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こうやって大人になっていくのかな?

 ママが真剣な表情で話しかけてきた。


「大事な話があるの」


「大事な話?」


 やっぱり……

 殿下に会いに行ったらダメなんだね。

 殿下は人間でわたしは冥界姫だから……

 ちょっとホッとしたかも。

 会いに行かなくて済むなら、殿下が死んでも悲しくないから。

 でも……

 殿下はわたしだけが友達なんだよね?

 会いに行かなかったら悲しむかも……


「ルゥとじいじの身体を……幸せの島の桜の木の下に……埋葬しようと思うの」


「……え?」


 殿下の事じゃなかったんだね。

 また会いに行けるんだ。

 あれ?

 わたし……

 今、安心したの?

 殿下に会いに行けるのが嬉しい……?

 そんなはずないよね。


「いつか……そうしたいと思っていたの。吉田のおじいちゃんとバニラちゃんが聖女の亡骸を埋葬するって決めた時にね……ママも……ルゥを埋葬するべきじゃないかって思ったの。でも……できなかった。ママが勝手にルゥの身体を使って……亡くなったからって……まるでいらないみたいに埋葬するなんてできなかった」

 

「ママ……」


「でも……お兄様が亡くなって……今が埋葬する時じゃないかって思ったの」


「そうなんだね……」


「ルゥだけじゃなくて、じいじの身体もルゥの隣に埋葬する事にしたの。ハデスがそうしたいって……」


「……うん」


「そうなると……あの部屋に、うさちゃんの身体がひとりぼっちになっちゃうの……」


「ルゥとじいじの間に寝ていた『オレ』の身体が……」


「……うん」


「……わたし……『オレ』の身体をルゥとじいじの間に埋葬して欲しい」


「カサブランカ……」


「ママ……わたしね……うさちゃんだった時の記憶が戻って……きちんと前を向けた気がしたの」


「……そう」


「うさちゃんを埋葬して『今までありがとう』って区切りをつけたいの。わたしはカサブランカとして生きるって決めたから」


「辛くない?」


「……大丈夫。今が幸せだからかな?」


「カサブランカ……」


「これで桜の木の下に眠っている聖女も寂しくなくなるね」


「そうだね……二人の聖女と前ヴォジャノーイ王と聖獣が眠る桜の木……その木を天族が守っているなんて不思議だね」


「……うん。ママは……辛くない?」


「……辛いよ。でも……もし本当のルゥが生きていたとしたら……埋葬して欲しいって望んでいるんじゃないかって思ったの。双子のお兄様が亡くなった今日が……その日なんじゃないかって」


「ママ……」


 辛そうだけど穏やかな表情だ。

 わたしも少しずつだけど前に進んでいるんだね。

 ゆっくりゆっくり……

 こうやって大人になっていくのかな?

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