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神の裁き×怒りの矛先×狂喜……1

 太陽を思わせる巨大な炎の塊が術者の手により造り出されるとシュゲンは一瞬、【フェルドルム大樹海】に視線を向ける。


 防壁の損傷と至る箇所に入った大小の亀裂、目の前に造り出された巨大な炎を耐えられる程の力は既に無いであろう事を理解する。


「ほんに、悪ガキが調子に乗りよってッ!」


 シュゲンは片手を発光させると長槍を造り出し、それを両手に確りと握ると初手同様に足場となる葉を造り、空中を移動していく。


 術者は動き回るシュゲンに苛立ちながら、炎を造り出している反対の腕をシュゲンに向けて伸ばすと掌から炎を撃ち放つ。


 しかし、威力の弱い火炎弾をシュゲンは無視しつつ、危うい物も長槍により、弾き飛ばす、そうして背後に回り込んでいく。


 無数に火炎弾を連弾する術者、シュゲンはその()()全てを回避する。


 火炎弾は十発に対して一発程度の命中となるも、シュゲンは満足そうに笑みを浮かべていた。


 術者は気づいていなかったが、シュゲンを追いながら方向転換をさせられていた。


 フェルドルム大樹海が術者の背後になり、大樹海へと振り向けば、シュゲンからの攻撃を受ける状況になっていたのだ。


 全て回避出来た筈の火炎弾を敢えて当たったのも、術者がシュゲン自身の始末を諦めぬようにする為であった。


 そして、背後を取られまいとフェルドルム大樹海に背を向けた瞬間から、シュゲンの反撃が始まる。


 シュゲンの手に握られた長槍が突如、弓に代わり、即座に弓が引かれる。


 太い矢が物凄い速度で術者に向かって加速していく。


「そんな物ッ! 神の炎の前には無意味なんだよッ!」


 火炎弾の威力を上げ、一気に撃ち放つ術者。


 矢が炎に触れた瞬間、弾け、無数の矢となり四方八方に炸裂する。


 矢を包み込むようにした火炎弾の中から炎が散ると、その背後から凄まじい速度で加速しながら長槍を前に向けるシュゲンの姿に術者が気づく。


 すぐに火炎弾を撃ち放つも、動揺から、威力はなく、術者は慌てて、片手に造り出していた炎の塊をシュゲンに向けて投げ放つ。


 その瞬間、シュゲンは長槍に両足を乗せ、力いっぱいに蹴ると、凄まじい速度で回避を取る。


 術者がその行動に笑みを浮かべた瞬間、シュゲンは全身を巨大な木の壁で覆うようにして球体へと姿を変える。


 その際、不敵に笑みを浮かべた。


 術者が訳もわからぬまま、二発目の炎を造り出そうとした瞬間、凄まじい爆発が起き、術者に襲い掛かる。


 咄嗟に炎の防壁を展開するも、間に合わず、全身に凄まじい衝撃を浴びる。


 地上に叩きつけられた術者は何が起きたのか理解出来なかった。

 只、理解出来たのは、強烈な痛みと周囲の木々が吹き飛び、平地となっている事実であった。


「カハッ……な、何が……意味わかんない」


 術者がそう口にした直後、シュゲンがゆっくりと歩み寄りながら語り掛ける。


「わからぬじゃろうなぁ、主が放った先には毒沼があってな、可燃性のガスを発しておった。そんな場所に炎の塊を撃ち込んだんじゃ」


 シュゲンはそう告げると、術者に対して、新たに造り出した長槍を向ける。


「最後に言い残す事があれば、聞いてやろう?」


 術者は現実を受け入れ、涙を浮かべた。


「お母さんに謝りたかった……ごめん……母さん」


 シュゲンは“ぐっ”と槍を握り直し、術者の心臓に突き立てる。


「名も知らなんだが、いつか、主の母と出会えたならば、確りと伝えよう……主が最後に口にした言葉を」


 シュゲンは悲しそうな表情を浮かべていた。

 フードを被り、顔を隠していた術者の体が心臓が停まると同時に幼い少女となり、あどけない顔と頬を伝う涙、全てが無情と言う他なかった。


「なんと無慈悲な……神を語る者に祝福なしとは……」


 シュゲンは術者であった少女を抱き抱えるとエルイの郷へと歩き出す。


 キャトルフ達がシュゲンの元に駆け付けた際に、全てが終わっていた事実に驚くと同時に抱えられていた少女の存在に胸を痛めた。


 過去の一件でキャトルフは理解していたからだ。


「聖職者協会が動き出したのか……」


 キャトルフの言葉にシュゲンは質問を投げ掛ける。


「聖職者協会? それはなんじゃ?」


 その日、術者の少女は悲しき強者として、エルイの地に埋葬された。

 

 シュゲンは聖職者協会と【ウォルベア】の存在を知り、怒りを露にすると同時にキャトルフ達に即座にフェルドルム大樹海より、立ち去るように命じたのだ。

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