将軍にお母様を貶められた私は思わず雷撃して殲滅してしまいました
それから、一人、二人と騎士達が次々に現れた。
付近の領地を拝領している貴族達も1旗揚げるために来た。というか十年前の政変で領地を削減された貴族達が多くこの地に集めさせられていた。
皆領地削減されても多くの使用人を抱えていて貧乏だった。
それは用具を見ても判る。
帝国の正規騎士達は鎧もお揃いで色まで合わせているのが、貴族達の鎧は同じ領地でもまちまちで、装備もお古が多かった。
「ユリアーナ殿下、あなた様が立たれるのをお待ちしておりました」
貴族の皆はそう言ってくれるけれど……どうなんだろう?
貴族家の中には、貧困にあえいで自棄になっている家もあると思う。
帝国の皇帝ヴィクトールは、逆らった領主に厳しく、なんとか生きていける分しか領地を与えていないみたいだった。
貴族達は借金を重ねており、このままではいずれは破産するのは目に見えていた。
そう、私について立上がるしかなかったのだ。
エックお兄様はそういった家に帝国建国伝説を流して、いずれ私が立つはずだからと商人の人達を使って大量の情報を流していたみたいだった。
その情報に最後の賭けをするために多くの貴族家が集まったのだ。
結局私たちの元には1万人の兵力が加わった。訓練されていない獣人部隊1万人、政治犯5千に、ホフマンの派遣部隊5千と極貧にあえぐ周りの貴族家5千が加わった。
主力は当然ホフマンの5千だと思う。
対して、皇帝の主力の戦力20万は圧倒的に強そうだった。
皇帝は近衛の1万と周辺の味方の貴族騎士団5万、帝都周辺の皇帝の意のままに使える騎士団14万人だった。
皇帝の親衛隊と言っても良いだろう。
それが万全の装備を調えてこちらに向かっていた。
こちらはその10分の一の2万人だった。
十分の一の戦力だ。
ヴィクトール軍に比べて圧倒的に少なかった。
敵に四天王がいなければこれでも互角の戦いができたと思う。
でも、敵には私とお兄様が組んで戦っても1人に勝てるかどうか判らない、四天王が4人も居るのだ。
普通にやって勝ち目は無いだろう。
お父様が1万の軍勢を率いて、国境を越えたという情報も入ってきたが、帝国軍と戦うまでには間に合わないだろう。
そして、その皇帝が出てくる前に、近くの帝国騎士団が攻めてきた。
でも、その数が1万しかいないんだけど、さすがに私たちを馬鹿にしているじゃないだろうか?
1万なら、お兄様だけでも十分なような気がするんだけど……
「取り敢えず、獣人1万でどれだけ戦えるか見てみたい」
お兄様がそう言ってくれたので私は頷いた。
獣人がどれだけ戦えるか調べるのは見るのは決戦のためにも必要だった。
「お兄様、私の杖もどれだけ使えるか、試しても良い?」
私も自分の杖を戦闘で使った事がないので試してみたかった。
「まあ、構わないが、あまり全力を出すなよ。取り敢えず獣人の戦力を見るのが優先だからな」
お兄様に言われて私は頷いた。
軽くやってみても、ある程度の杖の力はわかるだろう。
ドネツ鉱山の向かいの平原に敵の騎士団1万の軍が並ぶのは中々のものだった。
1万と言っても結構多そうだ。
向こうは真っ青に染めた鎧を全員に着せていて、壮観な眺めだった。
対してこちらの獣人部隊は寄せ集めの集団で、今まで奴隷として働かされていた混成部隊だ。当然実戦の経験はない。
見た目は鎧なんて全部は揃えられなかったから、色んな色がある。帝国の騎士達の鎧を剥いで使ったりもしていたから、色も形もまちまちだ。
「見てみろ、者共、敵は獣人の奴隷どもだ。装備もちゃちだし、きゃつ等は下等生物だ。我が軍の勝ちは決まったぞ!」
敵の総司令官の太った男が何か大声で叫んでくれた。
「何を言っている。初代皇帝陛下が獣人は奴隷にあらずと、獣人王国の建国を許されたのだ。
逆賊ヴィクトールはその初代皇帝陛下と聖女様のお心に逆らったのだ。その方共もまとめて地獄に送ってやるわ」
お兄様が叫び返してくれた。
「ほう、そこにいるのは辺境の属国のホフマン家の能なしか」
敵の将軍がお兄様に失礼な事を叫んでくれた。
「何だと」
お兄様の怒りのボルテージが上った。
「お兄様! ここは抑えて!」
私はお兄様を抑えるためにその裾を引いた。
「判っている」
お兄様は少し怒りを抑えてくれた。
本当にこの指揮官も馬鹿だ。お兄様が激怒したら一撃で全滅してしまうのに!
何がしたいのよ?
私にはよく判らなかった。
そうか卑劣な皇帝から最初の犠牲者になるように命じられているのだろうか?
犬死にだと思うけれど……
「その横にいるのは偽皇女か? 貴様の母親の淫乱皇女がとっかえひっかえ男あさりをして産んだのがその方だと噂になっておるぞ」
「何ですって!」
私のボルテージが上った。
「ユリア抑えろ」
お兄様が横から私の手を握ってくれた。
私は少し深呼吸をした。
「その淫乱皇女が自分の体を差し出す代わりにお前の命を助けてくれと命乞いして、お情けで許されたのに、反逆するとは……」
「黙れ! お母様を貶めるな!」
私はその豚将軍の言う事が我慢できなかった。
ぷっつんキレてしまったのだ。
次の瞬間には私の怒りが黄金の杖に伝わり、杖が凄まじく光ったのだ。
ピカピカドカーーーーン
特大の雷撃が将軍と周りの兵士達に襲いかかった。
「「「「ギャーーーーー」」」」
付近に男達の悲鳴が響き渡った。
そして、黒煙の消えた後には私の怒りの雷撃の前に何者も残っていなかった。
緒戦はぷっつんキレたユリアの前に敵は殲滅されました。
次は敵本隊との決戦です
お楽しみに








