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おじいちゃんは何の話をしているの?

「カサブランカは、ずっとタルタロスにいるんだ。誰にも会わせない。誰にも傷つけさせない。ずっとずっとおじいちゃんがカサブランカを守るからね」


 おじいちゃんの綺麗過ぎるくらい綺麗な笑顔に背中が寒くなる……


「……それは……ダメだよ」


「カサブランカもおじいちゃんを捨てるの?」


「……捨てる?」


「カサブランカもおじいちゃんを捨てるの?」


「捨てないよ? わたしは誰の事も捨てないよ。それに大好きなおじいちゃんを捨てるはずがないよ」


「あの時……カサブランカは……一番大切な存在を喪って……それはペルセポネになった」


「……? おじいちゃん?」


 何の話?

 わたしが一番大切な存在を喪ってそれがママになった?


「全てを完全に忘れて思い出す事はない。カサブランカがそう望んだから。これで満足? 大切な娘を今度こそ守れた。これで満足? 辛い過去を捨てて新たな生き方を始めた。これで満足? 自分の不甲斐なさを悔やまなくて済むようになって満足?」


「……おじいちゃん? 何の話をしているの?」


「カサブランカ……おじいちゃんはね。この場にとどまる事しかできないんだ。前に進む事はできないんだ。……もうペルセポネは幸せになれたんだからずっとおじいちゃんと一緒にいよう? 約束したでしょ? 娘を幸せにできるなら何でもしてくれるって」


「何を……言っているの?」


「この時を待っていたんだ。ペルセポネが幸せに暮らせるようになる時を」


「おじいちゃん?」


「そうなればカサブランカは……『聖獣王』はずっとずっと一緒にいてくれるって約束したでしょ?」


「何の話? 分からないよ」


「約束は守らないと……ずっとずっと待っていたんだよ」


「おじいちゃん?」


「聖獣王の娘がオケアノスになって、ペルセポネになってルミになってルゥになって……そしてペルセポネに戻って幸せになった。長かった……ずっとずっと聖獣王の娘を幸せにする為に見守り、邪魔者を排除できるように導いてきた」


「……おじいちゃん?」


「聖獣王に約束を守ってもらう為に頑張ったんだよ……今はもうカサブランカだね」


「……え? わたし……?」


「聖獣王がうさちゃんになりカサブランカになった。嬉しかったよ。五十年前……うさちゃんがタルタロスに来た時……」


「……五十年前? 独房に穴を開けた時?」


 それは覚えているけど……

 わたしが聖獣王?

 聖獣王って毎日わたしの護衛をしているあの聖獣王?

 でも、この話し方だと違うような……

 

「もう少しで聖獣王が約束を果たしてくれる日が来る……そう信じてペルセポネを幸せにする為に力を尽くした」


「おじいちゃん?」


「これからはずっとずっと一緒にいようね」


「何の事か分からないよ……」


 ……怖い。

 よく分からないけど、すごく怖いよ……

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