敗北者と狂者×思考×辿り着いた先に……2
特務隊の全員が手枷、足枷等を付けぬまま、自由な状態にさせられる。
三十人もの部隊が傭兵と言う立場の者達に生きたまま捕縛されたのだ、特務隊の誰もが覚悟を決めていた。
少なからず理解できていたのは、彼等、特務隊は副隊長と言う立場の者に惨敗し、更に言えば、隊長各とは戦ってすらいないと言う実力差を知らしめられた結果だけが残されていた。
特務隊の中には捕虜として、過ごすならば、騎士として死を選ぼうとする者も少なくなかった。
そんな、一触即発の空気が夜風に紛れて漂い始める。
手足が自由に使える事実と、“分断されたから負けたのではないか”と言う、疑問が重なりあった瞬間、一人の騎士が立ち上がる。
その瞬間、キャトルフが鋭く冷たい視線を騎士に向ける。
「どうした……何を急いでいる? そんなに焦らなくても、お前達の事は確りと考えてるから、安心しろ……」
まるで“覚悟を決めろ”と言わんばかりに向けられた言葉に騎士が身構える。
それは一瞬であった……騎士が動こうとした瞬間、キャトルフが剣を力一杯に鞘から振り抜き、前進した瞬間に刃が騎士の喉元ギリギリに触れる。
「頼むから、命を粗末にするな……もう一度言うが、お前達の事は確りと考えてる……それとも、死に急ぎたい側の人間か?」
騎士はギリギリまで突き付けられた刃に触れぬように、首を左右にゆっくりと動かすと刃は鞘に戻どされる。
「あんまり、世話を掛けさせるな、直ぐに飯の用意が終わる。大人しく待っていろ」
余りの出来事の後に、口にされた食事と、言う言葉に特務隊の誰もが意図が理解出来ず困惑する。
そして、大の大人数人で運ばねばならない程、巨大な木蓋の乗せられた鍋が小柄なアルガノとメルにより、二人掛かりで運ばれて来る。
鍋と木蓋が微かにズレる度、野菜と肉の煮込まれ、食欲を唆る香りが次第に特務隊の食欲すら掻き立てていく。
「キャトルフ団長、獣人使いが粗いんですけど、流石に重いですよぉ!」
「メル黙れ……マスターは絶対だ。体を鍛えろ、ボクは余裕だ!」
まるで子供達が配膳の手伝いをしているようにしか見えないが、その巨大な鍋を前にして、思考と現実が入り交じり誰もが混乱していた。
文句を言いながらも、平地に鍋が置かれ、木蓋が鍋から取られると、微かに香りだしていた食欲を掻き立てるそれが、一瞬で丘に広がる。
それから、キャトルフの指示でアルトゥトを始めとする特務隊の面々が料理を取るように言われ、渋渋を装いながら、真夜中の煮込み料理を手に取る。
微かに疑う素振りを見せる特務隊の姿もあったが、キャトルフが先に料理を口にする。
「疑いたいなら、構わない。だが、冷めると味も半減するぞ?」
その言葉に、アルトゥトが無言で煮込み料理を口にする。
「ふざけた奴等だよ。此方は本気で色々考えていたのに、本当に……お前達は凄いな……」
アルトゥトは湯気のでる煮込み料理を素直に旨いと口にすると、静かに完食した器を握り締めていた。




