敗北者と狂者×思考×辿り着いた先に……4
黒猫と特務隊は、三つの村を通過し、第四の関所である【ウォルベア】を目前にしていた。
最初の村での事だった、身なりの整った特務隊と荒くれのような風貌の黒猫の団が共に行動する姿に違和感を感じずにはいられなかった事だろう。
村人の目には、囚人の護送の様にも見えたであろう。
其ほどに異なる二つの集団が行動を共にしているのだから、目立たぬ訳がなかった。
黒猫の団には、アルガノ、シシリア、メル、セラと四名の獣人がおり、村人の視線が冷たく向けられる。
「マスター……凄く不快……」
そんなアルガノの一言から、アルガノ、シシリア、メル、セラに配慮したキャトルフは村などで宿を使わず、外で野宿する事を提案し、村から遠くない平地にテントを作る。
キャトルフは、特務隊には宿を進めたが、特務隊も同様に村の外にテントを広げていた。
焚き火を囲み夕食の用意が始まる。メルの魔石の付いたカバンから、食材を取り出すと野菜と肉が炒められ、早い段階で、川から釣り上げた魚が焼かれていく。
次第に肉と野菜の香りが混ざり合い、焼き魚の香りが辺りに広がっていく。
その間もカルミナの記憶は混乱したまま、戻ることはなかった。キャトルフは複雑な思いを抱えながらも、アルガノに懐きながら、笑みを浮かべるカルミナの姿を優しく見つめていた。
そんな、キャトルフの元に焼き魚と料理が運ばれてくる。
受け取った木皿を手に一人、川辺に移動すると、そっとその場にある石に腰掛け、木皿を置く。
人気がない川辺、キャトルフの背後から静かに迫る存在があった。
小さな物音がなるも、川の流れが微かな風の音と共にすべてを掻き消していた。
暗闇から、伸びる腕がキャトルフに迫る。
「おい……目的はなんだ?」
「……ッッ!」
振り向く事なく、そう呟くと背後から迫っていた腕の主が即座に距離をあける。
「微かに腹の虫が鳴いてるのが、聞こえたが、腹が空いてるんだろ、最初からそう言えよ」
キャトルフの言葉に驚き、後退りをする腕の主。
「腹が空くと、生き物は本能で、奪ってでも空腹を満たそうとする……素直なんだな、お前……」
腕の主が震えた声でキャトルフに声をあげる。
「うるさい! 私は遣らなくちゃならない事があるんだ! だから、だから、仕方なく……」
「仕方無くか……なら、仕方ないから……俺は食事を此処に忘れていく。後は好きにしてくれ」
そう言うと、キャトルフはその場から立ち上がり、後ろを振り向く。
暗闇の中を月明かりに照らされ、震える足で立つ少女の姿があった。
「俺が怖いか?」
「怖くなんか……怖くなんかない!」
キャトルフは軽く頷くと、静かに歩きだした。
身構える、少女の横をゆっくりと通り過ぎると無言のままその場を後にしようとする。
キャトルフの背中に向かって少女が力強く声をあげる。
「私は、乞食じゃない! 好きで、盗みを働こうとした訳じゃない……」
「訳ありか……本当にリアナ王国は、こんなに問題ばかりの国になってしまっているんだな、話を聞かせてくれ」
キャトルフが振り向くと、少女は微かに頷いてみせた。
真夜中の川辺に向き合う二人。
少女はキャトルフに自身が向かおうとしている目的地を語った。
目的地は【ウォルベア】から遠くない廃墟であり、目的はそこに向かった少女の姉を連れ戻すという物であった。




