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後方部隊×第四の関所×暗闇の部屋……1

 ゲルダはグラウドの魔石(アーティファクト)を手に取るとあっという間にリンクする。


 輝き出した指輪に対して、堂々と語り掛ける老婆の姿は、まるで全てを知り尽くした賢人のように皆の目を釘付けにした。


「ちょっと、やり方を変えれば、こうなるんだよ。さて……全ての呪縛を解除しようじゃないか、さぁ! 患者を全員集めてきな!」


 黒猫の団員達はゲルダの言葉に動かされるように、囚人達を一ヶ所に集めていく。


 ゲルダは魔石(アーティファクト)を使い、最初にカルナ=カルミナの呪縛を解除する。


 それからは、次々と運ばれて来る囚人の呪縛の解除と怪我の治療を行っていく。


 囚人の大半は、眠らされてから呪縛解除を行い、その後に拘束されていく。

 理由として、呪縛の解けた囚人は自分の意思で動き出す、そうなれば、犯罪者を野に放つ事と変わらないからだ。


 全ての囚人が集まったかをシシリアが索敵にて調べる。

 囚人の呪縛が全て解除されると、キャトルフは次に【シスイ】に残る住民に対して避難するように声を張り上げる。


「良く聞けっ! シスイは死の街に変わった! 俺達は囚人を連れて第三の関所──【ラタナ】まで向かう! 命を大切に思うものはついて来い。第四の関所である【ウォルベア】まで連れていく!」


 キャトルフの言葉に隠れていた住民が扉を開き家の外に顔をだす。


「私達はお金がないんです……」


 安全を金で買おうとしたのであろう、母娘(おやこ)が怯えたながらも勇気を出して声をだす。


 その様子を(うかが)うように他の家々から聞き耳をたてる住民達。


 その光景にキャトルフは再度、声をあげる。


「俺達は生きたいと願う者しか助ける気はない。生き残りたい奴だけ今すぐ家から出てこい!」


 その言葉に窓を閉める者や扉の鍵を確りと閉め直す者の姿があった。


 姿を現したのは、ボロボロの服を纏った貧困層の住民ばかりであり、皆、怯えながらもキャトルフと団員達に(すが)るような視線を向け、確りと見つめる。


「わ、私達はいきたい……今の生活で、旦那を失い……その日の食事すら(まま)ならない生活から抜け出したい……」


 震える声と共に差し出される一握りの硬貨、キャトルフは必死に訴える母の横をゆっくりと通り抜ける。


「俺達は約束を全力で守る。安心しろ。それは【ウォルベア】に着いてから娘に何か買ってやる為にしまっておいた方がいい」


 キャトルフはその足で、破壊した扉の周辺に住む者達の元に向かっていく。


 壊れた巨大な扉を見つめる労働者と衰弱した少年少女を見つめ、キャトルフは軽く溜め息を吐いた。


 動ける者より、動けない者の方が多い現状を目の当たりにする。


「これだけ居たら、簡単には運べないな。仕方ない……」


 キャトルフは軽く悩むと団員の一人、ジイ様と呼ばれていた人物をその場に呼び出す。


「モルガ爺、済まないが……この連中を頼めるか? 後方隊と共、俺達の町に案内してくれ、ゲルダとあの兄妹も一緒に着いていかせたい」


「そうなると、かなりリスクが付きまとう結果になるが、良いのかね? ゲルダが居なければ、もしもの時、命に関わるぞ?」


「構わない、どちらにしても、リスクしかないからな。ただ、コイツらの目は昔の俺に似てるんだ……助けがなければ、俺も生きていなかった。だから、頼むモルガ」


「ふぅ、承知いたしました。団長」


 黒猫の団、後方支援大隊総指揮──モルガ=グレイヴ。


 元リアナ王国の剣士であり、笛を使い後方部隊との伝達等を行う。弱々しい老人の姿でありながら、剣の達人であり、退役後、キャトルフと出会い黒猫の団にて経験とその刃を振るう事となる。


 団長命令を聞き入れ、モルガは複数所持していた小さな笛の中から、一本を取ると力強く音を鳴らす。


 それを合図に、シスイの後方に生い茂る森が地響きをあげ、土煙と共に馬に跨がった大部隊と積み荷を乗せた運搬用の馬車が姿を現す。


「良く来た。今より、団長命令を実行する! この場にいる全ての住民を黒猫の町【ミストエル】に運ぶ。必要に応じて、手当てと食事をするように、飯が済み次第。出発とする。わかったら! 今すぐにかかれっ!」


「「「はいっ!」」」


 後方部隊は何一つ質問する事なく、命令を遂行する。怪我人と衰弱の激しい者から、馬車に乗せられ、食事が一人で困難な者には介助を行う。


 後方部隊──モルガの補給部隊と攻撃部隊、更にゲルダの回復支援部隊が一つになった混合部隊である。


 本来はキャトルフ達に危機が迫った際の保険として、一定距離を保ちながら着いてきていた隠し球のような存在であった。


 それすらも、使い会ったばかりの名も知らぬ、シスイの住民を助ける行動は無計画であり、御人好しと言うに相応しい。


 それでも、黒猫の団員達はキャトルフの命令に疑いなどは持ちはしなかった。


 黒猫の団は二手に別れて移動を開始する事となるのだった。

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