マリアに情勢を説明してもらっている時に巨大衝撃魔術の直撃を受けました
「ユリア、いきなり、リーゼロッテ様の前で家に来るなんて言わないでよ。肝が冷えたじゃない」
馬車の中でマリアが文句を言ってきた。
「ごめん、ごめん、ああでも言わないとお姉様に無理矢理連れて帰らされたから」
私は同じ転生者のマリアに謝った。
「図太いあなたは問題なくても未来の王妃様の前でアドリブさせられる私の身にもなってよね」
「図太いって私はそこまで図太くないわよ。神経も細いし」
「はいはい、あなたが図太くなかったら、古代竜も可愛いペットになるわよ。いや、そう言えばあなたの所にはピーちゃんがいたわね」
思い出したようにマリアが言い出した。
「そうそう、だから、私は図太くないのよ」
「そう臆面もなしに言えるところが図太いって言うのよ」
マリアに言われてしまったんだけど……
「でも、帰らなくて良かったの? エックハルト様もフランツ様もリーゼロッテ様もあなたに帰ってきて欲しそうにしていらっしゃったけれど」
「絶対に嫌よ」
私はマリアに即答した。今は絶対にお兄様に会いたくなかった。
「アルトマイアー様もあなたに帰ってきて欲しいと思っていらっしゃるんじゃないの?」
「私が会いたくないのよ」
そうだ。ツェツィーリア様と仲良くしているお兄様とは会いたくない。また悲しくなるではないか。
「うーん、一度きっちりと話してみたら。アルトマイアー様はあなたを溺愛していると思うけれど」
マリアが言ってくれるが、今朝は私よりもツェツィーリア様を優先してくれたのだ。私なんかよりもツェツィーリア様が大切なのに違いない。
「そもそもゲームでお兄様が私と仲良くなることなんてあったの?」
私はふと気になって聞いてみた。
「それはないわよ」
マリアは即答だった。
「何しろユリアーナは悪役令嬢で傲慢で我が儘で兄を兄とも思っていないのよ。ゲームでは大体、アルトマイアー様はユリアーナを断罪する方にいたわ」
「そうなんだ」
判っていたこととは言っても私にはショックだった。
「じゃあ、今回も私はお兄様に断罪されるのかな」
私は呆然として呟いた。
あれだけ私に優しかったお兄様が断罪側に回ったら私なんて抵抗も出来ない……
私は蒼白になった。
「それはないんじゃないかな」
マリアが即座に否定してくれるけれど、その根拠はあるの?
「だってどう見てもアルトマイアー様はあなたを溺愛しているわよ。剣術競技の時なんて愛しい恋人が怪我をしたみたいに慌てふためいていらっしゃったじゃない!」
マリアはそう説明してくれたが、
「でも、今はツェツィーリア様がいるもの」
私はそう思ったのだ。ユリアーナの時代は終わったのだ。
「ゲームでも、ツェツィーリア様は留学してくるの?」
「そんなの無いわよ。だから私は驚いたのよ。こんな展開無かったって」
「『ハンブルクのピンクの頭』じゃなくて、そのパート2とかに出てきたんじゃ無いの」
「『ハンブルクのピンクの薔薇』ね」
「えっ、そんな題名だったのね。私はピンク頭しか見ていないから」
私は言い訳した。
「聖女様の事そう呼ぶのはあなたしかいないわよ。さすが悪役令嬢ね」
「えっ、一応聖女様ってたまに言うわよ」
本当のたまにだけど……
「私の生きている間はそんなのは出なかったわよ。出ていたら必ず私がしていたから」
自信をもってマリアが述べてくれた。
「そうなんだ。じゃあ、なんなのかな、ツェツィーリア様の留学って」
私は不思議だった。本来宗主国のお姫様が出てくるなんて絶対におかしいのだ。
「まあ、帝国の皇女と言われているけれど、所詮王弟の娘だから、皇帝の娘とは違うわ」
なんかマリアの言うことも辛辣で不敬だと思うんだけど……
「その皇弟の娘を最近伸張著しい我が国の公爵家に嫁がせて、その手綱を握りたいというのが帝国の思惑ではないかしら」
マリアが教えてくれた。
「そうなんだ。でも、帝国からしたらこのハンブルク王国なんて吹けば飛ぶような国じゃないの。そんな国に皇女を嫁がせる理由があるの?」
私はマリアに聞いていた。ツェツィーリア様が来なければまだお兄様は私のお兄様だったのに!
その質問には少し私の愚痴が入っていたかもしれない。
「何言っているのよ、ユリア。我がハンブルク王国は属国の中では規模的には大きい方なのよ。その中でもあなたのホフマン公爵家は領地全体が騎士の国みたいな感じじゃない。我がハンブルク王国軍は元より、帝国の騎士達の中にもホフマン公爵家出身の者は多いわ。その中でもアルトマイアー様は成長著しい注目株だし、リーゼロッテ様は王家に嫁ごうとなされているわ。これからますますホフマン公爵家がハンブルク王国は元より帝国全体の中でも力を持つ家になるので、今のうちに手を打っておきたいんだと思うわ」
マリアが説明してくれた。帝国の中でも我がホフマン公爵家の地位は高いと知って私は単純に嬉しかった。
「そうなんだ。我が公爵家は帝国の中でも注目されているの……」
そう言っている時だ。
私は巨大な魔術の反応を感じたのだ。
「バリア!」
私は躊躇無く大声を上げると障壁で馬車を囲ったのだ。
ドカーン
凄まじい衝撃が馬車を直撃して、何も構えていなかったマリアが私にダイブしてきたので、私は抱き留めたのだった。
いきなりの魔術での攻撃の犯人は誰?
続きは明日です。








