夕食の席で下の兄に化け物って言われたのでそのデザートを食べてやりました
その日の夕食も我が家は賑やかだった。
私の好物のコンソメスープが出てきて私は大満足だった。
この何も入っていないのに、濃厚な味わいが私は大好きなのだ。
「で、王妃様の反応はどうだったんだ?」
コンソメを味わっていたら、お兄様が聞いてきた。会議の後に遅くなったけれどクラウスに会って確認してきたのだ。
お父様にはマリアを助けるなと言われていたけれど、そんなの私に出来る訳なかったし、最近お父様の帰りが遅くていなかったから、却って好都合だった。
「とても喜んでもらえたみたいなの。クラウスが言うには『もっとないの?』って聞かれたって」
私がコンソメを飲むのを止めて答えていた。
「それは良かったじゃないか」
「ええ。お姉様からもらったってクラウスからも言ってもらったから、お姉様の株も上がったみたい」
私がお姉様を見て言うと、お姉様も少し嬉しそうだ。
「持って来たのがお前なのに、リーゼの手柄にしたのか?」
お兄様が少し不満そうに言うが、
「良いのよ。お姉様で。お姉様とクラウスの仲が良くなって、更に王妃様と仲が良くなれば言うことはないわ。下手に私が王宮に呼ばれたら、また最悪じゃない」
私は王妃様は苦手だ。
「そうだな。また王妃様は新しい騎士に入れ込んでいると聞くからな」
「ユリアが王宮に行ったら、また王妃様のお気に入りを叩きのめしそうだしな」
エックお兄様まで余計な事を言ってくれるんだけど。
「失礼ね。私はそんなことはしないわよ」
「お前、良くそんなこと平然と言えるな」
「ユリアの被害に遭った騎士の数は両手では足りないんじゃないか?」
横のフランツお兄様までが言ってくれるんだけど。
「そんなことないわよ」
私が頬を膨らませて2人を睨むと、
「何言っているんだよ」
「この前フリッツ先生をボコボコにしたくせによく言うよ」
二人して反論してくれた。
「えっ、あれは勝負を挑んできたフリッツ先生が悪いのよ。おなかが空いていて最悪の時だったし」
「ユリアが空腹の時にやるなんて、フリッツ先生も馬鹿だよな」
「そんな機嫌の悪い時なら俺なら近寄らないよ」
「見た目が可愛い女の子に見えるから皆油断するのよね」
3人で好き勝手なことを言ってくれた。
「性格は凶暴を極めるのにな」
調子に乗ってフランツお兄様が最後に余計な一言を言ってくれた。
「フランツお兄様、何か言った?」
私がぎろりとお兄様を睨み付けると
「いや、何でもない!」
そう言うと、メインのローストビーフを私の視線から隠すようにして食べ出したんだけど。
「ちょっと、取り上げたりしないわよ。酷いお兄様よね、ピーちゃん」
私が後ろのピーちゃんを見て言ったら、
「ピッ」
ピーちゃんまで器を隠してくれるんだけど……
私は少しむっとした。ペットの分まで取らないって!
「しかし、王都騎士団も何故ボケナス伯爵を捕まえないんだ?」
お兄様が今度は思い出したように怒り出した。
「伯爵がキンメル侯爵に手を回したみたいですよ」
エックお兄様が教えてくれた。
「キンメルか、一度お灸を据える必要があるのか?」
お兄様が物騒なことを言い出した。
「いや、ちょっと、お兄様」
「さすがにやるのはまずくないですか」
お姉様とエックお兄様が青くなってお兄様を止めていた。
切れたらお兄様は何をするのか判ったものではないのだ。
お姉様が私に合図してきた。さっさと話題を変えろと言っているのだ。
私に対する行いが雑だ。クラウスの前でもこれくらい動いてくれたら楽なのに!
何でクラウスの前ではあれだけ役立たずになるのよ?
私にはよく判らなかった。
「お兄様。今度の競技大会は何に出るの?」
仕方がないから私が聞いてあげたのだ。
「競技大会か? そんなのは剣術競技に決まっているだろう。我が公爵家の人間は剣術に決まっている」
お兄様が言い切ってくれたんだけど。
「勝手に決めないでよ。私は剣術には出ないわよ」
前でお姉様が怒って言い出した。
「ユリアはどうするんだ?」
「まあ、ユリアなら何に出ても良いところまで行けると思うが」
エックお兄様が聞いてくれた。
「エックお兄様は何に出るの?」
「俺も兄上にそう言われたから剣術だ」
「えっ、じゃあフランツお兄様も?」
「仕方ないだろう。兄上にそう言われたらでるしかないじゃないか」
フランツお兄様が不満そうに言ってくれた。
「当たり前だろう。我がホフマン公爵家のものは皆将来は騎士になるのだ。剣術に出ないでどうするのだ?」
お兄様はそう言うけれど、別に学園競技だ。何でもいいと思うんだけど。
「ユリア、どうする? お前が剣術で優勝したらもう一年分、デザートをやるぞ」
更にデザート一年分。
私はお兄様に今日のデザートのケーキを食べさせてもらいながら考えた。
「ちょっと待ってよ。それってお兄様に勝たないともらえないじゃない」
私にはそこはとても難しかった。だってお兄様は1年の時から剣術競技は優勝しているのだ。騎士候補の人間を悉く叩きのめしたと聞いていた。
「当たり前だ。俺を倒してこそ真の騎士だ」
お兄様が言ってくれるんだけど、さすがの私では無理だ。
「ユリアの基準って凄いよな。エック兄上とか強い騎士はまだ一杯いるのに、兄上以外には勝つ気満々でいるんだから」
横でぼそりとフランツお兄様が呟いた。
「フランツお兄様。デザート1年分かけて私と勝負する?」
私がフランツお兄様を見て言うと
「そんなのお前が勝つに決まっているだろう」
「フランツ、妹に負けてどうするんだ」
「兄上、ユリアは別格です。ユリアは妹とはいえ化け物なんですから」
自信満々にフランツお兄様が余計な事を言ってくれるんだけど!
「誰が化け物なのよ」
私はフランツお兄様を思いっきり叩こうとした瞬間だ。
フランツお兄様は脱兎の如く椅子から飛び降りて逃げ出してくれたのだった。
「信じられない!」
むかついた私はフランツお兄様が残していたデザートを頂いたのだ。
「あっ、ユリア、酷い!」
「人を化け物呼ばわりするからよ」
怒った私はオロオロするフランツお兄様を無視して、ケーキを一個食べきったのだ。
それを呆れてお姉様達が見ていたけれど……絶対に人を化け物呼ばわりしたフランツお兄様が悪いんだから!
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは今夜です。
お楽しみに!








