仲の良い親子だ」


「毎日幸せの島で数時間だけ一緒に過ごしているけど、すごく楽しそうだよね」


「オークもハーピーも毎日第三地区に遊びに来ているし……また賑やかになりそうだな」


「そうだね。第三地区の皆は赤ちゃんが大好きだから喜ぶだろうね」


「ベリアルの子供達とカサブランカとこれから産まれてくるハーピーの子……か」


「カサブランカとヘリオスが産まれてもう五十年経ったんだね」


「あっという間だったな」


「覚えているかな? 二人が卵から孵った日……皆で流れ星にお願いしようとしたけど全然上手くいかなくて」


「そうだったな」


「あの時……わたしは『ずっと一緒にいたい』って言おうとしたの。でも三回言えなくて」


『ずっと一緒にいたい』か。

 ママらしい考えだね。


「そうだったな……わたしは『共にいたい』と願ったはずだ。三回言えなかったが……」


 パパも同じ事をお願いしようとしたんだね。


「ふふ。ヘリオスは『皆で幸せになりたい』……だっけ?」


 そういえばそんな事があったような……

 でも五十年前の事だからぼんやりしか思い出せないや。


「カサブランカはなんてお願いしたか覚えている?」


 ママが尋ねてきたけど……


「わたし? なんだっけ……」


「『このまま幸せが続いて欲しい』って呟いたんだよ」


「このまま……幸せが続いて欲しい……?」


 流れ星にお願いしたんじゃなくて?


「どうだった?」


「……え?」


「五十年前のあの時から……ずっと幸せは続いていたかな?」


 ママが優しく笑っている。


「……うん。わたし……ずっとずっと幸せだよ……」


「よかった……」


 ママが安心したように笑っている。

 流れ星にお願い事をした時のお話は

『誰もが恐れる冥王ハデスの妻ですが今日もモフモフ愛が止まりません~異世界で、人魚姫とか魔王の娘とか呼ばれていますが、わたしは魔族の家族が大好きなのでこれからも家族とプリンを食べて暮らします~その後の物語』

 の最終話に書いてあります。

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