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獣狩り×闇に埋もれし者×命の価値……1

 全ての視線が集まる先に逃げ惑う、シスイの住民達の姿があった。


 その背後に四角形の建物が地響きと共に姿を現す。


 禍々(まがまが)しい威圧感を放ち、その天辺には逃げた老人が屹立(きつりつ)していた。


「貴様等のせいでッッ!、私の所有物がどれ程、傷ついたか、(ゆる)さぬ、(ゆる)さぬぞ! 覚悟しろ……害虫が!」


 老人の言葉と態度を前にキャトルフは再度、剣を老人に向ける。


「黒猫の団に噛みつけば、どうなるか、教えてやるよ。今から各自の判断に任せる。()()()()()で向かい来る者は殺せ!」


「「「了解」」」


 キャトルフは単身、老人の元へと向かおうと動き出すと、背後から鈍い音と共に痛みが背筋から全身に駆け巡る。


「う……」


 振り向いた先には、キャトルフの一撃をくらい、気絶していたカルナ=カルミナの姿があった。

 手に握られた小刀(ナイフ)はキャトルフの背骨ギリギリに突き刺され、立っているの事すら困難な状況になっていた。


 多くの戦場を渡り歩いてきたキャトルフは直ぐに違和感に気づかされる。


 次第に痛みが無くなり、体は脱力感に襲われる。


 カルミナを見るキャトルフ、しかし、その瞳は意思を持たぬ、ガラス玉のように只一点を見つめているだけの物であった。


「そうか、毒が塗ってあるのか……カルミナらしいな。だが、俺に毒なんて意味ない事はお前が一番知っているだろうに……」


 キャトルフはそう呟くと優しく微笑みながら、カルミナの刃を体から抜く。


 大量の出血と(えぐ)られた背中は、重傷であり、常人ならば既に意識が吹き飛ぶであろう傷だ。


 キャトルフは、カルミナの頬に剣を軽く向けると一筋の切傷を刻み優しく声を掛ける。


「カルミナの呪縛を否定する……」


 カルミナの頬から流れた血液が植物の根のように広がり、顔に刻まれた模様に重なる。紫の模様が真っ赤に染まると意識を失いカルミナはその場に倒れ込んだ。


「はぁ、俺は……痛みを否定する……傷を否定する……全ての毒を否定する! 俺の人としての肉体を否定するッ!」


 キャトルフの言葉を聞き、先行していたアルガノを含む五人の獣人が即座に左右に退避する。


 獣人の潜在意識が叫んだのだ。


 そう……“逃げなくては危険”だと……生存本能からの恐怖を即座に感じ取ったと言える。


 そして、黒い霧が周囲に立ち込めた瞬間、霧の中から、荒々しい光の塊が撃ち放たれる。


 一筋の光は真っ直ぐに老人と姿を現した巨大な四角形の建物へと向かい、凄まじい爆音と共に粉塵が舞い上がる。


 突然の事に、理解が追い付かない老人。


 黒い霧が更に広がり、夜の世界に更なる闇を展開する。


 そして、老人はその目に真実を焼きつける。


 霧の中を移動する巨大な獣の姿であった。


「あれは……あは、あはは! なんと言う幸運! 古代種の魔獣だと……あはは! 奴の魔石(アーティファクト)は、伝説級と言うことか!」


 幸運といい放つ老人。


 キャトルフの姿は黒い魔獣へと変化していた。


 古代種──世界から消えた古代の魔獣、一匹で大陸を支配し、全てを焼き払い、全てを喰らうとされる。現世界には存在せず、御伽噺(おとぎばなし)の化物や神話の悪夢をもたらす者として、語られている存在。


 老人は自身の指輪に強く魔力を込める。そして、四角形の建物から、大量の人影が外に飛び出していく。


「ふぅ、久々の(シャバ)の空気は最高だぜ! おい、裁判長殿? 本当に魔獣を殺せば、俺等の罪を無かった事にするんだろうな?」


 人影は全て【シスイ】の地下に囚われていた囚人であった。


 囚人の言葉に老人は一枚の紙を提示する。


 内容は『魔獣の討伐に命を賭けて挑み討ち取れば参戦した囚人の刑期をゼロとし、自由の存在とし、地位と報酬を与える』と言う物であった。


 更に書き足された一文が存在する。


『模様を刻む覚悟のある者は自身の所持していた魔石(アーティファクト)を装備して参戦する事を許す』


 即ち、キャトルフ達、黒猫の団の前に姿を現した囚人軍団は魔石(アーティファクト)を装備した殺戮集団であり、模様を刻まれた老人の言葉に逆らえぬ最強の兵団となったのだ。


 囚人達は知らなかったのだ……自身の選択が永遠を失い、道具として、老人の所有物になる事実を……


「あはは! これ程の魔石(アーティファクト)を装備した殺戮部隊を前に魔獣と雑兵が勝てると思うな! 私こそが、このグラウド=アバリシア様が【シスイ】のルールであり、法なのだ! あはは!」


 グラウド=アバリシア──第五の関所、法律と監獄の島【シスイ】の支配者であり、最高裁判官である。

 全ての権限を握り、更に魔石(アーティファクト)を使い、人間を操る事でその力を最大まで使い絶対的な存在になっていた。


 囚人達は魔獣を倒す気など有りはしなかった。シスイの支配者であるグラウド=アバリシアを葬れば、自由が手にはいるのだと考えるのは当然であり、その溢れんばかりの今までの怒りを魔石(アーティファクト)に込める。


「死ねッ! ジジイ!」


 一人の囚人が、風の刃を魔石(アーティファクト)で作り出し、勢いよく連射する。


 その瞬間、囚人は異様な光景を目の当たりにする。


 アバリシアを守るように、囚人の一部が盾となるように岩のシールドを展開する。


 攻撃を加えた囚人の全身が模様うに包まれていき、一瞬で潰れ、人から肉塊へと姿を変える。


 欲にまみれた最高裁判官、グラウド=アバリシアは笑った。下卑た笑みを浮かべ楽しそうに笑ったのだ。


「ふふ、ふははは……さぁ、獣狩りだ! 死にたくなければ、あの化物を葬れ!」

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