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傭兵団×闇と光×増えすぎた歯車……5

 話し合いが始まると最初に質問の声があげられた。


 質問を投げ掛けたのは浪牙の団、副団長──ナサリ=ディムであった。


「皇帝陛下の御前で発言する事を御許しください」


「よい、発言を聞かせてくれるか? ナサリ=ディム副団長」


 その瞬間、ナサリは動揺を露にする。


 理由は一国の皇帝が傭兵団の副団長の名を知っていた事実とそんなディムの立場を気にせず、話を聞こうとした事実にあった。


「ハッ! 黒猫の団と違い、私はこの場に相応しくない存在だと感じております……帝国の未来を話し合う場に、私のような者がいても、お役にたつような知恵も意見も出すことは出来ません……」


 語り終わり、席に座ると下を向きながら、自身の無力さに歯を食い縛るナサリの姿が其所にあった。


「ふむ。今まさに、素晴らしい発言をしたではないか、ナサリ=ディムよ。相手の立場が大きければ、大きい程、言葉を発する事は困難になる……立派に口にしたではないか」


 獣帝はそう言うと更に会話を続けた。


「今から、我々はリアナ王国に向かう。進軍でなく、助ける為にだ。立場を理由に不快な言葉や態度を向けるやからもいるだろう……その際に其方(そなた)の確りとした意思と発言が必要になるだろう」


 席に座ったまま、涙を浮かべるナサリ。


 自身を小さな存在と考え、発言すら意味をなさないのではないかと考えていた自身の情けなさと獣帝の暖かい言葉に目から流れる滴は止めどなく流れ続ける。


 新たな道を進み事を選択した帝国は、現傭兵団を獣帝軍に迎え入れたいという考えを露にする。


 浪牙の団は其れを受け入れ、巨岩傭兵団も賛同した。

 空雷は直ぐには頷かなかったが、リアナ王国へと向かう今回のみと言う条件で同意する。


「黒猫よ、獣帝国ガルシャナの意思は決まった。其方達の意見も聞かせて欲しい」


 キャトルフの意見に注目が集まる。


「俺達は目的を同じとする。だが、獣帝国ガルシャナと組むのではなく。ズレた歯車を元に戻すだけだ。増えすぎた歯車は要らぬ動きをする。其れを正常に戻す」


 その発言にリア=バレルがテーブルを強く叩き、立ち上がる。


「ふざけるな! 皇帝を前に何様のつもりだッ! 黒猫! アンタ達が強いのは理解したよ……でもね、流石に好き勝手な発言が過ぎるんじゃないかい!」


 リアの言葉にアルガノが動こうとするがキャトルフが其れを止める。


「カヤン、動くな。俺が話す。皆も動くなよ?」


 リアに向けられた黒猫の視線は敵を刈る意思を宿した獣のそれと同様であり、その場に居た誰もが息を飲む。


「勘違いするな、俺達、黒猫は歯車となるべく生きているんだ。寧ろ、二国が正常に動き続ける為に存在していると言うべきだろうな……」


 まるで暗闇を思わせる輝きの失われた瞳。


 キャトルフの表情と瞳が物語る“歯車”と言う言葉が黒猫以外の全員の耳に刻まれる。


 一瞬の沈黙が過ぎ去り、獣帝は改めて、喋り始める。


「確かに、黒猫はどちらにも平等でなければならない。闇が光をのみ込まぬよう、光が闇を掻き消さぬように……」


 話し合いが終わり、結果を言うならば、黒猫は敵を駆逐するのみであり、二国を含むどの戦力にも肩入れしない事がきまる。


 それと同時に同盟を組む条件として、獣帝国ガルシャナに対して、前金でバルメルム大陸金貨500枚を約束させた。

 成功報酬として更に500枚を払うことを条件としたのだ。


 この条件が開始されるのは、リアナ王国側が条件を受け入れた時のみであり、リアナ王国が条件を飲まない場合は同盟は成立しない事も最初の条件に含まれている。


 あくまでも、二国の為に協力する事が第一条件となっており、リアナ王国が条件を拒否した場合、黒猫は独自に動く事を獣帝に告げた。


 獣帝であるジャルバノ=サラバンは、其れを承諾した。


 それと同時に黒猫の団に対してある条件を提示する。


 条件とは……黒猫の団による一方的な虐殺行為の禁止と、完全なる破壊行為の禁止であった。


 しかし、キャトルフは其れを拒否した。


「俺達は俺達のルールで生きる。帝国も王国も関係ない……それ以上もそれ以下もない」


「まて、話を聞いてくれ、キャトルフよ」


「黒猫に首輪はいらない……縛ろうとすれば引き裂き、全てを否定する。二国が無事に同盟を結べるように祈っている」


 獣帝の言葉すら聞かぬ、キャトルフの態度に危機感を感じる者もいたが、そんな横暴な態度の黒猫に対して意見する者はいなかった。


 こうして、二国の未来を左右する話し合いが終わったのだ。

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