新たな風×三勢力×二国の意思……5
ペリグロッソに不敵な笑みを浮かべながら、二人の獣人が部下達を展開させる。
「悪いな、将軍……だが、ガルシャナの為に働いている事実は変わらないだろ?」
「ふん、良い子ちゃんぶるんじゃないよ。裏切る、裏切らないなんて、傭兵である私達には関係ないさ。金払いがいい方につくのが道理さ!」
二人の獣人の言葉にペリグロッソは拳を握り締める。
「お前達……それが答えなのだな……」
ペリグロッソの問に関して頷く二人の獣人。
一人は“巨岩傭兵団”の団長──エレドリオ=ホーン。
誰よりも大きな巨体と二本の角が生えたバイソンの獣人。
傭兵団である巨岩の団長であり、鍛え上げられた肉体と真っ赤な瞳は強者の威厳すら感じさせる。
背中には巨大なシールドを装備し、手には刃が装着された鋼鉄のナックルを装備している。
もう一人は“空雷傭兵団”の団長──リア=バレル。
鳥を思わせる鉤爪の足、美しい容姿、それに似つかわしくない鋭い目付きをした女の獣人。
手は羽と腕が合わさった様な形となっている。
腰には鞭と複数のナイフを装備しており、両手を自由に使う為であろうノースリーブの服を着ており、豊満な胸元を軽く晒すように服を乱して着こなしている。
「すまないな、将軍。俺達はあくまでも獣帝国ガルシャナの為に動かねばならない。軍部の要請よりも、獣帝陛下の勅命を優先せねばならない……すまない」
エレドリオ=ホーンが申し訳なさそうに謝罪を口にした。
その言葉に溜め息を吐きながら、リア=バレルが口を開く。
「黙んなよ! 金も受け取ったんだ……割りきらないと私達が後悔することになるんだよ! ペリグロッソ将軍……私達は帝国側からの要請に従う事になったんだ……」
ペリグロッソは軽く頷く。
「それは理解した。他の連中はどうした!」
“他の連中”……ペリグロッソは“巨岩”と“空雷”以外の傭兵団を指して質問をした。
質問に対して、エレドリオが口を開く。
「他の連中も俺達と同様だ。今……“浪牙”の元に向かっている。浪牙は城を離れていた、その為、話が通じるかわからぬが……」
残り三つの傭兵団が傭兵団“浪牙”の元に向けられた事実を知り、焦るペリグロッソ。
しかし、それを聞いたキャトルフは少し考えて見せると、風薙に叫び掛ける。
「なぁ! シャノワは大丈夫だろうか、他の浪牙の連中は【ミストエル】にも、攻撃すると思うか?」
「さぁな? でも、もし……【ミストエル】に攻撃を仕掛けると……死人が出るだろうな……まぁ、町の連中が怪我したら……ガルシャナに団員が乗り込んで来るだろうな?」
二人の会話を聞いたリアは苛立ちながら、声をあらげる。
「はっ? 頭、可笑しいの? 黒猫だっけ? 噂ばかりで、人間側の国でのみ働く、弱者のみに力をぶつける自己満足集団が、嘗めてんじゃないわよ!」
風薙はその言葉に対して鼻で笑って見せる。
「頭が可笑しいか……力量も戦力も未知数の相手を軽視する……頭の中まで鳥その物だな……滑稽だな」
「テメェッ!」
凄まじい勢いで風薙に掴み掛かろうとするリア。
その瞬間、風薙が双剣を握り振り上げる。
「バカがッ! フンッ!」
エレドリオが慌ててリアの襟を掴み、後ろに引く。
リアの顔面のスレスレを二本の刃が通り抜けていく。
誰の目にも明らかな斬撃、それは命すら刈り取ろうとする死神の刃であり、リアは恐怖を静かにその身に刻んだ。




