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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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おばけレストラン ①

『うっすっすー、部屋なら空いてるっすよ。 学園祭のおかげで掃除も済んでるし、好きに使ってほしいっす!』


「ありがとうございますユーコさん、これで部室は確保できましたね」


「フットワーク軽いなぁおかき」


「さすがだぞご主人(ごすずん)


 それから部活設立を決めたおかきの行動は早かった。

 まず第一に部室の確保、これについてはユーコに頼むことで解決した。

 学園祭でも世話になった旧校舎には空き教室がいくらでもあることを知っている、SICKの秘密支部兼探偵部の部室として扱えば無駄もない。


「ふふ、SICK支部があるということは人除けに使えるという事です。 快適な幽霊部活ライフが送れますね」


「活動実績がないと部として認められなくなるで?」


『それに顧問はどうするんすか?』


「活動は身内で適当な依頼をこなした体にして水増し報告します、顧問は飯酒盃先生に酒のつまみ(わいろ)を渡して頼みました」


「抜け目ないなご主人」


「用意周到と呼んでください、とりあえず部員は私とウカさんとユーコさん、それに忍愛さんに頼んで4人ですね」


「えっ、ユーコもありなん?」


『ちょっとちょっとー、自分だって赤室学園の生徒っすよ! 入部の権利ぐらい持ち合わせているっす!』


 この旧校舎はユーコ達のため、理事長が新築した彼女たちの特別な居場所だ。

 つまり理事長直々に幽霊生徒たちの存在を認めているので、ユーコ達の署名もまた部設立に有効な一票となる。

 

『自分以外の子は自力で署名できるほどの力もないので無効っすけどね、いやーそれにしても探偵部とは面白そうっすねー! 具体的にどんな活動するんすか?』


「学園内で起きた事件、および生徒のお悩み解決を目的とした慈善団体みたいなものですかね」


『おぉー、なんかかっけぇっす! 自分頑張るっす!!』


「という建前のペーパーカンパニーやろ」


「ウカさん、世の中には暴かなくてもよい真実もあるんですよ」


「仮にも探偵の言葉か?」


「おほんごほん、ともかく同好会としての最低人数は満たしました。 今後の展望はまた後程話し合いましょう」


 わざとらしい咳ばらいを残し、おかきは「新規部活動申請願」と書かれた書類をパンパンと叩く。

 あくまで部の目的は過激な勧誘を防ぐための隠れ蓑、ゆえに活動実態は二の次であった。

 唯一の懸念はおかき目当ての冷やかしが押し寄せることだが、それもこの旧校舎の鬱蒼とした立地がある程度抑制してくれるはずだ。


「ウカさん、ユーコさん、ご協力ありがとうございます。 今度何かお礼をさせてください」


「ええってええって、あのままじゃ血みどろの殺人事件でも起きるところだったやろ」


『もしかして“私のために争わないで!”って奴っすか? 人生で一度は言ってみたいセリフランキングトップ10っすよ』


「当人としては複雑な心境ですけどね、それじゃこの申請書を飯酒盃先生に提出……」


「ハァーッハッハッハ!! 私が来た!!!」


 陰気な旧校舎にそぐわない高らかな笑い声が響き、扉が勢いよく開けられる。

 顔を見ずとも、おかきはそのどこまでも通るような芯の強い声だけで乱入者の正体を悟った。

 学園祭前に散々声を掛けられ、あの舞台上で何度もセリフを投げ合った間柄なのだから。


「……宝華さん、お久しぶりです」


「ハァーッハッハッハ! お久しぶりだねおかき君、それにウカ君も!! はて、もう一人誰かの話し声が聞こえた気がするが、気のせいかな?」


「気のせいやで」


 花を背負ったような煌びやかなオーラ、「自信」が服を着て歩いているようなピンと伸びた背筋。 一目見れば忘れるはずもない。

 あまりにも薄暗い旧校舎が似合わないその人は、赤室学園演劇部部長 宝華 ロスコで間違いなかった。


「それでどうしたんですか一体、わざわざこんな旧校舎まで足を運んで」


「君を探していたのさ、藍上おかき君!」


「……申し訳ありませんけど、部活の勧誘ならお断りしますよ?」


「なに、君が簡単になびくような人間でないことは知っているよ。 新しい部を立ち上げるんだろう?」


 おかきの手に握られた書類に視線を送り、ロスコは不敵に笑う。

 しかしその反応は「たった今、部の立ち上げを偶然知った」というものではない。  おかきの行動を見透かしていたような態度だ。


「覚えておくといい、この学園には何人か優秀な情報屋がいる。 君の行動はすでに一部の生徒にはリークされているよ」


「それは恐ろしいですね、情報ありがとうございます」


「けどそうなると何しに来たん? おかきを探してたのは間違いないやろ」


「察しが良いね、実は探偵部設立にあたりお願いしたいことがあってね。 入ってきたまえ」


「…………こ、こんにちはぁ~」


 ロスコの背中からひょっこり顔を覗かせたのは、メガネをかけた黒髪の少女だった。

 視界を遮るほど伸びた前髪と厚いレンズに阻まれ、その下に隠れた目は見えない。

 丸まった背を伸ばしても自分と同程度の背丈しかないその少女に、おかきは見覚えがあった。


「えーっと、たしか学園祭の演劇でヒロイン役だった」


「う、卜垣うらがきアイカと申します! その節はどうお世話わわわ……!」


「おかき君には見舞いにも来てもらったね、その時には彼女は気絶してしまったけども」


「ええ、その節は驚きましたけど。 足の捻挫は治って来たみたいですね、良かったです」


 卜垣 アイカ、彼女は本来な学園祭でロスコとともに舞台に上がるはずのヒロインだった。

 しかしその望みは子子子子 子子子が絡んだ悪意によって阻まれ、代役としておかきが抜擢。

 見事舞台が大団円を迎えた後、おかきも彼女の見舞いに赴いて少しばかり面識はあった。


「さて、探偵部に頼みたいのは卜垣君についてなのだが」


「学園祭の事件は決着がついたはずでは?」


「それとは別件さ、なんというか説明が難しいが……あるレストランを探してほしい」

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― 新着の感想 ―
[良い点] レストラン、、、怪異、、、SCPにそれらしいのがいるけど どれもこれも人的被害がやばいからワクワk不安でいっぱいだなぁ [一言] 最近なんかこの小説に似たようなところを見た気がする ってT…
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