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近くの鉱山を制圧して奴隷達を解放しました

 私が長から金の杖をもらったその夜は皆で魔物の焼き肉大会だった。


「美味しい!」

 私が食べる尻からお兄様はステーキを私の目の前においてくれる。

「あっ、これも美味しい!」

「これも」

「これも!」

 私はあっと言う間にお腹いっぱいになってしまった。


「ふうううう、食べた、食べた」

 そう言ってお腹を押さえたら、皆に白い目で見られてしまった。


「こんなのが未来の皇帝で良いのか?」

「さすがにまずいのでは?」

 何か後の方でブツブツ言っているのが聞こえたが、はっきりと何を話しているのか聞こえなかった。


「お姉ちゃん。クッキーあるよ」

 アダがお皿一杯のクッキーを持ってきてくれた。

「ああああ! 有難う」

 私は一つ食べた。


「まだ入るのか?」

 長が呆れて私を見てくれたが、デザートは別腹なのよ!


「で、アルトや。その方達には物も渡したしな。そろそろ、次の手に移っても良かろう」

 長がお兄様を見た。

「なら、その前にこの辺りで奴隷にされている獣人達の解放が先決だろう」

 お兄様が言ってくれた。

 そうだ。天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずだ。

 この世界は王侯貴族がいて日本みたいに皆平等ではないけれど、人間に扱われない奴隷なんて許されるものでは無い。少なくともこの世界の獣人は人間なのだから。

 色が黒い人間は人間で無いとか言う白人みたいになってはいけない。

 アメリカの独立宣言みたいにモンゴロイドは人間で無いとかそんなふざけたことは許されないのだ。


「ほう、我が獣人達を助けてくれるのか」

「奴隷は帝国の初代皇帝様が禁止したことだからな。現偽皇帝はそれに反している」

 長の言葉にお兄様は平然と言い切ってくれた。

 さすが私のお兄様だ。でも、皇帝のことを偽皇帝とはっきり言ってくれたけれど、それってもう反逆なんだけど、良いんだろうか?


 後で皆に聞いたら、奴隷を解放したことが既に反逆だって言われたんだけど……

 ええええ! そうだったんだ!

 驚いた私は皆に呆れられてしまった。



「この辺りではドネツ鉱山が一番大きい鉱山ですが」

 アリーサが教えてくれた。

「ドネツか、ここから一日の距離があるな」

「はい。獣人奴隷が一万人、政治犯が五千人収容されていると言われています」

「1万五千か、丁度良い戦力になろう」

 長が頷いてくれた。

 それに対する見張りは三千もいないらしい。

 まあ、三千人くらいなら大したことは無いはずだ。

 こちらは百人くらいしかいないけれど、まあ、捕まった人達を解放していけば、それくらいの人間はすぐに集まるだろう。

 私は楽観していた。

 それが甘かったのだ。




 私達はドネツ鉱山まで歩いて移動すると、その一区画にお兄様の力で全員転移したのだ。

 中の監督達を武装解除するのは一瞬だった。


「今、鎖斬りますから」

「あっ、有難うございます」

 女の人は私を見上げてくれた。

 髪が結構白くなっていて、しわも刻まれていた。でも、おそらくまだそれほどの年では無いはずだ。


 私は短剣を握ると足輪にグサッと突き刺して……失敗した。


「ギャッ」

 女の人の悲鳴が洞窟内に響いた。

 きつくやり過ぎたのだ。

 女の人の足を縛っていた足輪はわれたが、その下の女の人の足まで刺してしまった。


 血が噴き出した。

 女の人は真っ青になって倒れてしまった。

「キャーーーー、どうしよう」

 私は慌てて足を押さえたが血は止まらない。

 私も青くなってしまった。


「何をしているんだ」

 お兄様が駆け寄ってくれた。

「アリーサ!」

「えっ、どうしたんですか? まあ、酷い! ここまでやるなんて、アルト様ですか」

 非難の視線をアリーサがお兄様に送る。

「いや、俺じゃ無くて」

「それよりも早く止めてあげて」

「ユリアさんなんですね」

 非難の籠もった目で私を見てくれたが、

「ヒール!」

 癒やし魔術を女の人にしてくれた。

 たちまち女の人の足首の傷は治ったのだ。

 さすが、アリーサ。


「ユリアさん、慎重にやってくださいね」

 アリーサが念押ししてくれた。

「はい」

それからは慎重に少しずつ、削るようにしたのだ。

「おい、お嬢ちゃん、まだか」

周りの獣人達が次次に解放されていく中、その獣人の鎖が中々切れなかった。


本当に人の足に填められた鎖を切るのは難しかった。

「ユリア、何をしているんだ。そんなの思いっきりグサッと刺せば良いだろう?」

お兄様が横に来て言ってくれるが

「そんなことしたらこの人の足切ってしまうでしょ」

「ヒェェェェ」

私の言葉に男が怯えるが

「ちょっと動いたら足切るから」

「た、頼むから助けて」

「俺が斬ってやろうか、多少は斬ってもアリーサが治してくれるだろう」

「…………!」

もう男の獣人は涙目になっていた。


「何をしているのだ?」

そこに長が転移して現れた。


「話しかけないでください。この人の足輪を切っているんです」

私が必死に短剣で削っていると、

「何をちまちまと貴様にやった杖を使って解錠すれば良かろうが」

呆れたように長が言ってくれるんだけど、


「えっ、そんなことができるのですか?」

私は驚いて杖を取り出した。


「それで足輪に向けて解錠と唱えてみるが良い」

「解錠!」

私が唱えると金の杖が光って男の切りかけの足輪に光が飛ぶ。

次の瞬間には鎖は開いていた。


「何だ、こんな手があったんだ」

「良かった。足を切られないで」

喜んだ私の横で男がほっとしたいた。


「他の皆にもやってみるが良い」

「はい!」

私は俄然やる気になった。

「解錠!」

次の男の足輪を外す。

「解錠!」

「解錠!」

私は楽しくなってきた。

でも、それは面倒だ。

皆まとめてできないだろうか?

私は思いついた。

できるかどうかやってみよう!

「全部まとめて解錠」

私の杖が金色に大きく輝いて、四方八方に金の光が飛んで行った。

「「「「おおおお!」」」」

洞窟の中にいた奴隷の鎖は全て解錠されていた。

「よし、皆のもの、一気に外の兵士達を倒すぞ」

「「「おおおお!」」」

お兄様のかけ声に皆揃って洞窟の外に向けて動き出した。

外に出ると多くの奴隷達の鎖が解錠された後で各地で戦いが起こっていた。

どうやら私の解錠の魔術は洞窟の他まで飛んで行ったらしい。

お兄様と私、それに開放された獣人達が加わったことによってあっと言う間にドネツ鉱山は制圧されたのだ。





ここまで読んで頂いてありがとうございます。

次は再びフランツとピーちゃんです。

1匹と一人の戦いがまた始まります。

目標は宮殿……

ええええ! 

皇帝の宮殿に向かえって?

唖然とするフランツとピーちゃんの行進が始まります

今夜、お楽しみに!

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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