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三種の狂者×力ある者×紅の世界……5

 圧倒的な強者であるように兵士達から見えたナーガ族のディランに対して一切、引かないペリグロッソ。


 次第に息を切らしていったのはディランの方であった。


 ペリグロッソは確実に一撃、一撃をディランの急所に叩き込む事で、再生せざるおえない状況を作り出していったのだ。


 これ程までに斬撃が命中する理由は、ナーガという、飛び抜けた強固な種であった事と、ディランがすべてを受ける事で勝利してきたプライドにあった。


 ディランは回避を必要と考えず、ガードのみでペリグロッソと戦っていた。


 しかし、ペリグロッソの魔石(アーティファクト)により、そのプライドは打ち砕かれていく。


 全盛期と言える“獣帝国最強”と呼ばれた頃の肉体に戻った状態のペリグロッソの一撃は重く、ディランは全身で命が尽きるであろう事実を感じていた。


「貴様を弱者と呼んだ事を詫びよう、我は最強を求め、幾千の戦士達に勝利し、食らってきた……だが、貴様は幾千の戦士よりも上の存在だ」


 ディランはそう語ると再度拳を握る。


「儂も貴様ほどの強者に今まであった事がない。死するその瞬間まで戦わせて貰うぞ!」


 二人の戦士が激戦を繰り広げる最中、テペルは飽きれたような表情を浮かべ、退屈そうに戦闘を眺めている。


「男って単純ですよね? そう思いませんか、エルイの族長さん……うふふ」


 シュゲンにそう語り掛けるテペルは既に我慢の限界を迎えたであろう、淫靡な表情を露にする。


「ヌシも、我慢出来ぬと言った様子か……既に食事がしたいと表情に出ておるぞ?」


 そう告げられたテペルは、本能をさらけ出すようにシュゲンに向けて舌を伸ばす。


「これでも、我慢強い方なのよ……でも、貴女の挑発のせいで、我慢の限界みたいだわッ!」


 テペルの長い針のついた舌がシュゲンの首筋に触れようとした瞬間、テペルの断末魔が響き渡る。


「ぎゃああぁぁッ!」


 断末魔を聞き、ペリグロッソとディランが振り向くと、口を押さえるようにして苦しむテペルの姿が存在した。


 しかし、シュゲンの首にも酷い傷が刻まれており、首筋からは只ならぬ出血が確認できる。


 次の瞬間、予想外の断末魔に誰もが言葉を失った。


 それはディランが発した断末魔であり、その理由はペリグロッソの不意討ちによる大蛇である下半身への一撃であった。


「ヌワァァッ! 貴様ッ……ハァハァ……戦士の戦いを汚すかッ!」


「戦士としてか……この戦いは生き残る事が勝利だ、戦士の誇りなど、この戦いには存在せぬわッ!」


「貴様ッ! よくも、ならば我も貴様等を誰一人逃がさぬッ! 頭から噛み砕き、我が腹に叩き込んでくれようぞッ!」


「嗚呼、そうしてくれ……出来るならな?」


 そう語ると次々に斬撃を繰り出し、更に復活しかけた下半身すらも無惨に切り刻んでいく、数分間に何百という斬撃の嵐がディランの全身に刻まれていく。


 その光景にテペルは全身から恐怖を感じずにはいられずにいた。


 そんな最中、更に加速するペリグロッソの斬撃、流石のディランの回復力が次第に弱まり、再生するより先に斬撃が繰り出されていく。


「や、やめろッ! ディランが死んでしまう……くそ、やめろといってるだろうッ! 獣人風情がッ!」


 テペルが動きだそうとした瞬間、蜘蛛の下半身に“チクり”と痛みが走り、ズシッと重みが加わる。


 振り向いた瞬間、テペルの眼に入ったのはシュゲンの姿であった。


「何の真似かしら、私の食事用の針を折ったうえに、無断で体に触るなんて……イライラするわ」


「奇遇じゃな……妾もじゃ、其方の行動は下衆の域を越えておるからなぁ……害虫駆除といこうではないか?」


 シュゲンの言葉に苛立ち、襲い掛かろうと手を伸ばした瞬間、シュゲンは背中に手を当て、力を込める。


「ハアァァッ! ぐあぁ……アア? 何を……した……」


 体が動きが止まり、突き出る無数の芽を自身で確認するテペル。 


「すまぬのぉ、其方の体に種を仕込ませて貰った。小さな種が芽を出し、全身にわたった……もう、其方は苗床でしかない……終わりじゃ」


「くそ……お前みたいな……アア……ア……い、や、だ……死にたく……な、い……」


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