聖戦×戦神×軍神……3
目的地が明らかにされると獣帝軍は静かに移動を開始する。
リアナ王国が立ち入り禁止区域にしているフェルドルム大樹海への入り口は強固な扉で閉ざされており、何十年も使われていない事が見てとれる。
キャトルフはそんな強固な扉の前を素通りするとそのまま、大樹海の外の森に存在する無数の洞穴の前で止まる。
「……どれだったかな?」
目印を探すように洞穴の入り口を覗き込むキャトルフ。
獣帝軍からすれば、不思議な光景だっただろう、森の中間地点に無数の洞穴が姿を現し、その無数の洞穴を調べる黒猫の団長。
何を目印に探しているかを、尋ねられてもキャトルフは目印を教える事はなかった。
「悪いが、約束なんだ、皆にもう少し待ってくれとペリグロッソにも伝えてくれ」
ペリグロッソは伝言を聞くと直ぐに全体に休息命令が出す。
長く歩き続けた事もあり、休息は兵士達に僅かながらの安息を与えた。
一時間程の時間が過ぎた頃、キャトルフが戻り、即席の部隊で水の確保を行うと全員に伝えた。
逆を言えば、待機せねばならない者達が存在すると言う内容にざわめきが生まれる。
ペリグロッソとキャトルフは互いに話し合い人員を決める事となった。
「皆、聞いてくれ! 俺は黒猫の団、団長のアルベルム=キャトルフだ。今から水を補給する為に【フェルドルム大樹海】に向かう人員を発表する」
キャトルフはそう語ると、ペリグロッソは獣帝軍から力と体力に自信を持つ者を五十人選び名を呼ぶ。
同時にキャトルフも黒猫の団から獣人を中心に補給部隊の発表を行う。
獣帝軍は、ペリグロッソ本人が隊長となり指揮を行う。
副官には巨岩傭兵団のエレドリオ=ホーンが選ばれる。
屈強な獣人が五十二名とその後の交代要員が決められていく。
一度に移動する人数が少ない分を回数で確保しようと考えたペリグロッソは総勢二十組、千人の獣人を決める事で水の確保を確実に行おうと考えたのだ。
それに対して、黒猫の団は獣戦士特攻部隊からアルガノの信頼する者を中心に五十名を選ばせていた。
見た目からすれば、明らかな差が生まれた二つの補給部隊が出来上がる。
そんな黒猫の団側には商人であるメル=カートルの姿もあり、アルガノと並ぶとまるで子供の獣人姉妹の様であった。
アルガノの実力を知る獣人兵達も黒猫の団を見て軽く笑みを浮かべる。
「こりゃあ、オレたちが頑張らないとな! 男の意地を見せるぞ!」
「「「オオォォッ!」」」
集まった百数名の部隊が動き出す。
洞穴に到着するとキャトルフの案内で奥に進んでいく。
洞穴は巨大な洞窟であり、無数に続く通路の先に分岐点もまた、無数に続いていく。
大きな地底湖が姿を現すが、其処には毒水が溜まり、マスクがなければ十数分で呼吸が出来なくなり、肺が腐り始めるだろう。
そんな危険な場所を更に奥に進んで行くと、人工的に建造されたであろう階段が姿を現す。
質問を口にしようとする獣人達に対して、先に進むように指示を出すキャトルフ。
階段を上に進むに連れて、風が吹き抜けていく。
風を吸い込み、地上に毒が舞い上がらないようになっていた。
洞穴と思われていた洞窟の先に眩い光が見えると獣人達が駆け出そうとする。
「走るなッ!」
キャトルフの声に獣人達が慌てて足を止める。
獣人達の先を指差すキャトルフ。
慌てて外を目指していた獣人達は驚きながら、その事実を目の当たりする。
出口が微かに動いていたのだ。
「な、う、動いてやがる!」
「なんなんだ、あれは!」
獣人達の言葉にキャトルフが返答する。
「コイツは馬鹿デカイ、二つの首を持つ亀なんだよ」
「はぁ! か、亀?」
「そうだ、口が閉じたら数十年はそのままになる。感覚が鈍いから、歩いている分には大丈夫だが、走って刺激すれば、何が起こるか分からないんだ」
外に出るまで、只ならぬ緊張感に包まれる。そんな中、一人、また一人と大地に足を踏み締める。
しかし、フェルドルム大樹海の本当の恐ろしさを皆が知る事となるのだった。




