王宮のお茶会に西瓜に釣られて出ることになりました
鈴鹿で断崖絶壁の尾根道を歩いていたら滑って落ちそうになったり、滑って中々よじ登れなかったり、スリル満点の縦走登山でした。今日からまた頑張ります
私はお兄様と気まずいことになっていたけれど、健気にも夕食時には食堂にちゃんと来たのだ。
「お前はどんなことがあっても食事を抜いたことがないだろう!」
後でエックお兄様に言われたけれど、そんなことないわよ。私も乙女心があるわ!
「食べ物であっさり釣られる乙女心がな」
エックお兄様は容赦がなかった。絶対にそんなことないわよ!
誰も信じてくれないけれど……
その日の夕食は珍しくお父様も揃っていた。
私の横のお兄様とはとても話づらかった。
こういう時のピーちゃん頼みだ。
「ピーちゃん、はい、あーん」
私はピーちゃんの食器におさじを入れてすくうとピーちゃんに食べさせた。
「ピーーーー」
ピーちゃんは喜んで食べてくれた。
「ピーちゃん可愛い!」
「ピー」
私が声を出してピーちゃんを愛でるのにピーちゃんも応えてくれた。
そして、もう一口食べさせようとした時だ。
横からいきなりお兄様が現れて私のスプーンに食らいついてくれたんだけど……
「ピーーーーーーーー」
ピーちゃんが怒ってお兄様に噛み付こうとして、
「ガォーー」
お兄様が牙剥いて叫び出すんだけど……
「ちょっと、お兄様、何、ピーちゃんのご飯取っているのよ!」
「ピー」
私が怒って言うと横でピーちゃんも抗議する。
「ふんっ、何を言っている。ユリアから食べさせてもらうのは俺だけの特権だ」
お兄様は訳のわからない事を言い訳してくれた。
「はああああ! 私、お兄様に食べさせなんてさせたことないわよね」
私が文句を言うと、
「いや、子供の時に食べさせてもらったことはあるぞ」
「いつの話をしているのよ」
「ユリアに食べさせていいのは俺だけだし、ユリアが食べさせていいのは俺だけだ」
お兄様はまた訳のわからない事を言ってくれるんだけど……
「何言っているのよ、お兄様。そんな規則はないわよ」
私が怒って言うと、
「それならデザートをやらないぞ」
「何よ。それ、別に要らないわよ」
「何、一生涯のデザートだぞ?」
お兄様が驚いて聞いてきた。
一生涯って、お兄様の婚約者が決まるまでだと思うし、ツェツィーリア様が現れたんだから、もうすぐじゃないの?
「別にいいもの」
私はむっとして横のフランツお兄様を見た。
「フランツお兄様。デザート」
そう言うと口を開けてフランツお兄様が入れてくれるのを待ち構えたのだ。
「いや、ユリア、絶対に無理」
フランツお兄様は私の後ろを見て、何か恐怖に震えているんだけど、私の言うことに逆らうの?
「フランツお兄様。私にそんなこと言っていいの?」
私はニコリとフランツお兄様を見た。
「昨日、朝の鍛錬の時間に……」
「わああああ、待った、ユリア、それだけは」
「じゃあ、ああん、んぐ!」
私の開けた口の中にフランツお兄様でなくてお兄様がスプーンに乗せた山盛りのケーキを口の中に突っ込んでくれたのだ。
「ングングング」
私は何してくれるのよ!
しかし、量が多くて話せなかった。それを食べ終わって、やっと反論しようとした時には、また同じ山盛りのケーキをお兄様に口の中に突っ込まれた。
止めてよお兄様!
結局私は言葉を発する暇も与えられずに、私の料理を全てお兄様に食べさせられる結果になってしまった。
それを呆れてお父様達は見ていたんだけど、注意してよ!
「ところで、アルト、王宮のお茶会に王妃様からお誘いがあったんだが」
お父様がお兄様に切り出した。
「嫌です」
一顧だにせずにお兄様は断った。
「はああああ? 何を言っているんだ。公爵家の嫡男ともあろう者が王妃様のお茶会をそう簡単に断れる訳はなかろう」
お父様の言うことももっともだ。
「学園在学中は学業優先のはずですが」
おおおお、お兄様もまともに反論した。
一応論には適っている。
「まあ、そうなのだが、今回の歓迎のお茶会は昔我が家で世話したこともある留学生のツェツィーリア殿下の歓迎のお茶会も兼ねているそうだ。その縁もあって出て欲しいそうだ」
「確かに、それは出た方がよいのは判りますが、王宮であるというの」
お兄様は嫌そうな顔をした。
「王妃様からは是非ともご家族全員で来てほしいって言われているのよ」
お姉様が横から追加で余計な事を言い出してくれたんだけど……
「えっ、私はツェツィーリア様を知らないから行く必要はないわよね?」
私が思わず聞いていたら、
「何言っているのよ。あんたも来るに決まっているでしょ」
お姉様にあっさりと言われてしまった。
「そんな!」
私はマイヤー先生のいる王宮にできる限り近付きたくないのに!
「あなたの友達のフルート子爵令嬢の作った化粧水、売り込む絶好の機会よ」
「えっ、それはそうだけど」
でも、基本私は王宮に行きたくないのに……
「ということでエックとフランツは必ず、二人を連れてくるように」
お父様がエックお兄様とフランツお兄様に命じてきたんだけど、
「父上、無理ですよ」
「この二人が僕らの言うこと聞く訳はないでしょ」
エックお兄様とフランツお兄様が言ってくれるんだけど……
「大丈夫だ。今回はツェツィーリア殿下が帝国から西瓜という果物を持って来たくれたそうだ。ユリア、西瓜という果物はとても美味しいそうだぞ」
お父様が私を見て言ってくれた。
いつもいつも私が食べ物で釣られる訳ないでしょ!
私はお父様に反論しようとしたのだ。
「えっ、西瓜が食べられるの?」
でも、口から出てきたのは別の言葉だった。
西瓜! 前世で食べたのが最後だから12年ぶりか?
めちゃくちゃ食べたい!
私の理性を感情が支配してしまったのよ。
またしても食べ物で釣られてしまったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
食べ物であっさりと釣られたユリア、果たしてどうなる?
続きは今夜です。
お楽しみに!








