新たな風×三勢力×二国の意思……2
話し合いの姿勢を見せるペリグロッソは、黒猫の考えを確りと認識する事を目的として、内容次第で獣帝である獣帝“ジャルバノ=サラバン”への謁見を約束した。
リアナ王国の内情を説明し、現状で三つの勢力が存在する事実を語るキャトルフ。
新リアナ王国、新国家【グレストロ】、【ウォルベア】の聖職者協会の存在をペリグロッソに語った。
勢力に関して、二勢力の力が拮抗している事実と、一つの勢力が未知数の力を秘めている事実を理解したペリグロッソは事態を更に重く受け止める。
「つまりは、その聖職者協会が新たな実権を握る恐れがあるわけか……黒猫はどう動くつもりなんだ、キャトルフ?」
「俺達は本来なら、国と国の争いに加入うする事を禁じてきた……しかし、今回のリアナ王国が二分、三分された現状を前に未加入うで終わるとは考えていない……」
暫しの沈黙が二人の間に流れる。
両者は理解していた。リアナ王国同様に此のまま泥沼化すれば、獣帝国ガルシャナも内戦に発展するだろう事実を……
内戦になれば、現状の獣帝国軍部を束ねるペリグロッソの軍配が上がるだろう、しかし、その場合は帝国の法により、反逆罪が敗者側に適応され、首謀者と主要人物は死罪となる。
遠い昔、クーデターを企てた王族は、勝利を納めた獣帝が弟とその妻、子に至るまで斬首刑にしている。
その際、その行為を正当化する為、反逆罪が適応された際には、身分に関わらず、斬首刑にする事が永久法と言う皇帝すら変更を赦されぬ法により定められている。
獣帝国ガルシャナで、内戦は単なるクーデターではなく、勢力の完全なる排除を意味していた。
その事実は、キャトルフも理解しており、話し合いで解決しない限り、ガーレン派とドレイク派に未来はない。
しかし、それは現状の獣帝国ガルシャナから、未来が消え去る事を意味していた。
「話し合い……などを考えるのは、無駄なのかもしれんな……幼き皇子達に剣の指導をしたあの頃が懐かしい……」
「なぁ、ペリグロッソ。話し合いに持ち込む方法は本当にないのか?」
キャトルフの問いにペリグロッソは悩みながらも口を開く。
「今の状況を招いたのは、獣帝陛下が声を出せなくなった事が一番の原因だろう……後継者を前獣帝が選ばねばならないが、それが叶わなかったんだ」
過去の光景がペリグロッソの脳内に映し出され、悲しくも現実と過去が天秤に掛けられたように動き出す。
明るく輝いていた帝国に生まれ落ちた影は全てをゆっくりと染めていった。
次第に浸食する闇は影から暗闇へと変わり、帝国の全てはのみ込まれていった。
「早い話が獣帝が喋れれば問題ない訳だな……」
「まあ、そうだが……獣帝陛下は既に二年もの間、言葉を発していない……他国に悟られぬように隠してきたが、文字すら書けぬ程に弱ってしまっている……」
二人の会話を聞き、ゲルダが首を傾げながら、顎に手を当てる。
「毒や、中毒の可能性を疑ったかい?」
「うむ、確かめたが……それらしい反応は見られなかった。帝国中の医師達が束になっても、原因はわからずだったがな……」
ゲルダはペリグロッソに頼み、医師達の診断記録に目を通す。知識は確りとしており、診断結果に不備は見られなかった。
「問題なしだねぇ? 仕方ない、直接診断するしかないねぇ……可能かい?」
「大丈夫だ。しかし、今すぐにと言うのは難しいが……明日の朝なら何とかなるぞ」
「なら、それで構わないよ。朝なら私も気楽だからねぇ」
その日、黒猫はペリグロッソの用意した客間と言う名の兵舎に滞在する事になった。




