決勝でお兄様に斬りつけられて腕の骨を折られてしまったら、お兄様が血相を変えて私をお姫様抱っこして看護テントに運んでくれました
今日はお昼に一話更新押しています
まだの方はそちらからお読みください。
私はお兄様と対戦することが決まってしまった。
最悪だ。勝ってもメリットはほとんど無いし……
それに今まで何回やっても勝てたことは無い。
やる前から圧倒的に不利だった。
まあ、でも、やるからには勝たないと。要するになんとかしてお兄様を場外に出せば良いのだ。
これはいうは安し、やるは難しだ。
これと言ってエックお兄様では無いから思いつかなかった。
そして、私が良い案を考える前に決戦の時が来た。
「5年A組アルトマイアー・ホフマンさん」
お兄様が呼ばれて会場の中に入ってきた。
「「「アルトマイアー様!」」」
「5連続優勝頑張って下さい!」
「アルトマイアー様!」
ピンク頭はマイクの音量全開で叫んでいた。
「対するは、1年A組の期待の星、ユリアーナ・ホフマンさん」
「「「「ウォーーーーーー」」」」
お兄様に対する歓声の数倍の男達の大歓声が響いたんだけど……私はその多さに唖然とした。
「ユリアーナちゃん!」
「憎たらしいアルトマイアーを倒してくれ!」
「ユリア頑張って!」
「ユリアーナ様」
最後の方はクラスメート達だ。
なんか知らないけれど、私は大人気みたいだ。
前世では病弱だったし、今世でもお兄様の陰に隠れてこんな人気になったのは初めてだ。
戸惑い半分、うれしさ半分だった。
「片や巨体のチャンピオンに対して、ユリアーナさんはまだ1年生、体も小さいです。巨大な竜を目の前にしたか弱い少女のようです」
司会が絶叫してくれたけれど、本当にそうだ。ハンディが欲しいくらいだ。
考えたら公爵家の試練の間もそうだった。私はまだ幼い少女で巨大な竜に勝ったのだ。
「クラウス殿下、対戦してどうでした?」
司会が先程私と対戦したクラウスに聞いてくれた。何故かゲストでクラウスがいるんだけど……
「ユリアーナはいつも通りだったよ」
「それだけいつも強いと言うことですか?」
「そうだね。ユリアーナの強さはフリッツ先生がよく知っているよ。何しろフリッツ先生はユリアーナが六歳の時にやられているからね」
「殿下、ばらすのは止めてください」
フリッツ先生が遠くから叫んでいるが、
「いや、でも母上のお茶会だったからね。ここにいる1割くらいの生徒は見ているから今更だよ」
殿下は容赦が無かった。
「そうなんですか! ユリアーナ嬢は小さい時から強いんですね」
司会が驚いていた。
「何しろ彼女は公爵家の試練に、三歳の時に挑戦して乗り越えているからね」
「本当ですか? あの生存率5割言われている公爵家の試練に立ち向かって生き残ったのですか?」
えっ、生存率5割だったの? 初めて知った。
と言うか、わたし、そんな危険にところに参加させられたの?
「ということは彼女が勝てる可能性は少しくらいはありますか?」
「うーん、アルトマイアーの強さは別次元だからね。彼女でも厳しいんでは無いかな」
クラウスは容赦が無かった。まあ事実だ。
「奇跡にかけるしか無いね」
「なるほど、公爵家の試練を越えたユリアーナ嬢でも奇跡にかけるしか無いと言うことですね」
司会は適当に相槌を打ってくれているんだけど……
「では期待してみてみましょう」
その声に皆が私達を注目してくれた。
まあ、お兄様には勝てるとは思わなかいけれど、ここまで来ればやるしかない。
お兄様に勝つには、お兄様が本気出す前になんとか勝負をつけるしか無かった。
私は最初に持てる全ての力で勝負をかけることにしたのだ。
「両者前に」
先生が声をかけてくれた。
私は模擬剣を鞘に刺したまま、前に進み出たのだ。
「ユリア、なんだその格好は?」
剣を抜かない私に不審そうな声をお兄様が出した。
私はニコリと笑って誤魔化したのだ。
「始め!」
先生が合図した時だ。
私は両手を大きく広げたのだ。
右手には鞘に入れたままの剣が入っていた。
「はっ?」
お兄様が呆けたような顔を私に向けてきた。
その時だ。
私は魔力強化を最大にして、一気に加速したのだ。
一瞬で鞘を抜くと、目にもとまらない早さでお兄様に打ちかかった。
お兄様は一瞬初動に遅れが生じた。
そこを思いっきり打ち込んだのだ。
ガキンッ!
しかし、お兄様は瞬時に受けてくれた。
駄目だ。初動でも勝てなかった。
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!
私は次々に打ち込んだが、お兄様は悉く弾いてくれたのだ。
周りの皆にはほとんど見えなかったと思う。
私はお兄様が息つく暇も無く次々に打ち込んだのに、お兄様は悉く剣で防いでくれた。
駄目だ。私の体が保たない。
お兄様の受ける剣が鋭くなってきた。
このままではやられる。
そう思った時だ。
お兄様が私の打ち込みを避けて、そのまま打ち込んでくれた。
ガキンッ!
私は身体強化して剣で受けたが、体中に衝撃が走る。
手が震えた。
ガキンッ!
更にもう一撃。
ガキンッ!
最後の打ち込みで剣を取り落としていたのだ。
そのままお兄様の剣が私を襲って右手にぶつかっていた。
「キャッ」
思いっきり身体強化したが、私は腕を押さえて、しゃがんでしまった。
このまま、怒濤のお兄様の打ち込みが始まる。
私が身構えた時だ。
「ゆ、ユリア! 大丈夫か?」
「えっ?」
私は唖然とした。お兄様がとても取り乱していたのだ。
剣を捨てて慌てて駆け寄ってきてくれたんだけど……何で?
「痛い!」
お兄様が私の腕に触ると私は叫んでいた。
腕が衝撃で骨が折れたのかもしれない。
でも、そんなことは訓練中はよくあることなのに……
お兄様が真っ青になっているんだけど……
「骨が折れたかもしれないじゃ無いか?」
そう言うとお兄様が私をいきなりお姫様だっこしてくれたのだ。
「えっ?」
私は唖然とした。まだ試合中なんだけど……
私は参ったとも言っていないのに!
「ユリア、大丈夫か、しっかりしろ」
皆が騒然として見守る中で、私をお姫様抱っこしたまま、そのまま看護テントに私を運んでくれたのだ。
それを周りは呆然と見てくれていた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
試合の結果はどうなるのか?
続きは明朝です。
お楽しみに!








