三種の狂者×力ある者×紅の世界……6
ディランが再生できず、ペリグロッソにより、首を斬られると同時に、テペルは言葉すら発することなく、全身から植物の芽を出し息絶える。
誰もが絶望した最悪な状況を二人の強者が勝利を手にしたのだ。
アラクネであったテペルが絶命すると、糸が突如、力を失ったように緩くなり、兵士達が解放される。
誰もが喜びを露にする最中、シュゲンは疲れ果てたと言わんばかりに、その場に腰をおろした。
「何とかじゃな、蜘蛛女の皮膚がこれ程に強固とは参ったものじゃ……ペリグロッソ、エルイの族長として、頼みがあるのじゃ……」
「なんだ、言ってくれ?」
「妾の肉体は限界らしくてなぁ……既に崩壊が始まってしまったのじゃ、どうやら蜘蛛女の毒で確実に溶け始めてるようじゃ」
「本当なのか……シュゲン殿、なんとか、ならぬのか!」
「なんとか出来るならな、やっておる……しかし、此ばかりは……妾の大切な仲間を頼む……そろそろ、話すのも限界じゃ……」
次の瞬間、シュゲンの体を無数の蔓を覆い、そのまま小さな種に吸い込まれていく。
エルイの民達が涙を流し別れを悲しんだ。
シュゲンの種はエルイの民に預けられる。
「シュゲン様、必ずやエルイの地、フェルドルム大樹海に帰りましょうぞ……」
「うぅ……シュゲン様……最後まで勝手過ぎますぞ……」
エルイの民が涙を浮かべる最中、壁は正常に戻り、天井からは靄が消え去る。すると上層に続く通路が姿を現す。
シュゲンを失った悲しみに包まれた直後、ペリグロッソの歩みが停止する。
「ハァ……ハァ……やはりか……」
苦しそうに呼吸を乱すペリグロッソ。
「サンジャラム将軍、大丈夫ですか?」
兵が心配し、ペリグロッソに声を掛ける。
しかし、ペリグロッソからは何の返答も返ってはこなかった。
そんな最中、一人の衛生兵がペリグロッソの側に向かう。
その意味を皆が理解していた。
「残念です……将軍、貴方はまだ、帝国に必要な御方でしたのに……最後の戦いは死期が近いことをわかっての事だったんですね……」
ペリグロッソの魔石は本来の姿を若返らせる能力であり、既にペリグロッソは数世代の王につかえた存在であった。
獣帝国ガルシャナの総大将であり、最強の将軍と呼ばれたサンジャラム=ペリグロッソの寿命が尽きた瞬間であった。
ペリグロッソは、最後の瞬間まで、手加減をせず、死したナーガ族のディランに対して、更に荒々しく攻撃していた理由を皆が理解した。
誰もが自身の無力さに涙を流すと、直ぐに行動を開始する。
気持ちの整理がつかないまま、黒猫の団と合流する為に獣帝国軍とエルイの民が動き出す。
同時に二国兵団の生き残った兵達も主である女帝シェルビー=ムガナを失った事実を受け止めながら、仇を討つべく合流を目指し動き出していた。
そんな最中、黒猫の団は紅の女王となったライムの元に辿り着いていた。
既に話し合いの道は閉ざされた状態で、得物を構える団員達。
その光景に苛立ちを露にするライム女王の姿が存在した。しかし、その顔面の半分は真っ赤に染まり、片目からは既に光が失われていることが窺える。
「お前達のせいで……私の大切な顔が……赦さない……絶対に赦さない!」
紅の女王ライムは片手に真っ赤な球体を作り出すと高速で回転させ、黒猫に対して怒りを露にする。
しかし、紅の女王となったライムに最初程の勢いは既に存在しない。
その理由はライムの片手は既に自由に動かせない状態である事が明らかであったからに他ならない。
キャトルフが一歩前に踏み出すと、声を発する。
「終わりだな、ライム女王……こんな形を選ばなければ、元の国を取り戻せただろうに、血迷ったな」
「黙れ、黙れ、黙れッ! キサマさぇ……キサマさぇいなければッ! 否定の王よ……キサマだけは必ず!」
両者はそれ以上の会話は不要とし、動き出していく。
最後の刃が紅の女王に向けて振りかざされる。




