最古の歴史×二人の支配者×滅びし者……6
キャトルフが即座に駆け出すと同時に予想外の伏兵がアストゥトを襲う。
アストゥトの足元、背後、左右から突如として、大量のアンデッドと影の兵士達が襲い掛かる。
キャトルフ達が戦いを開始した直後、中層まで辿り着いていたグリムとシャナの部隊が上層に上がり、アストゥトの足元から上に目掛けて魔石を発動したのだ。
それは一瞬の出来事であり、怒りに支配されたアストゥトは反応が遅れる事となった。
しかし、それは偶然ではなく、真下にいたシャナが影を使い、戦闘の流れを理解しての行動であり、黒猫という集団戦に特化した傭兵であるからこその結果だと言える。
「否定の王よ、力を貸せ! 天界神だか、なんだか、知らないがッ! 切れない事実を否定するッ!」
予期せぬアンデッドと影の兵士に慌てるアストゥトに襲い掛かる刃、その一撃がアストゥトの左腕を切り落とす。
「うわぁぁあぁぁッ! 腕が……腕が!」
「言ってみるもんだな? 本当に切れるなんてな、だが……次で終わらせる」
〈どちらにしても、あと、出来て二回が限界だ〉
キャトルフの鋭い眼光にアストゥトは初めて恐怖と後悔を感じていた。
「ハアァッ! いくぞ! アストゥト!」
「や、やめろ! 来るな、来るな!」
キャトルフが再度、否定の王の力を使用しようとした瞬間、アストゥトの魂が具現化し、身動きの取れぬライム女王の肉体へと乗り移る。
その瞬間、メルの魔石から腕を引きちぎる勢いで引き抜こうとする。
「な、何故、抜けない! ふざけるな……これでは……」
アストゥトの魂が最後に眼にしたのは、獣が獲物を見つめるような鋭い瞳と真っ黒い刃であった。
「終わりにするぞ……アストゥト、お前ら天界神とか言う連中の詰まらないゲームの為にどれだけの仲間が、人々が犠牲になったかを……考えて死んでいけッ!」
「く、くそ! こんな所で!」
アストゥトの魂が抜けるのを確認するとグリムが女王ライムの周りにアンデッドの壁を作り出し、キャトルフの一撃を間一髪で防ぐ。
「団長、これは貸しっす。あとで返してくれればいいっすから、そのクソ神を消してくださいっす」
「嗚呼、恩にきる、否定の王よ、今より刃に触れた魂の復活を否定するッ! 本当の終わりを刻む、ハアァッ!」
魂の位置を知らせるように、グリムが指を伸ばす。
「終わりっすよ……神様」
「な、何故見える! や、やめろ!」
キャトルフは迷うことなく、グリムの指差した方向に向けて駆け出し、刃を振り抜く。
最近の一撃がアストゥトと女王ライムの魂の繋がりを断ち切り、更に二撃目がアストゥトの魂を真っ二つに切り裂く。
「ギャアァァッ!」
アストゥトの断末魔が響き渡り、暗雲が立ち込めた空から雲が消え去ると同時に女王ライムの真っ赤な瞳が正常に戻っていく。
すべてが終わったのだと、笑みを浮かべるキャトルフ。
そんな最中、空から声が響き渡る。
「いやあ、見事、見事、実に有意義な時であった。よくぞ勝利を手にしてくれたのぅ。嬉しいぞ、否定の王よ」




