聖戦×戦神×軍神……5
地下に降りていく。眩い光が広がる地下世界に補給部隊は目の前の光景に度肝を抜かれる。
巨大な樹木の根がドームのように広がり、地下コロニーを作り上げていた。
樹木の根が眩く光り、地下に太陽が存在しているような温もりが包み込んでいた。
地上から吹き込む風は地下の温度を一定に保ち、過ごしやすい環境を作り出していた。
エルイの郷は地上の大きな諍いなど、存在していないような、平和で穏やかな時間が流れていた。
子供質が地下に流れる水路に葉っぱで作った船を浮かべ、笑いながら追い掛けていく姿、出店で焼かれる獣の肉。
煉瓦造りの街は何処か懐かしい雰囲気を漂わせていた。
賑わいと活気に包まれたエルイの郷を不思議そうに歩いていく補給部隊。
余りに地上と違う生活の様子にペリグロッソは驚きを声にする。
「コイツは驚いた! なんと美しい……」
「ペリグロッソ、余り声を張り上げるなよ。アンタは見た目が只でさえ目立つんだからな」
「むぅ、わかっている!」
そんなペリグロッソの姿を建物の影から覗き込む子供達。
小さな声で少年達が声を掛けようかを迷っている姿が其処にあった。
脅かさぬようにペリグロッソは、声を掛ける。
「良かったら、話をせぬか? エルイの民について、話を聞かせて貰えたら嬉しいんだが?」
子供達は目を輝かせ、ペリグロッソに駆け寄っていく。
初めて見る獣人に興奮する子供達に囲まれると次々に子供達が増えていく。
「おいおい、こんなに、ガハハッ。本当によい場所だな」
荒々しく戦いに身を置く獣帝軍達は明るく無邪気で無垢な笑みを前に微笑みを浮かべた。
子供達は口々にエルイの歴史を語り出す。
エルイの民は“大樹エルイ”から生まれ、大樹に還る。
新たな生命として芽吹き実になりて、育ての親と共に歩む。
大樹エルイが朽ちる時、エルイの民は自我を失い、全てを喰らうだろう。
三日三晩の夜明けの先に新たな生命として土に還り、森を創るだろう。
平和と混沌の民であり、月と太陽が新たな風にのみ込まれぬよう、のみ込まぬよう、大地と大地に壁を作り、大樹を護る守り人となる。
子供達は口々に大樹エルイを“母”と呼び、フェルドルム大樹海を守る戦士となると語ったのだ。
多くの獣人達が話を聞きながら、不思議そうに顔を悩ませた。
そんな会話を聞きながら、案内された巨大な寺院に辿り着く。
案内人が子供達に語り掛ける。
「さあ、皆さんは今から、話し合いをせねば、なりません。良い子ですから、戻りなさい」
「はーい。虎のおじちゃん、またね」
“虎のおじちゃん”と言われ、ペリグロッソは少し照れくさそうに口を“への字”に曲げた。
子供達が完全に見えなくなると、寺院の門が開かれる。
案内人は寺院の中に補給部隊を案内する。
寺院内には、修行僧と思われる多くのエルイの民が掃除等を行っていた。
聞き慣れない言葉で語られるお経のような唄。
獣人達は独特な光景に驚きながらも、平常心を保ちながら、寺院の奥へと足を運んでいく。
案内された巨大な広間。
「少々、御待ちください。長に、皆様の案内が済んだ事を伝えて参ります」
キャトルフは静かにその場に座ると黒猫の団員達がそれに続く、ペリグロッソ達もそれを見て、静かに腰掛ける。
「あとは待つだけだ。只、感情的な発言をしないように、いいな? 此処は“帝国ガルシャナ”でも、“リアナ王国”でもないんだ」
キャトルフの言葉に若い獣人が声を荒げる。
「おい! 黒猫の長だか、なんだか知らないが、いい加減に上からの物言いをやめろ!」
「言いたいことは、其だけか? なら、口を閉じろ」
「テメェッ!」
若い獣人が動こうとした瞬間、キャトルフが止めようとするペリグロッソを目で“止めるな”と合図を送る。
「万の同胞が、水を飲めずに苦しむ道を望むなら、騒げ! 一時の感情的な行動が国を滅ぼせ事すら理解できないなら、今すぐに暴れろ。エルイは俺達を排除する為に動き出すだろう」
キャトルフの言葉に若い獣人は踏み止まる。
自身が補給部隊である事実を改めて感じ、震える拳を“ぐっ”と堪え、元の場所に戻る。
「俺達は平等だ。遠慮もしないし、甘やかしもしない。的確な意見ならば聞き入れる。今は俺の話を聞き、従ってくれ。同胞達が水を求め苦しむ姿は見たくないんだ」
争う事なく、長を待つ形になるが、獣人達にとっては、複雑な感情を感じずにはいられなかった。




