獣帝国ガルシャナ×国王テイル×王の決断……1
三名の巫女。
水神【コリエンテ】の巫女──エレステ=ティエル。
風神【ウラカーン】の巫女──ダルタ=ミナル。
火神【イリョス】の巫女──カルバチノ=セセル。
リアナ王国の聖騎士団の中でも巫女の立場は特殊であった。
普段は神の声を聞く為に祈りを捧げ、御告があれば、其れを聖職者協会の司祭に告げる役割を担っていた。
しかし、リアナ王国からの出陣要請があれば、神の力を借り戦場に出向く事が巫女の役割りでもあった。
今回の戦場に出向いた巫女一人に対して、聖騎士団の精鋭、千人が部下となり、三つの聖騎士団が【獣帝国ガルシャナ】に派遣された。
水の巫女、エレステ指揮の軍団は国境付近にある川を見つけると不敵に笑みを浮かべた。
「私が全てを終わらせる……まどろっこしいのは、嫌い……」
川その物が、巨大な大蛇や、龍を思わせるような姿になると、天高く、その姿を現す。
エレステの部下達は、驚く事なく堂々と整列する。
「さぁ、他の皆さんも巻き込んで、綺麗な平地を作りましょう……」
巨大な大蛇と龍のような、二つの頭を生やした水龍がその巨大な口を開くと、空気を体内に集め、巨大な水弾を【獣帝国ガルシャナ】に向かって高速で撃ち放つ。
水弾が大地に着弾すると空気を震わせる程の震動が【獣帝国ガルシャナ】を襲う。
他の巫女達も驚きながらも、水神の巫女の攻撃に触発されるように二人の巫女も力を解き放つように動き出す。
太陽の神を主とする巫女、カルバチノ=セセルは森を焼き払い始め、暴風の神を主とする巫女、ダルタ=ミナルは炎を煽るように風を操り、炎の速度を早めさせる。
リアナ王国優勢の状況に合流した三人の巫女を前に獣人達は、絶望を感じながらも命乞いをする。
「死にたくない……頼む……子供もいるんだ、助けてくれ……頼む……」
村人達は、家族を守らんと必死に頭を下げる。
しかし、巫女の一人である太陽の神【イリョス】を主とするカルバチノ=セセルは優しく微笑んで見せる。
「安心して下さい。私達は、救いを求める者を見捨てません。さあ、笑って下さい」
短い赤髪の少女は美しい青い瞳で獣人達に微笑む姿に村人達は笑ってみせる。
「先ずは、十名程、汚れなき魂を私の前に、我が主【イリョス】の抱擁を受けていただきます。それが済みましたら、皆様を安全な私達の国、リアナ王国に御案内しますので」
その言葉に獣人達は驚愕した。
リアナ王国に案内すると言う言葉に一人の獣人が後退りをするような仕草をみせる。
その瞬間、カルバチノ=セセルは、後退りをした獣人を指差し、軽く指を回す。
「救いを受け入れないなんて……本当に……無知な獣は可愛げがない……嫌になるわ」
空気が歪み、獣人が一瞬で炎に包まれ高熱により、血液と体液が蒸発し灰すら残らずに消え去っていく。
その光景に獣人達は改めて理解する。救う気などリアナ王国にはないのだと。
「はぁ、もういいです。他の方も助けを求めながら、助かる気が無いみたいですし、死んで貰ってください」
カルバチノ=セセルの言葉に聖騎士達が獣人を囲み、剣を抜く。
恐怖と絶望に支配された獣人達の姿がそこにあった。




