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過去の悪夢×リアナ王国×囚われし者……1

 久しく見ていなかった悪夢に全身から汗が吹き出し、服をぐっしょりと濡らしていた。


「またか……」


 黒猫の団──拠点


 団長室のベッド、憂鬱な気持ちと浅い眠りから、最悪な寝覚めを迎えたキャトルフの姿があった。


 ボサボサの髪を更に掻き回し、不快感を吐き出すように深く息を吐き出す。


 “タッタッタ……”と、廊下を凄まじい勢いで足音が掛けていく。


 【団長室】と書かれたネームの付いた扉の前で足音が止まると数回“コン、コン”とノックがされる。


 ノックと同時に欠伸(あくび)を浮かべた口を閉じ、扉の向こうがに返答するキャトルフ。


「入って構わない……が、客人なら、待ってもらってくれ、着替えがまだなんだ」


 返答を口にした直後、凄まじい勢いで乱暴に扉が室内に舞い上がる。


 “ズザン……” 無惨に吹き飛ばされた団長室の扉、入り口に立っていたのは見た目幼い獣人の少女だ。


 黒猫の団 獣戦士特攻隊、隊長──アルガノ=カヤンであった。


「マスター、着替えなら……ボクが手伝う、ついでに、何でも……するよ?」


 恥ずかしがる様子は微塵もなく、目を輝かせ、ゆっくりとキャトルフに向かって歩みを進めていくアルガノ。


 歩みを一歩進めるごとに、衣服のボタンを一つ、また一つと外していく。


「おい、カヤン……ボタンを外しながら近付いてくるのは何故だ?」


「は! ごめん、マスター……やっぱり、最初から服なんか着ないで、ローブだけを纏って来た方がよかったかな?」


 (うる)んだ瞳を向けながら、頬を紅く染めるアルガノ。


 脱ぎかけた衣服が全てはだける寸前のアルガノ、溜め息を軽く吐きながら、歩き出すキャトルフ。


 互いの視線が重なった瞬間、キャトルフは無言でカヤンの肩に手を伸ばす。


「マ、マスター……ボクは……」


「いいから……服を確りと直せ、今すぐだ!」


「えぇぇ──はぅ……マスターのいけず……だよ」


 落ち込む獣人の少女に対して、後ろを指差す、後ろを振り向いた瞬間、夢見る少女の表情が殺気に満ちた獣戦士アルガノ=カヤンの表情へと変貌する。


 吹き飛ばされた扉、廊下から、室内の様子を覗いていた団員達の姿があった。


「あ、いや……扉が壊されてたから……あはは……あの……」


 必死に訳を説明する団員達に対して、優しく微笑みを浮かべるアルガノ。


「其処から動くな……見たものも、その口も黙らせて、記憶ごと、消す……」


 青ざめる団員達が走り出した瞬間、狩りを楽しむ獣の如き勢いでアルガノが団長室を飛び出していく。


「逃げるなぁぁッ!」


「「「無理ですッ! うわぁぁ!」」」


 団員達の叫び声がこだまする。


 着替えを再開するキャトルフ。


「団長、朝から人気者だねぇ? また、あの夢みたんだろ?」


 団長室を覗き込む風薙の姿にキャトルフは、再度、溜め息を吐く。


「うちの団は、団長室を覗くのが趣味な連中しかいないのか?」


「あはは、オレだって、団長の掛け替えなんて、見たい訳じゃないけどねぇ?」


 風薙はキャトルフが着替え終わると同時に会話を再開する。


「あの時、間違いなく……団長の元御仲間がいたよな? それが原因な感じ?」


 あの時とは、貴族からの奇襲を意味しており、逃亡した傭兵団の一味に、解散となった特別輸送護衛騎士団の元団員の姿があったのだ。


「嫌な予感がする……傭兵団の数もそうだが、今のリアナ王国の軍部が警備隊の縮小を行った事の方が気になる……」


 現在のリアナ王国は、国王が病に倒れ、大臣と軍部により統率されている。


 リアナ王国、現女王は幼くして国王である父と王妃であった母を失い、それから直ぐ、大臣と軍部により、囚われの身となっていた。


 今となっては、本当に生きているのかが、民衆の間で囁かれている存在へと変わっている。


「で、要件はなんだ?」


 質問に対して、風薙は一枚の手紙を差し出す。


「朝方、使い魔が届けにきたんだ、ただ、今回の依頼は厄介そうだぜ。団長」

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