新たな風×三勢力×二国の意思……1
命の重さすら貫こうと射ち放たれる無数の矢。
風薙が矢を打ち落とすも無情なまでに射ち続けられる矢の雨。
「なぁ! 団長、此のままだと単なる的じゃないかよ! 流石に辛いんだけどよぅ!」
「わかってる! だが……」
キャトルフとアルガノが兵士を蹴散らしながらも、手加減をしている為に敵の数は次第に増える一方であった。
「ナニをしとるか! 敵であれば、駆逐せよッ! 命ある者は身な平等なりッ!」
弓矢を放っていた城壁の上から叫ばれた勇ましい声、兵士達が一瞬で凍り付いたように城壁を見上げる。
「ウオリァァッ! 全兵、突撃ッ! 我らが友、黒猫を一人として失わせてはならんぞッ!」
勢いよく、兵士に対して屈強な戦士達が襲い掛かる。
頭上を手にしていた兵士達が一斉に駆逐され、勇ましい声の主が雄叫びをあげる。
「ウオォォッ!」
声に反応するように戦士も雄叫びをあげる。
黒猫に協力した男は【獣帝国ガルシャナ】総大将──サンジャラム=ペリグロッソであり、その部下達の力は戦局を大きく変化させた。
城壁の兵士が拘束され、地上の歩兵達も頭上からの支援を失いキャトルフ達により、拘束される。
騒ぎを聞きつけたレーガン派とドレイク派の兵達が城壁と城門に慌てて姿を現す。
捕縛された兵士達を目にしたレーガン派の隊長各の男が剣を抜く。
「我等の同胞が犯した罪は我等で償う……」
「はっ! ソイツ等を押さえよ! 殺らせてはいかん!」
ペリグロッソの声に反応し、戦士達が駆け出す。しかし、全ての刃が無情にも振り下ろされ、地面に刃が触れる音が響き渡る。
その刃は兄妹にも迫っていく。
「あ、兄貴……ウワァァ……ッ!」
「頼むッ! 妹だけは助けてくれ!」
「全ては無にかえる……ウリャアッ!」
兄妹に刃が振り下ろされた瞬間、刃が中央から砕け散る。
「なっ!」
「やらせねぇよッ! バカ野郎!」
風薙の双剣が相手の刃を防ぐと同時に双剣を振動させ、刃を打ち砕く。
慌てて、兄妹に襲い掛かる兵士達、しかし、キャトルフとアルガノ、ペリグロッソと部下達が既にそれを赦す訳がなかった。
レーガン派の隊長各がペリグロッソの部下達に拘束され、騒ぎが終息すると同時にドレイク派の人員は姿を消し、レーガン派も蜥蜴の尻尾切りのように隊長各達を見捨てたのだ。
腑に落ちない結果でありながら、レーガン派の隊長達の処分は法の元に委ねられる事となる。
キャトルフ達はペリグロッソの客人として、城内に招かれる事となる。
ゲルダとグレイヴを目にしたペリグロッソは心から喜びを露にすると、キャトルフの姿を確りと見つめ、口を開く。
「良く来たな、【リアナ王国】の状況は理解している。だが、今の【獣帝国ガルシャナ】も、余り言い状況とは言えぬのだ」
ペリグロッソの自室に通された黒猫の団は目的を伝え、進みべき方向についてを語る。
この日、獣帝国ガルシャナに新たな風が吹き込む事となった。




