敗北者と狂者×思考×辿り着いた先に……1
特務隊の降参は真の話し合いの場を生み出す事となった。
怪我人多数、重傷者数名と言う結果になるも、アルトゥトは部下の死を覚悟していたからだろうか、安堵の表情を浮かべ、命を落とした者が居ない事実を喜んだのである。
黒猫もまた、全員が無傷とはいかなかった、死者は存在しなかった。
更に言えば、特務隊の重傷者の殆どが骨折などと言った、手足に関する物であり、命に別状はない状態であった。
一番の被害を受けた、グリムと戦闘を行った後方部隊であった。
騎士達は武器、防具、兜、甲冑に至る全ての装備を剥ぎ取られ、全ての武器は限り無く粉砕されていた。
激しい戦闘が続く中で、武器を粉砕されれば、誰もが心を折られるだろう、グリムと戦い無傷の者すら、アンデッドとグリムの存在がトラウマになるであろう酷い有り様であった。
中間地点の戦闘に置いても、酷い有り様であると言えた。酷い火傷と気絶者がならび、その殆どが体内に電流を流され、絶命しないギリギリを一瞬で経験させられていた。
風薙もその事実に頭を抱える程であった。
「はぁ、メル……悪いんだが、回復薬を人数分頼む。此のままだと、死人が出るからな」
そう口にする風薙に対して、メル=カートルは悩んだような表情を浮かべ、グリムを見つめる。
「副団長の命令でも、今ある回復薬を人数分ってなるとねぇ、かなり予算が……」
「イイんじゃないっすか? 副団長がいいって言ってるんっすから。それより、急ぐっすよメル」
全ての財産管理を任されているグリムの言葉にメルはうなずくと、直ぐに魔石の付いた肩掛けカバンから大量の特級回復薬
を取り出す。
「後で怒らないで欲しいっすよ? 全く、せっかくいい素材を仕入れたのに……タダだなんてついてないよぅ」
そう言いながら、口から飲める者には口から、飲めない者は体に直接と言う形で特級回復薬を使っていく。
通常の回復薬では、回復出来ないような傷もメルの扱う特級回復薬で数分の間に再生していく。
「副団長、ちゃんと後で、特級回復薬の代金を貰いますから宜しくですよ」
あっという間に積み上げられた空き瓶の数に風薙の表情が曇るも、アルトゥトは部下を助ける決断を悩むことなく行った黒猫の団に対して感謝と疑問を言葉にした。
「本当にありがとう……黒猫よ……しかし、何故、そんなにも、あっさりと我等を助ける決断をしたのだ、訳を教えてくれないか?」
その問いに対して、グリムが即答する。
「簡単っすよ。もし、復活して襲って来ても、殺せば済む話しっすから、助けるのは一度、深く考えるより、復活してもらって、成り行きを見る方が気楽っすから」
嘘偽りを感じさせない、口調でそう語るグリムに対してアルトゥトは、底知れぬ恐怖を感じていた。




