傭兵団×闇と光×増えすぎた歯車……3
真っ赤に染まった廃墟の町、戦場と言うには余りに狭く、廃墟の町にのみ込まれた血と命は余りに多かった。
それと同時に、暴食の団、浪牙の団が物の数分で絶命した事実、シャノワの目にした絶望は計り知れない物であった。
全てが終わった戦場をゆっくりと副団長と共に歩くシャノワ。
「此れが、こんなものが……傭兵一人の戦い方かよ……馬鹿げてる……」
「シャノワ……いえ、団長……言葉に気をつけてください。少なくとも、黒猫の団は私達と同じガルシャナに雇われた傭兵団に攻撃されたのですから……」
口調を改める女副団長の言葉に力なく頷くシャノワ。
そんな最中、浪牙の団を裏切り、デグルムの部下になろうと考えた元団員の姿が目にはいる。
両足は切断され、脇腹からも激しい出血があり、助かる事はないだろう。
「ヒァ……ヒァ……助ゲテ……」
「お前は助からない……すまない」
元団員の首にナイフを突き立てた。
「もう、語るな……よく苦しんだな、眠れ……同胞よ……」
浪牙の団は事実上の壊滅となり、数十人にまで数を減らしていた。
しかし、更に浪牙の団を驚かせたのは、勝敗が決したにも関わらず、暴食、黒月、幻獣の三つの傭兵団の生き残りに対する報復的な行動に出たのだ。
息のある者に対して、刃を押込み、静かに柄を回す。
次々に絶命する傭兵団の団員達の姿にシャノワと女副団長は驚愕した。
「な、何をしてるんだッ! 敵であっても、動けぬ者達にそこまでする必要があるのかッ!」
「ちょっと、団長!」
そんな時、一人の黒猫の女団員が口を開く。
「馬鹿じゃないの? 奪われたら奪い返す……戦えない者に攻撃をされたら、相手が動けなくとも同じ事をその身に刻む」
「な、何を言って……」
その瞬間、シャノワはデグルムの言葉が頭を過る。
幻獣の団と黒月の団が向かった先は黒猫の団と非戦闘員が暮らすミストエルであった事実を思い出す。
「ミストエルで……兄妹が死んだ……なんの前触れもなく、運悪く……最初の犠牲者になった……薬草を集めに行くと朝は笑っていた、やっと笑うようになったんだ……」
黒猫の団員達の視線が集中する。
「先に仕掛けられたなら、容赦なんて必要ない……私達は立ちはだかる全てを否定する」
被害者は二名、シスイから逃れた兄妹であり、ゲルダの元で薬剤師を目指し、その日も薬草を採取に向かっていた最中の出来事であった。
襲撃を知らせる為に兄が囮となる。妹は急ぎ、襲撃を知らせる為の狼煙をあげる。
狼煙に気づき、幻獣の団と黒月の団の矛先が妹にも向けられる。
大空に広がる赤い煙に気づき、黒猫の団員達が駆け出す。
現場に駆けつけた時、全身から血を流し、息をしていない状態であった。
カルミナとシャナは怒りに身を震わせた。
「貴様等……何をしているんだ……」
「質問なんて無駄……コイツらに話なんか無駄よ!」
圧倒的な戦力差を前に、幻獣と黒月の団員達は勝利を確信していた。
しかし、二人の背後から増援となる黒猫の団員達が合流すると戦況は一瞬で変化する。
黒猫の団員達が仇を討たんと幻獣と黒月の団長を追う最中、合流したモディカ達、隊長クラスは二人の亡骸を安全な場所に移動するように口にした。
兄の名は、ナザナ=セルム。
妹の名は、ナザナ=アイリ。
カルミナとシャナはモディカの言葉に頷くと二人の亡骸を静かに抱えあげるとミストエルに向けて歩き出す。
「酷いよ、こんなの……二人は、セルムもアイリも頑張って勉強してたんだよ……なのに」
「シャナ……二人はよく頑張ったんだ。顔を見てみろ、役目を果たしたんだ……無駄死になんかじゃないんだ……二人はミストエルを護ったんだ……全力でな!」
二人の兄妹の死がきっかけとなり、四つの傭兵団が壊滅する事となる。
「モディカ隊長、生け捕りにするんじゃなかったんすか? これじゃ、素材にもならないっす……」
「ふん、生け捕りにする価値もなかったよ……あんなクズ」
モディカは敵を駆逐する理由を探していたのだとグルムは理解する。
「強がり過ぎっす……団長も同じ事をしたっすよ」
「ああ、わかっているよ……」
団員皆が、悲しみを胸に兄妹の死を嘆いたのだ。




