新たな風×三勢力×二国の意思……4
扉の先には複数の白服姿の医師と思われる数人の獣人が獣帝を囲むように立っており、その中心には、医師達とは違った風貌の若い女の獣人がピンク色の薬品を手に立っていた。
その異様な光景を前にすると、即座に獣帝に視線を向ける。
獣帝はゲルダの姿を目にすると、必死に言葉を発しようと口を微かに動かす、声は出ていないが表情が全てを物語っていた。
獣帝の老いた姿を前に拳を握るゲルダ。
「アンタ達ッ! それ以上、獣帝ジャルバノ=サラバンに近づくんじゃないよッ!」
「ちぃ! そのババアを止めろッ!」
叫ばれた声に白服達が包囲するようにゲルダに向かっていく。
「ゲルダ! 止まらず走れぃッ!」
背後から即座に叫ばれた嗄れた声に頷き走り出す。
白服達が手を伸ばし、制止しようとした瞬間、背後から一筋の豪剣が道を開くように振り下ろされる。
「ひぃ!」
剣を手に白服の前に立ちふさがる老人。
「貴様等が儂に勝てるとは思わぬが、本気なら相手になるぞ! 白服どもッ!」
白服の前に姿を現すグレイヴ。
「ジジイッ! 邪魔だぁ!」
若い白服が三名、緑色の薬品が入った瓶を手に駆け出していく。
その姿にリーダーであろう女の獣人が動揺し声をあげる。
「馬鹿者ッ! それを使うな!」
女の言葉を聞き、グレイヴは即座に駆け出す。変則的な強弱を加えた歩数は正面から向かってくる三名の白服達のタイミングを殺し、白服達は薬品を慌てて投げつける。
グレイヴは投げられた瓶を斬らず、瓶を確りと掴まえる。
腰袋に瓶を即座にしまうと、悩むことなく、白服に対して刃を滑らせた。
「ぎゃあぁ!」
「ぐわぁ……」
「ひゃあぁぁ」
三名の悲鳴を聞き、他の白服達が後退りをする。
リーダーの女獣人も薬品をしまい、その場から駆け出す。
ゲルダに対してナイフを手に声をあげる。
「其処をどけッ! ババア!」
奇声にも似た女獣人の声が室内に響く。
「ゲルダ! いかん!」
グレイヴの慌てた声がこだまする。
女獣人がナイフを振りかざした瞬間、“ドゴッ”と言う、鈍い音が室内に響き渡る。
「私を嘗めるんじゃないよ、小娘ッ!」
地面に後頭部から叩きつけられたであろう、女獣人の姿を前にグレイヴが乾いた笑みを浮かべる。
「笑ってないで、早く拘束しな!」
「あ、うむ」
ゲルダの言葉にグレイヴが慌てて、女獣人に駆け寄る。
その際に逃げ出そうとする白服達、獣帝の寝室から飛び出した白服達は、室外の状況に唖然とする。
獣帝の寝室を護るように数十人の兵士達を相手に息一つ切らさず、凪ぎ払う姿が其処にあった。
白服達は、身動きが出来ず、立ち尽くす。
そんな白服の存在に気づいたキャトルフが即座に白服の前に移動すると、無言のまま、腹部に拳を叩き込む。
「お前らは邪魔だ。寝てろ……」
キャトルフの行動にドレイク派のガドラ大臣が声をあげる。
「貴様ッ! もう、構わん! “巨岩”と“空雷”を出せ!」
巨岩と空雷と言う言葉にペリグロッソは驚きを露にする。
「まさか、くっ! そう来るか……ガドラ大臣!」
ガドラの声に反応するように姿を現す二つの集団。
ペリグロッソは、二つの集団のリーダーである獣人の顔を目の当たりにして、歯を食い縛った。




