帝都×浪牙×交渉……5
不安に包まれながらも、活気に包まれた獣帝国の帝都ジャルメル。
市場には多くの果実や木の実、魚や肉が並んでおり、人々は不安を振り払うように声を出して、商売をしている。
黒猫の団は普段の食料調達を後方支援大隊と調理部隊の2つに任せていた。
その為、キャトルフ達からしても、直に見る市場の光景は新鮮であった。
はしゃぎ出すアルガノ。
「わはぁ、マスター、見て綺麗!」
「嗚呼、確かに綺麗だな」
アルガノが見ていたのは、装飾品のついた髪飾りであった。
「欲しいのか?」
アルガノはそう尋ねるキャトルフの顔を見て、少し頬を赤くするも首を横に振る。
店主の老婆が優しそうに二人の会話を聞いて微笑んで見せる。
すると老婆は独り言を言うように髪飾りの装飾について分かりやすく説明をしていく。
「此方は気持ちを素直に伝えられる、此方は気持ちを明るくしてくれる……」
全ての飾りに別の意味があると知り、アルガノに加えシシリアも興味を示し、暫しの道草となる。
説明が終わるとキャトルフは徐に質問を口にする。
「どれが一番綺麗だと思う?」
アルガノとシシリアが別々の品を指差す。
「そうか、すまないが、此れをあと、あっちのやつも、他にそっちもまとめて売ってくれ」
「はいよ。ありがとうね」
老婆から商品を受け取るとアルガノとシシリアが選んだ髪飾りを二人に手渡すキャトルフ。
「マ、マスター……いいの!」
「団長、私まで、よろしいのですか?」
喜びと驚きを露にする二人にキャトルフは優しく微笑む。
そんな時、老婆が驚いたように口をポカンと開いて、キャトルフへ質問をする。
「なんだい、アンタ? この子の主人だったのかい?」
その言葉にアルガノが嬉しそうに反応する。
「そうだよ。マスターはボクの主人、つまり、旦那様なんだよ。久しぶりにわかって貰えて嬉しい」
普段、無口で口数の少ないアルガノが気持ちをハッキリと言葉にする。
キャトルフは髪飾りの説明を思い出す。
アルガノの選んだ髪飾りは素直に気持ちを伝えると言う物であった。
「本当に効くんだな?」
「そうさねぇ、信じれば全ては効果ある物となる。信じる純粋さは効力を何倍にもひきだすんだょ」
老婆はニッコリと笑みを浮かべた。
「お嬢ちゃん、アンタの旦那様は優しい人間だ。幸せにおなりよ」
「うむ。ありがとうお婆さん」
そんな中、シシリアは渡された髪飾りをポケットへとしまう。
「なんだ、着けないのか?」
「だ、団長……その、今は先に急ぎましょう! 私達のせいで、大分遅れてしまいましたし」
キャトルフはシシリアの言葉に頷くと直ぐに獣帝の待つ城へと向かって動き出す。
城に近づくにつれて、活気とは違った緊張感のあるピリピリとした空気が漂い始める。
城の門までの道のりは呆気ないほどスムーズであり、キャトルフ一行は、その異様さに言葉を失う程であった。
本来なら帝都から城までは検問や、関の1つがあってもいいものだが、そう言った様子がなかったからだ。
城門まで辿り着くとキャトルフ一行を見下ろす兵士の姿があり、更に歩兵が姿を現す。
「止まれ! キサマ等は何者だ!」
武器を手にキャトルフ一行を取り囲む兵士達、頭上からは弓矢が狙いを定める。




