聖戦×戦神×軍神……1
誰もがその事実に耳を疑う光景が其処には広がっていた。
数日前まで、三分割されていた獣帝国軍が1つの集団として復活し、先はないとされた獣帝の勅命で動き出した事実は帝国民達にガルシャナの復活を伝える結果となった。
同時に危険視される存在となったのは、“黒猫”であった。
一日で数百の命を刈り取る戦いを二回行い、更に獣帝を復活させたと帝国民達は口々に噂する。
国境を通過する際、ペリグロッソはキャトルフにある事を口にした。
“国民は黒猫を誤解している、すまない”
キャトルフはその言葉を聞くと軽く微笑み、一言“かまわないさ”とだけ、口にした。
ペリグロッソはその言葉が皮肉等ではなく、本当に“かまわない”と口にしている事実に頭を下げた。
獣帝国側の国境を越え、新リアナ王国側の国境へと獣帝国軍が進んでいく。
リアナ王国の地に足を踏み入れたペリグロッソはキャトルフに依頼を口にした。
「キャトルフ、カヤンを頼む。本来ならば、こんな戦いに参戦させたくはなかった。父親として言うが、死なせるなよ!」
「当たり前だ。たく、カヤンの事になると、昔からそれだな?」
「当たり前だろ! カヤンは……俺の部下の娘だったんだ……しかし、生まれて直ぐの事だ。アルガノ家を野盗が襲った。目的は訪ねていた俺の命だった」
「…………」
「わかるか、俺がその日、呼ばれていなければ、行かなければ、アルガノ=カヤンは両親を失わなかった。眠るカヤンを野盗から隠し、母親は殺され、父親は俺と共に戦うも、一瞬の隙をつかれ、それが致命傷となり、死んだ……」
「なぜ、今話す……」
「今だからだ、アルベルム=キャトルフ、娘を頼む。お前を友として信じている」
ペリグロッソは話を終えると馬を先頭に向けて走らせた。
リアナ王国の大地は戦が始まる事を知らぬように穏やかな風が大地の草花を揺らめかせていた。
黒猫と獣帝軍は先ず、【シスイ】を越えて【コルト村】を目指し進軍していく。
リアナ王国の現状を知るとペリグロッソは改めて、黒猫の恐ろしさを目の当たりにした。
【シスイ】崩壊は黒猫と争った結果である事実を知りながらも、その目に入った悲惨な現実は想像を遥かに越えていたからだ。
そのまま、【コルト村】を目指し進軍する。
数日が過ぎ、【新リアナ王国】、【ウォルベア】、【新国家グレストロ】の三勢力は獣帝国の動きを知り、慌ただしく動き出す。
この時点で、一番の危険に晒されていたのは第四の関所の街を拠点としていた聖職者協会【ウォルベア】であった。
既に新リアナ王国とも敵対関係となっており、新国家グレストロと繋がり、新リアナ王国を滅亡させんと動き出していた最中だった。
「ふざけおって、何故、獣の国が進軍を開始したのだ! ガドラ=ラッセの馬鹿者め……しくじりおって」
聖職者協会の内部で怒りを露にする男。
男の名は、ケルジ=ハンゼ。
聖職者協会の幹部の一人であり、獣帝国ガルシャナのガドラ大臣と繋がり、獣帝国の動きを塞いでいた人物である。
「ケルジ司教……落ち着きなさい。我々には神が味方しているのです。神の裁きをその身に刻みたいと言うならば、歓迎すべきでしょう……どうですか?」
「……は、はい。その通りかと、取り乱してしまい申し訳ございません。教皇聖下の御前で……」
「構いません。焦るのは、我々を大切に思うからでしょう……しかし、多くの犠牲を払い、神の裁きを望む者がいるとは、実に罪深い……嘆かわしい事実ですね……皆さん」
聖職者協会は獣帝軍と黒猫に対して、敵であると認識し、迎え撃つ為の布陣を整えていく。




