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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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逆鱗 ②

「お酒ェー!!」


「アル中って怖いわね」


「ボク将来酒だけは飲まないようにするよ」


「利口やな、あんなもん百害あって一利なしや」


「さすがにここまでの被害は想定外ですね……」


 仕掛けた罠が上手く嵌ったことを確認し、深夜の町はずれに集まったおかきたち。

 そこで見たものは半壊した元ボーリング場と、原形の亡くなった玄関前で酒瓶を抱きしめる飯酒盃バケモノの姿だった。


「相手が不良なら酒やたばこなどの嗜好品は恰好の獲物……この学園で酒が入手できる場所なんて限られてますからね」


「だから飯酒盃いさはい先生の私物にGPS貼り付けまくったら案の定引っかかってくれたわけね」


「飯酒盃ちゃーん、もう大丈夫だからお酒離そうよ」


「グルルルル……!!」


「ダメや完全に正気を失っとる、野生に帰すしかないで」


「飯酒盃先生、おつまみの柿ピーです」


「柿ピー!! ……はっ! 私はいったい何を……?」


「GPSの反応を追って盗品の集積所を押さえたところです、後ろの廃墟は……飯酒盃先生がやったんですかこれ?」


 改めて飯酒盃の背後に見える建物に目を向けるおかき。

 ろくに手入れもされていない廃墟であるため多少の損壊は不思議ではないが、まるでダンプカーが追突したような壊れっぷりだ。 明らかに自然崩壊ではない。


「ええっとぉ、藍上さんから話を聞いて警戒しててぇ……寝ずの番張ってたんだけど私の目の前でお酒が消えたから、GPSの反応を追いかけてここまで……」


「飯酒盃先生の家からここまで何㎞ありましたっけ」


「飯酒盃ちゃんこれでもSICKのエージェントだからそれぐらいわけないよ」


「ちょっと待ってや、酒が目の前で突然消えたって言うたか?」


「うん、そうなの……ほら、GPSのログ」


 飯酒盃が差し出したスマホの画面には、おかきたちが取り付けたGPSの移動経路が表示されている。

 そして飯酒盃宅に集中して点灯していたGPSは日付が変わった瞬間、ほぼ同時にこの廃墟の座標へ瞬時に移動していた。


「GPSの不調……ってわけじゃないのよね?」


「メンテナンスは毎日行われているはずですし、1つ2つならともかくこの数が一斉に故障するとは考えにくいです」


「ちゅうことはまさかアクタ事件の再来か?」


「学園内で天使の妙薬(ヤク)が蔓延してるってこと? それってヤバいんじゃないの飯酒盃ちゃん」


「それはないと思うわ、赤室に出入りする外部人員や物資はSICK(わたしたち)がチェックしてるもの。 後天的に能力に目覚めたって可能性もあるけど……」


「なんや歯切れ悪いな、気になることがあるんか?」


「うん、仕留めt……制圧した学生の一人が気になることを言ってたの。 “金の生る木”がどうのって」


「金の生る……木?」


「これに関しては一回観てもらった方が早いかもぉ……先生ちょっと張り切りすぎたんだけど、ちょっと中まで着いてきてくれる?」


――――――――…………

――――……

――…


「ほーん、これが金の生る木……()()()わけやな」


「見事に跡形もないね」


「ごめんね、鎮圧のどさくさで燃やされちゃってぇ……火の手が激しいから鎮火するために天井崩すしかなかったの」


「山火事になるよりマシですよ、先生の判断は間違ってません。 しかしなぜボウリング場に木が……?」


 飯酒盃に案内されたボウリング場の中には、レーンを突き破って根を張る大樹がそびえていた。

 ただし枝葉は焼け落ち、幹は煤け、全体の8割が崩落した天井の下敷きとなっている。

 炭化した木片から燻る煙と立ち込めるコゲ臭い空気から、木が燃やされたのもついさきほどのことだとわかるだろう。


「おかき、あんま近づかん方がええで。 まだ火種残っとるかもしれん」


「おっと、そうですね。 この放火は犯人の仕業ですか?」


「そうなの、取り押さえようとしたら壁に取り付けてあった何かのスイッチを押して……そしたらすぐに火がついてあっという間に」


「で、消火に気を取られている隙にリーダー格の男は逃がしちゃったわけね」


「ごめんなさぁい……あっ、お酒飲んでいい?」


「飯酒盃ちゃんのそういうブレないところ嫌いじゃないよ」


「しかしこれが金の生る木ねぇ、おかきはどう思う?」


「カネノナルキという多肉植物は知っていますが、ここまで大きな木に育つ種類ではないはずですね」


 おかきはガレキが散乱する足元をライトで照らし、ボウリングレーンの溝に挟まっていた葉っぱを1枚摘まみ上げる。

 肉厚で楕円形の効果に似た葉はおかきの知るカネノナルキに酷似しているが、やはり樹木の特徴だけが異質だった。


「飯酒盃先生、日が昇り次第こちらの葉と樹木のサンプルをSICKまで届けてください。 どうも証拠隠滅として燃やされた可能性があります」


「やっぱりそう思う? うーん、お酒に必死で何も覚えてないけどもっとちゃんと見ておくべきだったなぁ」


「でも新人ちゃん、証拠隠滅って言ってもこの木が盗人たちとどう関係するの?」


「金の生る木という名前と瞬間移動するGPSの反応でおおかた予想は着きました、あとは主犯格の居所ですね。 先生、捕まえた生徒たちは?」


「お酒の恨みは重いので裏手の木で全員逆さ吊りにしてまぁす」


「反面教師ね」


「けどまた末端の雇われバイト君じゃないかな、リーダーっぽいのは逃げちゃったんでしょ?」


「それでも旧校舎の彼より情報は持っているはずですよ、少しでも手掛かりが増えれば儲けものです。 必ず足取りを追いかけて黒幕の首根っこを掴んでやりますとも」

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