炎の大地×冷血なる一族×光の道……2
男の言葉にキャトルフは表情を歪める。
「一つ聞きたいんだが、他のガキ共に何かしたのか!」
怒鳴り声にも似たキャトルフの問いに男の周りを重戦士と騎士達が覆うように囲んでいく。
「お前達、下がりなさい! 話し合いに来たのだから、顔を見て語らねば意味がないであろう?」
男は静かに重戦士に抱えられた少女を抱っこすると、先程までの冷たい表情が嘘のように温もりに満ちた表情を浮かべる。
「私は未来ある子供達に手を下すつもりは無いよ。アルベルム=キャトルフ団長……だが、この子達が教えてくれたんだ、君が私の祖父である、グラウド=アバリシアを討ったのだと……」
男の言葉にキャトルフと団員達が得物に手を掛ける。
「おっと、私とした事が自己紹介をしていなかった、大変失礼した。私はグラウド=アストゥト、リアナ王国軍、特務隊を任されている」
「特務隊?」
キャトルフがそう呟くとアストゥトが少し嬉しそうに笑みを浮かべて更に語る。
「階級は中佐だ。元特別輸送護衛騎士団副団長、アルベルム=キャトルフ君。今回、我々は第五の関所である【シスイ】に向かう予定だったんだが、【シスイ】陥落が事実ならば、色々と状況が変わる」
そう語ると、少女をキャトルフの方に向かい歩かせた。
馬から降り、少女を抱き締めるキャトルフ。
「アルベルム=キャトルフ君、馬から直ぐに降りるのは余り感心しないな、だが、迷わずに少女を抱き締める姿は感心したよ」
燃え盛る田畑に互いの姿が一際、輝きを放つ二人。
「アストゥトと言ったな。何故、こんな目立つ真似をした!」
「キャトルフ君、君達、黒猫を試す為だよ。近くでキャンプをした事実を知ってね。理由はどうあれ、シスイを陥落させたなら、善か悪かを確かめる必要があったのさ、よく見てくれたまえ、キャトルフ君」
キャトルフは周囲を見渡すと、燃えた田畑は束ねられた藁が並べられ、燃え広がらないように建物には水が掛けられている事実に気づかされる。
グラウド=アストゥトは最初からキャトルフと黒猫の団を呼び寄せる為にコルト村に火を放ったように装って見せていたのだ。
その事実に、風薙が慌てて、キャトルフとアストゥトの間に割って入る。
「いきなり悪いね、アストゥト中佐。うちの団長は、アンタがコルト村を背にしてると本気で相手出来ないんでな」
煽るようにそう語ると、風薙はキャトルフを馬に乗せると、馬の尻を叩き、一気に走らせる。
後方から団員達が続き、ゆっくりとコルト村から、距離を取る。
一定の距離まで移動すると高台にある林に馬を止め、団員が馬を降りる。キャトルフは馬から飛び降りると、少女を地面にそっと降ろし、風薙に向かって掴み掛かる。
「颯彌ッ! 何を考えてやがる! あんな事して、もし、村に何かあれば、どうするつもりだ!」
キャトルフの掴み掛かった手を振り解き怒鳴り返す。
「バカかッ! あの状況でコルト村を盾に戦えたのか、話し合いと言いながら、誘き出されて、結果的にお前が死んだらどうするつもりなんだよ!」
風薙とキャトルフが睨み合う最中、少女が泣き出す。
少女の声に冷静さを取り戻す二人。
「くそ、それに奴等はコルト村を見せしめにはしない。奴等の目的は団長であるお前だってわかったからな」
そう語ると風薙はコルト村を指差す。
「見てみろよ。炎に包まれた田畑を奴等が馬に乗って追って来てるのが見える。相手からも俺達が見える位置に馬を止めて正解だ。迎え撃つつもりだが、異論はあるか、団長?」
「はあ、お前のやり方はたまに頭にくるが、異論なしだ。指揮を任せるから、奴等を生け捕りにする作戦に変えてくれ、できるか?」
そう口にすると、風薙は笑みを浮かべる。
「任せろよ団長! 黒猫に噛みつくとしっぺ返しをくらうって事を教えてやろうぜ」




