廃墟×影の主×水神の巫女……6
カルミナの記憶が戻り、参戦した事により、戦況は大きく変わる。それと同時に弱り始めた影の勢いはキャトルフ達の士気を高める事となった。
通路の突破を成功させたキャトルフ達は、影が現れた方向へと駆け出す。
それに気づき、影の出現が止まるもキャトルフは敵術者が潜伏しているであろう、ある程度の位置を予測していた。
悲しくも過去の記憶が役にたった瞬間であった。
影を追いながら向かった先にある居室の一つから、深々とフードを被った術者らしき存在が慌てて室内から出てくる姿を目の当たりにするキャトルフ。
ニヤリと不敵な笑みを浮べ、術者に歩み寄る。
術者は抵抗しようと、影を出すも、魔力の残量が僅かであり、影に勢いはなく、キャトルフは出現する度にあっさりと影を葬っていく。
「くそ、くそ、くそ、来るな! 来るなよ! 来るなぁッ!」
次第に近寄るキャトルフに向かって怯えたように後退りする術者。
「さて、全部話して貰おうか?」
既に影を作り出す事すら出来ない事実が分かり、キャトルフはフードに“ガシっ”と掴み掛かる。
「離せよ! 離せって言ってんだよ! クソォ!」
術者が逃げようと暴れ、フードとローブを脱ぎ捨てキャトルフの手から脱出する。
「お前なんかッ! 絶対に殺してやる!」
キャトルフは唖然とする。フードとローブを脱いだ術者は身長は成人男性程あるが、幼さの残る顔立ちの少女が姿を現したからだ。
「女だとは思っていたが……子供かよ……たく、最近のガキは」
その言葉に逆上すると術者の少女が小刀を取り出し、襲い掛かる。
「うるさいッ! うるさいッ! 私は凄いんだ! 誰にも真似なんか出来ないくらい、沢山の魔力があるんだぞ!」
「おっと、危ない奴だな? あんまり暴れると怪我人が増えるぞ?」
「御生憎様ね! もう一回、アンタの肩みたいに穴をあけてやるわよ!」
言い争いを開始するキャトルフと術者の少女。
その時、アルガノが慌ててキャトルフに声を掛ける。
「マスター、今更だけど、足音の正体はコイツじゃないみたい……また、近づいてきてる」
キャトルフは術者の少女に質問を口にする。
「お前らが何者かは知らないが、これから来る連中はお前達の仲間なのか?」
「知るかよ! 私は地下に向かった侵入者の脱出を阻止すればいいって契約で此処にいるんだよ!」
そう言いながら、ナイフを振る術者の少女に対してキャトルフは手をがっちりと押さえると力をゆっくり加えていく。
「痛い、痛いってば!」
力に負け、ナイフが床に落下する。
「敵の正体は分からないが、取り敢えず……悪い子にはお仕置きだと、ゲルダ婆さんが言ってたからな……」
カルミナがアルガノの眼を両手で隠し、スエルもまた、ミリアの顔を両手で覆う。
“バチンッ!”
「イダイッ! やめろ変態、クソ野郎!」
泣きそうな声をあげて、キャトルフを罵倒する少女。
そんな術者の少女に容赦なく二発目の“バチンッ!”という音と共にお尻に痛みが襲い掛かる。
「ギャア……お願いだから、これ以上、やめてくれ……」
術者の少女が観念するとキャトルフは尻を叩くのを止めて、向かって来る足音に何食わぬ顔で迎え撃つ準備を始める。
カルミナとスエルから、キャトルフに冷たい視線が向けられるが、目の前の危機を回避せねばならないと割り切り、皆が立ち上がる。
次第に近づく足音に身構えるキャトルフ。
そして、廃墟の通路で鉢合わせになると即座に互いが攻撃を開始しようとする。
しかし、姿を現した足音の正体にスエルが待ったを掛けたのだ。
「待って下さい。敵ではありません! 彼等は聖職者協会の聖騎士団の皆様です」
その言葉にキャトルフが攻撃を中断すると、聖騎士も同様に動きを止める。
ミリアの姿を確認し、それを護るように身構えるキャトルフ達の姿を確認すると聖騎士達は、武器を下ろす。
隊長格と思われる男が膝をつき、口を開く。
「御無事でしたか、ミリア様。本当に心配致しました」




