水の都ウォルベア×聖職者協会×真の闇……3
獣人を嫌い、差別的な視線を向けられた村、他の村や町も同様であり、キャトルフ達は町の外から迂回する様に黒猫の町である【ミストエル】を目指し進んでいく。
「ねぇ、なんで町に寄らないのさ? 少し、休もうよ!」
当たり前の様にキャトルフにそう語り掛ける少女。
少女の名はヤハナ=シャナ。
キャトルフ達を廃墟で襲った影の魔石使いである。
【ウォルベア】で解放しようとした際に、シャナからキャトルフに黒猫への入団を懇願され今にいたる。
シャナは元々、殺しや誘拐を専門に動く傭兵だった事実と今回の依頼主が誰かをキャトルフに教える事で黒猫の団への入団する事となったのだ。
一度は殺し合いをした相手を入団させるのは危険だという意見もあったが、それ以上にシャナの実力と並外れた魔力を放置する事は危険であるという考えが優先された結果、キャトルフはシャナを受け入れたのだ。
「シャナ、遊びじゃないんだ。いいか?」
頭を軽く掻きながら、むくれたシャナへと注意を口にするキャトルフ。
「マスター……シャナは子供、ワガママだから仕方ない」
「な! アンタも子供でしょ!」
「は? ボクは、成人してる立派な大人の女性だし、お子ちゃまのシャナとは違う」
他者から見れば、姉妹にしか見えない幼い二人に溜め息を吐くキャトルフ。
風薙達が“クスクス”と笑う最中、突如として、村の中から女性の叫び声が上がる。
「やめてぇ! 返してください、それがないと、この先、生きていけないわ!」
女性の前には王国軍であろう身形の男達が数人立っており、荷馬車に大きな袋を積んでいる最中であった。
「ウルセェッ! お前達の為に俺達、リアナ王国軍が反乱軍と戦ってやってるんだよ! それとも、食料と一緒に命も捧げてくれるのか? アァッ!」
村の食料を次ぐ次に荷馬車へと積んでいく男達。
そんな中、男達は食料だけに飽き足らず、女や子供、働き手となる青年や成人男性までも、押収品として拐おうとしていた。
我慢が限界に達してキャトルフの背後から、真っ黒い無数の槍と光輝く閃光が一瞬で撃ち放たれる。
男達の荷馬車に命中すると車輪が吹き飛び、傾いた荷馬車に繋がれた馬が驚いき暴れだす。
「うわッ! 誰だ!」
一直線に視線が集まるとキャトルフの前にシャナとカルミナが堂々と名乗りをあげる。
「私は傭兵団、元【影】のメンバーの一人、“影壁のシャナ”」
「“鬼神のカルミナ”だ」
両者の通り名は“死神”の異名を持つ黒猫の団と同様に世間に知られていた。
鬼神の異名を持つ、カルミナは一人で百の傭兵を葬り、一国を揺るがすとまで噂され、表向きは処刑されたとされていた。
第五の関所、【シスイ】で最高裁判官──グラウド=アバリシアはその戦闘力を自身の者とする為、リアナ王国に対して、処刑停止を申し入れ、永久投獄首としたのだ。
本来ならば、有り得ない事であったが、リアナ王国が、カルミナを生け捕りにしている事実は近隣諸国への牽制となると強く発言した結果であった。
影壁のシャナ──裏で暗躍した外道の傭兵団【影】のメンバーであり、相手を寄せ付けぬ鉄壁の守りと無限に現れる影を攻撃に利用し、追われれば守り、狩る側になれば、確実に相手を影に葬る存在として、語られる存在。
傭兵団【影】は団長であった存在が任務中にNo.2であった副団長に殺される。それが引き金となり、内部抗争が勃発し、団員同士が殺し合い、闇に消えたと巷では囁かれている。
カルミナとシャナの名を聞き、リアナ王国軍の男達が笑い出す。
「あはは、最初は飛び道具に驚いたが、流石にもう少し上手い嘘をつくんだったな!」
当然ながら、男達は目の前にいる二人が本物である筈ないと考えていたのだ。
男達の反応に呆れながらも、キャトルフに視線を向ける二人。
「ハァ、絶対に殺すなよ……いいな……」
「わかっている」
「了解、了解!」
カルミナとシャナの返答に黒猫の団員達は見物を決め込む。
しかし、男達は武器を手にすると、黒猫の団を包囲する様に円を作り出す。
キャトルフと団員達は仕方ないと、武器を構える。
「絶対に殺すな、死者を出せば、厄介な事になる。いいな!」
黒猫とリアナ王国軍がぶつかる。結果は火を見るより明らかであった。
数十秒後には、リアナ王国軍の男達は地面に倒れ込み、誰の目にも勝敗は明らかであった。




