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新たな風×三勢力×二国の意思……3

 アルガノの強烈な一撃に吹き飛ばされたキャトルフとペリグロッソは地面に寝そべりながら笑った。


「ふぅ、土埃(つちぼこり)を落としてから獣帝陛下の元に向かうか。しかし、(カヤン)に吹き飛ばされる日が来るなんてな……」


「だな、まさか、二人して吹き飛ばされるなんて、本当に笑っちまうな……あはは」


 二人はアルガノの行動と攻撃に対して笑っていた。


 それを目の当たりにした戦士達は、サンジュラム=ペリグロッソの義理の娘、アルガノ=カヤンの存在を再認識すると同時に歓喜に包まれると声をあげる。


「「「カヤン! カヤン!」」」


 しかし、その声にアルガノは凍りつく様な冷たい視線を向ける。


五月蝿(うるさ)いッ! 黙って……」


「「「カヤ……」」」


 戦士達が声を飲み込むとアルガノは微笑みながら一度頷くと、二人の元に駆け寄る。


「お義父さん、マスター、大丈夫?」


 心配そうに語り掛ける姿に二人は起き上がり、頷いてみせる。


「久々に良い汗を流したぞ。キャトルフ」


「俺は汗を流すのが嫌いなんだよ、次はゴメンだ」


 アルガノ=カヤンはペリグロッソの義理の娘である。サンジュラムと名乗らない理由は、それが名乗ってはならない名だからだ。


 “サンジュラム”とは、獣帝を護る最後の狂戦士を意味しており、獣帝に選ばれた存在が自身の名を獣帝に捧げる事で名乗りを許される最高の戦士の証であった。


 訓練場を跡にしたキャトルフ達は着替えを済ませ、軽い朝食を食堂で口にする。


 ゲルダとグレイヴは早朝の出来事をしり、頭を悩ますも、アルガノとキャトルフ、ペリグロッソの満足そうな表情に微笑みを浮かべた。


 獣帝への謁見の時間が近づくと、物々しい雰囲気が城内を包み込む。


 通路の左右にガーレン派とドレイク派の兵士が整列し、獣帝の寝室の前にはガーレンとドレイク、更に大臣達が待ち構えていた。


 三勢力が顔を見合わせる最中、ドレイク派である大臣達が道を塞ぐように壁を作る。


「ペリグロッソ将軍。獣帝陛下は只今、医師達の診療をうけている。時間を改めて頂きたいのだ」


 ドレイク派、大臣──ガドラ=ラッセが一歩前に出るとそう語った。


「我々が陛下に謁見する事は昨日(さくじつ)のうちに伝えてあった筈、其処を通して頂く、ガドラ大臣!」


 両者が向かい会う最中、ガーレン派の帝国特務隊の隊長が会話に割って入る。


「ペリグロッソ殿、ガドラ大臣の言葉を聞き入れて下さい。陛下の御体を一番に考える事こそが我々の使命ですから」


 ガーレン派、特務隊、隊長──セルバ=アーデン。


 ガーレンを次期、獣帝にする為に組織された特務隊である。

 最初は単なる親衛隊であったが、次第に勢力を増していき、軍部と並ぶ巨大な組織となっていった。

 軍部内部にも入り込んでいた事実が明らかになったのも、今回のガーレン派が新たな組織として実態を特務隊とし、姿を現したからであった。


 三勢力の代表と組織が一同に互いを睨み、牽制する最中、キャトルフは堂々と前に出る。


「約束を(たが)えるのが、帝国のやり方と言うなら、俺達も、貴様等の言葉を聞く必要はないな。取り敢えず……約束を通させて貰う!」


 黒猫が一斉に表情を変えると凄まじい威圧感と悪寒がその場にいた全員を包み込む。


「そ、そんな、少人数で正気か!」


 ガドラが慌てて声をあげる。


 しかし、震えた声が全てを物語るように、黒猫の存在感は全てを丸飲みにしながら、前へと進んでいく。


 ガドラの前に立ったキャトルフは息を吐くように静かに囁く。


「いいから……どけよ」


 その言葉を聞き、ドレイク派が剣を抜こうと手を掛ける。


 慌てるガーレン派のセルバが声をあげる。


「馬鹿がッ! 剣を抜くな!」


 しかし、既に数人の兵士が剣を抜いており、その剣先はキャトルフの瞳に写り混む。


 その瞬間、黒猫が動き出す。アルガノの得物が壁ギリギリの巨大な斬馬刀に変化し、振り払われる。

 兵士の体ギリギリで全ての剣を砕き、風薙がその一瞬でガドラの背後に回り込み、刃を首筋にあてる。


「はい、チェックメイト……どうする? 団長?」


 全てが一瞬で終わり、ガドラは言葉を失う。


「そのまま離してやれ、ゲルダ婆を早く獣帝の元に案内するんだ」


 誰もが黒猫の行く手を止める事は出来なかった。


 そして、獣帝の寝室の扉が静かに開かれる。

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