敗北者と狂者×思考×辿り着いた先に……5
少女は我慢していたのだろう……泣きそうな声で必死に姉を助けたいとキャトルフに口にしたのだ。
「お姉ちゃんは、優しくて……凄く真面目で、何でも出来るの、だから、今回も廃墟の除霊に向かったの……でも、二日経っても帰って来なくて……」
静かに少女の頭に手をあてるキャトルフ。
その瞬間、少女の体が“ビクリ”と震える。
「話はわかった。俺は傭兵でな、王都に向かっている途中なんだ。廃墟の場所を教えろよ。一緒に行ってやるから」
きょとんとした表情を浮かべる少女。
「私、貧乏だから、お金なんかないわよ!」
可愛げのない返答にキャトルフは笑った。
「あはは、こう言う時に使うのか、なら“出世払い”で構わない」
「出世? 意味わからない……」
「将来、偉くなってから、払ってくれれば構わないって事だ。さぁ、いこうぜ?」
そう言うとキャトルフは、木陰に向かって声をあげる。
「そう言う事だから、少し離れる! 皆には上手く伝えてくれ、いいな、カヤン」
木陰から様子を窺っていたアルガノに向かってキャトルフはそう言うと優しく微笑みを浮かべた。
姿を現したアルガノは、首を左右に振るも、キャトルフは“頼む”と口にすると少女と共に廃墟に向かっていく。
テントに戻ろうとするアルガノが立ち止まる。
「マスター……いけずだ……マスターが好きにするなら、ボクだって!」
アルガノがキャトルフの後を追おうとした瞬間、背後から抱き締められる。
「な……ッ!」
「隙あり! カヤンちゃ~ん」
そう言い、アルガノに抱きついたのは、カルミナであった。
「迎えにきたよ。あれ、キャトルフは?」
不思議そうに辺りを見渡すカルミナ。少し悩むと、答えが出ないのか、更に悩むように頭を抱えるようなそぶりでアルガノを見つめる。
「マスターを今から追う、カルミナは帰って、皆に知らせて……いい?」
「やだ!」
一瞬の沈黙が生まれる。
「は?」
聞き間違いだろうとアルガノが、再度、同様の発言をするも、答えは同様であった。
苛立つアルガノに対して、カルミナは満面の笑みを浮かべ。
「私もキャトルフを追う!」
そう口にしたのだ。
カルミナと話している間にも、次第にキャトルフとの距離が離れていく。アルガノは諦めたように声を出す。
「はぁ、頑固……わかった。追うから、静かにしてね、約束できる?」
「うん!」
キャトルフと少女を追う二人。
それはキャトルフにとって、運命を大きく動かす事となる。
夜道を進むキャトルフは、自身でも不可解な程の不快感を感じていた。
少女は次第に険しく辛そうな表情を浮かべるキャトルフを心配そうに声を掛ける。
「おじさん、大丈夫?」
「大丈夫だ。なんか、嫌な感じがしてな」
素直にそう口にするキャトルフに、少し呆れたような口調で少女は喋り掛けた。
「はぁ、本当におじさん、傭兵なの? まさか、私が可愛いからって、変なことする気じゃないでしょうね!」
「なッ! 流石に俺でも相手はちゃんと選ぶ、お嬢ちゃんは対象外だ、それより、この先にある廃墟には何かいるのか……」
その質問に少女は、グッと拳を握り締めると、真っ直ぐな視線でキャトルフを見つめ、口を開く。
「今から向かう場所には、見えない悪霊が住んでるの……今までも、何人か退治する為に聖職者が送られました……誰も帰っては来ませんでしたが……」
「なら、何故、そんな所にお前の姉さんが行くんだ?」
素朴な質問に少女は軽くうつ向く。
「お姉ちゃんは、本物の聖職者で、魔石も所持してる凄い実力者なのよ……なのに、二日も帰ってこないの……」




