廃墟×影の主×水神の巫女……2
少女はキャトルフの姿に驚きと興奮を隠せずに身を震わせた。
距離にして30メートル程の通路が姿を現し、十枚の魔術創造物で造られた再生する壁が煙を上げている。
「すごい……」
少女の口から呟かれた言葉にアルガノが頷く。
「当然、マスターは、剣術も凄いでも、魔力はもっと凄い」
本来、人には魔力が存在し魔石はその体内の魔力をエネルギーとして解放する。
威力、継続時間、範囲、その全ては使用者の魔力に比例する。
「こんな、凄い量の魔力があるの……」
少女の素朴な疑問にアルガノは首を縦に振ると、歩き出したキャトルフの後をカルミナと共に歩き出す。
「あ、まってよ」
通路の先には、普通の扉があり、その先に闘技場が姿を現す。
周囲を見渡すキャトルフ。
「本当に嫌になる……」
そう呟きながら、キャトルフはカルミナを心配するように視線を向ける。
怯えるカルミナの手を優しく握るアルガノの姿にキャトルフが安心したように頷く。
「闘技場の先は、階段が有るのみだ。“真っ直ぐに”と言うなら、此処が終着点と言う事になるが……」
闘技場の中央まで歩みを進める四人、その時、勢いよく“バタンッ!”と、入って来た扉が音を発てて閉じ、魔術創造物の壁が扉を覆い尽くす。
「チッ! 罠か」
剣に手を伸ばすキャトルフ。
「水神ノ巫女……ヤット、動イタ……アハハ」
甲高い不気味な声が闘技場に響く。
“水神の巫女”と口にして笑う、その声に対してキャトルフが詰まらなそうに語り掛ける。
「なんでもいいから、姿を見せろよ。まさか、隠れてないと喋ることも出来ないのか?」
軽く挑発するように、ポケットから手を取り出し、キャトルフが眠そうに眼を擦る。
「生意気デスネ……野蛮ナ、傭兵デスカ?」
その瞬間、キャトルフは軽く呟く。
「カヤン……右上、大振りな」
「はい……」
瞬時にアルガノの得物が薙刀に変化すると迷う事なき猛烈な勢いで放り抜かれる。
「……ッ! ギャアァァ──アア……」
空間に亀裂が入ったように、空中に切れ目が出来ると真っ赤な液体が床に滴り落ちる。
「チッ……浅いな、口に出したせいで避けられたか……カヤン、次が来るぞ!」
「わかってる、マスター」
キャトルフの言葉に身構えるアルガノ。
空間の切れ目が直ぐに姿を消す、広い闘技場の中、見えぬ敵との戦闘に少女が不安そうに辺りを見渡す。
そんな、少女とカルミナの前に移動したキャトルフはアルガノに新たな指示を出す。
「カヤン、俺の合図で前方に全力の一撃を頼む。粉塵が舞い散る程の奴だ。出来るか?」
「うん。マスターを失望させない」
「いい子だ、頼むぞ」
数秒後、それは突然叫ばれる。
「今だ! カヤンッ!」
「ハアァァァ──ァァッ!」
斬馬刀を思わせる巨大な刃に変化したアルガノの得物、凄まじい速度で振り下ろされると、煙幕のように粉塵が舞い上がる。
「マスター! 次は!」
「そのまま待機、後は任せろ!」
粉塵の揺らめき、その一点に向けてキャトルフが速攻の剣を突き放つ。
「……ナ、ナンデ……ッ!」
驚いたように口にされた最後の言葉。
「簡単だ……粉塵の中で、僅かだが、湿った部分が移動していたからな……」
剣先から滴る血液、その瞬間、姿の見えていなかった敵の姿が現れる。
敵であった存在の命が尽きると同時に魔力が失われ、魔石が止まり、その姿を露にさせたのだった。
少女が敵であった存在を目の当たりにした瞬間、口を塞ぎ、絶句する。
「嘘、なんで……」




