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後方部隊×第四の関所×光の泉……5

 アルベルム家の存続を願うリビドと、全てを奪いたいステルビオ。


 取引の指定場所は第四の関所【ウォルベア】に近い中規模の街【マヤナハ】である。


 【マヤナハ】は信仰(しんこう)の街として知られていた。名もなき水の女神を崇拝(すうはい)し、光る泉が街に存在すると言う事もあり、旅人や商人が度々立ち寄る街でもあった。


 当然、リビドも何度か【マヤナハ】に足を運んでいた。

 長旅になるが、リビドはそれを苦とは感じなかった。


 アルベルム家は王都【エルドルメ】から少し離れた第二の関所【ガドロヌ】に存在する。


 リビドと社員達、その後方に護衛としてステルビオとその部下達が第三の関所である要塞都市【ラタナ】を抜け、第四の関所を目指して進んでいく。


 次第に目的地である【マヤナハ】が見えてくるとリビドは、心から喜びの声をあげる。


「ふう、良かった。無事にたどり着けた。ありがとう兄さん」


「気にするな、俺は俺のしたいようにしてるだけだ、礼なんて言われたら寝覚めが悪いからなぁ、俺らは一旦、周囲を調べてくる。先に【マヤナハ】に入っててくれ、リビド」


 そう言うと、リビドと社員達を街の手前まで、ステルビオが護衛していく。


 その後、ステルビオは周囲の警戒をするといい、馬に(また)がると数名の新人の部下を残し駆け出していく。


 ステルビオの置いていった者達は優秀な傭兵だった者達ばかりであり、リビドの身辺を護衛するのに適した身なりの者達が揃っていた。


 アルベルム家は、アルベルム商会と言う名で知られ、今回、扱っていた商品は“人造魔石(ファルセダーファクト)”と言う魔石(アーティファクト)を元に魔力を操れる者達が作り出した偽りの魔石(アーティファクト)であった。


 本来は人造魔石(ファルセダーファクト)は、とても不安な存在であり、魔石(アーティファクト)と比べて安い事実を含めて考えたとしても、リスクの方が多い危険な品である。


 しかし、魔石(アーティファクト)を手にする苦労と次第に戦場で砕かれている事実を考えれば、欲しがる者は跡を絶たない。


 偽の魔石(アーティファクト)である人造魔石(ファルセダーファクト)を本物と偽わられ、取引した事こそ、多額の損益を出した理由であった。


 偽物と言えば、聞こえは悪いが、不安定な事実を除けば、オリジナルよりも遥かに扱いやすいと言うメリットも存在する。


 普通なら同系統であっても、同じ魔石(アーティファクト)が発見される事は本当に稀である。


 しかし、人造魔石(ファルセダーファクト)は、術者が同じ種類の物を大量に作りたいと考えれば、同じ能力の物を作る事が可能であった。


 そして、今回の取引では、【爆撃】を意味する放出型の人造魔石(ファルセダーファクト)が大量に取引されていた。


 目的は街の防衛とされており、取引には【マヤナハ】の代表者が挨拶に姿を現していた。


 代表者、大司祭──エヤルベ=スホル。

 

 優しそうな顔の四十代の男性であり、武装した聖騎士達を引き連れていた。


遠路遥々(えんろはるばる)よくぞ、御越しくださいました。新たにマヤナハの代表となりました。エヤルベ=スホルと申します。この度は心より感謝致します。貴女方に神の祝福があらんことを」


「御初に御目にかかります。マヤナハの代表者様が御代わりになっていた事実を知らず、大変失礼をいたしました」


 深々と頭を下げるリビド。


「いえいえ、アルベルム商会の新たな代表者である、アルベルム=リビド殿が直接御越しくださったのですからそんなに(かしこ)まらずに、お互いに取引では同等の立場ですから」


 取引は上手くまとまり、大量の人造魔石(ファルセダーファクト)が、【マヤナハ】へと持ち込まれる事となる。


 その日、リビドは早く屋敷に戻りたいと考えていたが、代表者であるエヤルベに夕食を一緒にしたいと言われやむ無くエヤルベの屋敷に一泊する事となる。


 その日、マヤナハは爆音と炎に包まれる。


 マヤナハの外から手投げ弾が次ぐ次に投げ込まれていく。


 リビドは、慌ててエヤルベの屋敷から飛び出す。


「な、何がおきて……」


「おいッ! お前が持ってきたガラクタのせいで、マヤナハはこの有り様だ!」


 突如、リビドの胸ぐらを掴み掛かるエヤルベ。


「ゲホッゲホッ……待て、あれは最初から人造魔石(ファルセダーファクト)だと、言ってあった筈だ……」


「まだ、シラを切るのか! お前が見せた最初の箱以外は、何一つ、発動しない単なるガラス玉ではないか!」


 凄まじい爆音と爆発が更に勢いを増していく。


 現状は最悪だった。街の外から激しく攻撃を開始したのはアルベルム=ステルビオと部下達であった。


 更に後方から合流した部下達の姿があり、ステルビオの部下達が取引した筈の人造魔石(ファルセダーファクト)を装備し追い討ちを開始したのである。


 絶望の炎がマヤナハを包み込む中、エヤルベ=スホルは怒りと憎しみを目の前のリビドへと向ける。


「お前も道連れだ……生憎な展開だな……リビド……今夜、このマヤナハが襲撃されなければ、バレなかっただろう……そして、もし本物の人造魔石(ファルセダーファクト)があったなら……マヤナハはアルベルム=リビド、お前に感謝しただろう……」


「ちょっと待て、俺は確かに、やめろ、やめろ、やめろッ!」


 リビドは真実を語りながらも、恨まれ嘘つきの烙印(らくいん)を剣で刻まれながら、その生涯を終わらせる。


 街一つを焼き払ったアルベルム=ステルビオは証人と成り得る存在が居ないことを確認すると自身の所持する地図から【マヤナハ】の名を線で消した。


 ステルビオは第二の関所【ガドロヌ】に帰還するとリビドの妻と娘を自身の所有物とし、アルベルム商会を乗っ取ったのだった。


 ステルビオの支配下になると、リビドの妻は娘を一人残し逃げ出し、一人残された娘は奴隷として、売り飛ばされる事となる。


 娘の名はアルベルム=リリアノア……アルベルム=キャトルフの母となる女性であった。

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