獣帝国ガルシャナ×国王テイル×王の決断……4
両者の激しい一撃がぶつかり合い、辺り一面が吹き飛ぶ。
ダルタは獣人一人と対等に戦う事が精一杯である現実に悔しさと情けなさを感じていた。
「なんで、なんで! 化物の一匹にこんなに手間どうのよ! 友達だった……優しかった……そんなエレステも、セセルも居なくなったのに、なんでアンタ達がいきてるのよ!」
「ふざけんな、俺達だってな、大切な同胞を多く失ったんだよ、大切な同胞を失い悲しむなら、何故、戦場に赴いた!」
「黙れェェッ!」
数秒の会話、その直後、巨大な渦が天高く舞い上がる。
竜巻を思わせるそれは、次第に大きくなり、森の木々をのみ込む。
のみ込まれた木々が回転により、高速で四方八方に撃ちは出されていく、全ての木々が風を纏い、一本一本が攻城兵器のような威力で発射される。
ペリグロッソは死を覚悟すると、渦の中に居るダルタの位置を確認する。
地面が窪む程に下半身に力を込めると、迷う事なく駆け出していく。
「死ぬ気? あはは! どちらにしても、アンタは殺す!」
「チッ、死ぬ覚悟はある! だが、一人で逝く気はねぇ!」
巨大な渦に斬り掛かると触れた瞬間、凄まじい爆発が起こる。
僅かな隙間は渦の中をハッキリと露にする。中心部分で渦を操るダルタの姿を目にしたペリグロッソは大刀に嵌め込まれた魔石を無理矢理引き剥がすと其れをダルタ目掛けて力一杯に投げ放った。
その途端、渦がペリグロッソを巻き込み、凄まじい早さで放り出されと、勢いよく大地に叩きつける。
全身が痛みと鉛のような重さに襲われるペリグロッソは、微かに笑みを浮かべた。
「はは、まだ……生きてやがる……」
放り出される瞬間、凄まじい爆発が渦の内部で起きていた。
巨大な渦は次第に勢いを失い、旋風のような威力にまで落ちる。
渦の中心に居たダルタが姿を現した際には、額からは出血し、既に片手足が無く、風によって、傷口を塞ぎ、更に風に支えられて何とか体勢を確保している状態であった。
「うぅ、痛い……死ぬほど痛いよ……」
ダルタの第一声は痛みと恐怖に対する一言であり、その瞬間、魔力が尽きたのか、体を支えていた風が“スッ”と消える。
「うわぁァァァ!」
ペリグロッソは動けない体を無理矢理に動かすと、痛みで苦しむダルタの側に向かう、地面に落ちた自身の魔石を手に取ると杖のようにしていた大刀に嵌め込む。
「じっとしてろ……此れを噛んどけ」
ダルタの口に木の棒を噛ますとペリグロッソは熱を帯びた大刀で傷口を焼いた。
「ゔんん──んんッッ!」
自身の手足が焼かれる感覚にダルタの意識は途切れた。
ダルタが意識を取り戻した際、既に戦闘は終了しており、最後まで抵抗していた聖職者協会とリアナ王国軍の鎮圧が終わりを迎えていた。
捕虜となる覚悟を決めていたダルタは見舞いと称して姿を現したペリグロッソから、状況を説明される。
【獣帝国ガルシャナ】はリアナ王国への進行を考えるが、獣帝──“ジャルバノ=サラバン”は其れを行わなかった。
新国王である、リアナ王国、三十九代国王──ダンベルム=リアナ=テイルに対して条件を提示した。
◆正式に平和協定を結びなおし、今回のような悲しみを二度と起こらないようにする事。
◆森を元に戻す事。
◆リアナ王国は二度と他国を侵略しない事。
テイルは其れを受け入れると、リアナ王国に帰還し、正式に新国王なった。
ダルタは自身の手足を見て唖然とした。
足は再生しており、片手も肩まで失われた筈だったが手首まで再生していたのだ。
「此って……!」
「感謝しろよ。新リアナ王国の国王は有能な回復師を部下にしていた。本当に奇跡を目の当たりにした気分だったぜ」
【リアナ王国】と【獣帝国ガルシャナ】の戦争はリアナ王国軍の敗退と言う形で決着を迎えたのだ。




